「『ガムダナ女王』。初めまして。今あなた様の肉体を作っている途中です」
「ルーペント」から出てきた暗くて美しい姿の女王は、あくびをしてからお化粧をし始めた。ポンポンとファンデーションを塗り、まつ毛を直しているところだった。
今、エチケットをしている場合だろうか?女性には大切なことだけども。
彼女はやる気なさそうに返事する。
「あらそう。すぐに終わらせなさいよ」
「かしこまりました」
頷いてから、最後のモンスターを貼り合わせた。黒いオーラは薄くなり、目も元に戻る。ほっと一息ついた。これで完成した。
影のシプリートは、満足そうな笑みを浮かべた。これでこの惑星を終わらせることができる。
「いでよ、ドロドロのモンスター!!」
「グォァァァァ!!」
影のシプリートの背後に、大きな口をした化け物が。手が六本あり、黒くて泥水を固めたのような体をしている。奇妙な声で吠えた。これがラスボスか。少し気持ち悪いかもな。
それをお見えになった女王様は、拍手するほど歓喜する。頬を赤らめていた。
「いい器ね」
どうやらこのモンスターで満足してくださったようだ。ほっと息を吐く。断られたらまた作らないといけないしな。二度手間はめんどくさいから、ありがたい。
「さて、飛び移るわよ」
ルーペントと共に飛び移るのが一瞬すぎて、三人は止めることができなかった。合体して、変形していく。
両手はハサミに変化し、足は鋭く伸びて針へ。針の先からは毒が溢れる。その液体は紫の蔦を刺激し、ピント伸びて網を作り周りに盾として配置。背中には紫色に光る鎧が現れ、尻尾には紫のトゲトゲした鎧にさそりの尻尾が現れてる。
「グギャァァァァァ!!」
大きな口には鋭い牙が生え、口を開けて雄叫びを上げる。まさに巨大なラストモンスターだ。とても強いモンスターに早変わりする。何か倒す方法は……。
カロリーヌが考えていると、母上が昔おっしゃっていたことを思い出した。それ以外のことを思い出すのはやめておこう。虚しくなるし。
「昔母さんが言っていたの。全ての属性を混ぜれば、攻撃力がとても高くなる。魔法が使えない相手に友好的かもしれない。失敗すれば、攻撃力が下がる。一か八かの勝負よ……」
カロリーヌは大きな声で提案してくる。汗をかいていて、かなり緊張している。これは責任重大。
怪我を心配してやってきたアンジェがそれを聞いていたのか、険しい表情で現実を突きつける。
「でも炎と風しかないよ。それに蔦に魔力を吸われるのも時間の問題。水も木も闇もない状態でどうやって倒すの?」
その質問に答えようとした時、空から青い鱗のドラゴンがやってきた。白と紫の瞳のドミニックだ。彼女は目を輝かせた。
「生きてたの!?」
「ああ。この通り、元気満タンだ!!」
翼を使って、一回転。喜びを表す。
彼は死んだのではなく闇の渦に吹き飛ばされて、ずっと意識を失っていた。やっと目を覚まして復活。こちらへ向かったということだ。
アンジェはほっと胸を撫で下ろす。ずっと死んでいたと思い込んでいたので、これで安心できる。
そんなことよりもエンジェル。彼女を説得しなければいけない。しかし彼女と接点が多かったのは、シプリートのみ。言葉だけではどうすることもできない。そもそもこの四人との交流はほとんどない。
建物から出てきたエンジェルの様子がおかしい。真っ暗に染まっていく赤毛の「影のシプリート」を見て、恐怖で怯えているようだ。目には光が戻っていた。どうやらアズキールの洗脳が解け始めたようだ。髪の色は変わらない。
怯えは全くなくならず、悲鳴を上げるよりも固まってしまい言葉が出てこない。なぜこうなってしまったのか、全く理解不能。
なぜシプリートがアズキールの服装をしているのか。なぜ邪悪な笑みを浮かべているのか。頭が混乱してしまう。アズキールに似ているシプリートを怒りで殺したくない。
彼のことがずっと好きで、毎日エミリのことを両親の代わりに褒めてくれた。それに王子は花が好きで、二人で花壇の整備もした。彼が微笑んで楽しそうにしているのを見ていたら、自分もワクワクしてしまう。
どうすれば彼の意識を取り戻し、日常に戻れるの?
目が涙でいっぱいになる。もうどうすることもできない自分の無気力に失望してしまう。
そんな時、背後から柔らかい手を差し伸べてくれた。涙でぼやけてよく見えない。シプリート……?いや、違う。メイドのカロリーヌだ。
「エミリ姫、戻ったんですね。あの人の専属になってたら、逆らえないですもの」
「そういうこと言ってる暇はないです。私は木の能力を使えます。あとは光と闇ですよね。でも闇の属性を持ってる人はいませんよ」
エミリもカロリーヌの話を聞いていたのだ。
確かにその通りである。光はシプリートの父が持っているが、闇は影のシプリート以外いない。どうすれば。
あれから迷っていると、敵が痩せ細って力の出ないザールに攻撃し始めた。ハサミで切り刻もうとしたら、足から針を出したり。
彼はなんとか耐えて避けているが死にそうである。巨大な攻撃がこない今がチャンス。
「あの蜘蛛はどうでしょうか?あれを仲間にしましょう」
エミリが指差したところに、モンスター化できなかった蜘蛛が一匹現れた。攻撃はしてこないが、敵に違いない。
時間は残りわずか。それを見たエミリは的確に指示をする。
「ドミニック、ドラゴンの爪攻撃で相手を引っ掻いて!それから意識をなくしたら、カロリーヌ。あなたがこの紐で縛りなさい」
そう言われて渡されたのは、ドミニックを縛っていたあの紐だ。魔力入りなので、拘束されても解けない仕組みになっている。だから一度も落ちなかったのだ。
手が器用なカロリーヌがそれを受け取り、ドミニックが蜘蛛の位置を観察。この蜘蛛は逃げ足が早く道筋が掴みにくい。苦戦してしまう。これではダメだ!もっと早くしなければ!
ドミニックは目を凝らして、その場所で爪攻撃をすると見せかけて他の場所を狙った。すると攻撃が当たり、ノックダウン。
その瞬間カロリーヌが手をテキパキと動かし、縛ることに成功。ノックダウンから戻っても身動きが取れない。成功だ。
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