テラーノベル
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僕はあの日、「藍」に染まった君に出会った────
時間は僕の高校生活が始まった日から始まる。
中学の頃とは違う人生を歩みたいがために、私立で知り合いが居ない高校に入学した。
けど、そんな僕の努力は無駄で中学と変わらずの日々だった。
そんなある日、僕は下校中の電車内で不思議な人を見た。
いや、普通の女子高生だ。
けど、『藍』に染まっていた。
持ち物もイヤホンもスマホカバーも全部が藍色だった。
不思議だなぁ…
と思いながらじっと見てると目が合ってしまった。
慌てて目を逸らすも、
一瞬目に映ったその子の瞳が玉響に藍に染まったのが頭から離れなかった。
「音、漏れてますよ」
気づけば話しかけていた。
そんなくだらない嘘をついてまで。
その子は慌てた様子でイヤホンの接続を確認して。
あぁ、そういえばあの時初めて君の藍以外を見た。
いや、見間違いかもしれない。
だって青色は反射の錯覚でピンク色に見えることがあるって言うし。
それから電車内でよく見るようになった。
話しかけたりすることもあった。
その子の名前は碧唯で、
藍色が、青色が好きだとか。
「私も君みたいな名前が良かった」
碧唯の口癖。
「交換出来たらいいのに」
これも同じ。
僕の名前は『藍』だから藍色が好きな君がこの名前だったら奇跡だと思う。
けど、
「碧唯もいいじゃん」
「君って無表情が多いよね」
ふと、
そう言われたのを湯船に浸かってる時、
思い出した。
「僕ってそんな無愛想かな…」
独り言を呟く。
自身の顔をペタペタと触りながら。
僕の中では無表情=無愛想っていう印象が強い。
初めて女子の家に行った。
考えはついてたけれど、いざ見てみると目を疑う。
碧唯の家は部屋は至る所見るとこ全てが『藍』に染まっていた。
同時に碧唯がその『藍』に染まって消えてしまうんじゃないか、と変なことを考えて不安になった。
けど、すぐに現実へと引き戻された。
急にある曲が僕の耳を意識を奪った。
耳に流れてくるのは聞いた事のない音楽。
けどなんだか聞き覚えのある音楽。
「どうだった?!」
イヤホンを外され、現実の音々が戻ってくる。
「これ実は私が作った曲で…」
あぁ、だからか。
だから歌詞に海だとか空だとか藍があったのか…
それに曲調も泡沫のようで、
でも落花流水のような雰囲気もあった。
まるで碧唯そのものを映し出したかのような曲だった。
「好きかも、この曲」
零れるような言葉に碧唯は嬉しそうにしていた。
それがどうにも海の中から見た青空のようで。
𓂃◌𓈒𓐍𓈒
ノートを閉じる。
まぶたを閉じる。
嗚咽を漏らす。
僕は詩や小説をノートに書いて
後々自分で読むのが好きだった。
物語の内容は全て今までのことに似ていて。
それのせいか忘れようとしても忘れられない。
君のことを繰り返し思い起こしてしまう。
𓂃◌𓈒𓐍𓈒
僕のノートには藍の花々が散らばっていて。
視界は雲越しに見ているようで。
喉は苦しい。
記憶が蘇り蘇るほどに増していく。
僕が家から出なくなったのは藍のせいだ。
反射の世界には欠かさず居る藍。
見る度見る度に苦しくなるのはもう嫌だった。
とはいえ家の中に居たところで目蓋を閉じれば空は描かれる。
「逢いたいのにな…」
顔を突っ伏しながらそんな言葉を零す。
共に空もが溢れるままに。
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