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「全ての属性は揃いました。早くドミニックさんに乗ってください。巨大な攻撃がきます!!」
巨大モンスターを凝視すると、口に闇の塊を溜め込んでいた。その塊がどんどん大きくなっていく。
敵の近くを見たら、ザールが死んでいた。毒針に侵され、そのまま帰らぬ人となった。
今は悲しんでいる時間もない。生き残っていたら、後で埋めてあげよう……。安らかに眠れ。
カロリーヌは手を合わせて拝んでから、焦りつつもできるだけ心を落ち着かせる。
「みなさん、準備はいいですか?もう次はありません。プロストフさん、覚悟はできましたか?」
「ああ、できている。私も参戦しよう。この世界が終わるのを見たくないからな」
彼は鞘付きの剣をブンブンと振りながら、真剣な表情をする。いつもより険しい。死を覚悟できている顔だ。
皆頷き、そして一番問題の闇蜘蛛を見た。彼はずっと無視し続けていた。死ぬかもしれない時だというのに、何を考えているのだろうか。
そんな様子を見ていたエミリが声をかける。
「闇蜘蛛さん!時間がありません。力を貸して!」
にこりと微笑むと、闇蜘蛛はこちらを振り向き、やる気が出てきたらしく飛び跳ねて参戦を表明した。まだエミリはアズキールの姫である認識が浸透しているようだ。髪色が戻ってないのが証拠。
「みんな準備して!モンスターの口を斜めから狙ってください。アンジェは風と炎両方の魔法を使って!私はもう魔力がないの」
「わかった!頑張るわ!」
カロリーヌの言葉にアンジェが頷く。
彼女には、二つの魔法がかかっているのだ。今までの冒険の中で責任重大。間違えることはできない。全身に汗をかき、皆手を前に突き出す。
「よし、準備はいいか?いっせーのー!」
ドミニックの合図で、全員が全ての魔力を出し切って攻撃。全ての属性の魔法攻撃を敵の口付近に向ける。全ての属性が虹色のように、綺麗に放たれた。
蔦の盾を貫通して攻撃は当たり、モンスターの口の脇を破壊する。攻撃の弾は放たれることなく、口の中に魔力と共に入ってしまう。
ドーンと凄まじい音を出して、爆散。ドロドロの化け物は分散して溶けてしまう。
皆ガッツポーズを取る。これで戦いは終わりだ。
皆抱き合って喜んでいたが、「ルーペント」が拘束回転。ニュルニュルと泥水が動いて、修復してしまう。どうやらこのモンスターは「ルーペント」が体にある限り再生するらしい。まだ倒せていない。
宝石は大きな口の上に戻って、モンスターの皮膚に覆われた。
もう魔力も残っていないというのに、どうやって倒せばいいんだ!全員喜びが一気に冷えて無言のまま、何も言わない。いや、驚きのあまり固まっている。
エミリは賢い頭を動かし、一つだけ倒せる案を思いつく。それはアズキールを倒したシプリートに女王を制圧してもらうこと。今、彼の体はアズキールの意志が強い。彼を引き離せばいい。
巨大なモンスターは、クルクル回転してこちらへやってくる。急いで全員ドミニックの上に乗り、サソリの毒針をなんとか回避。怪我もしていない。
「くっ……四人は重すぎる……」
フラフラしながらも頑張って、影のシプリートまで空を飛ぶ。彼は油断していたようで、我々の姿を見ると驚いてしまう。
消えようとしたら、エミリが手を振る。
アズキールはエミリがずっと欲しくて、洗脳したのだ。反応するに違いない。
予想通り逃げるのをやめて、その場で立ち止まった。頬を赤らめている。やはりエミリが大好きなのだ。
「アズキール!やめなさい!それとシプリート、聞こえてる?」
そうエミリが言うと、彼はビクッと反応して目線を逸らす。逃げようとしたが、体が動かない。もう一つの意思が蘇ってしまったようだ。
シプリートはその声で目を覚ます。ここは一体どこだろうか。
どうやら心の中らしい。シプリートは黒い泥の中に埋まっていて、うまく抜け出せない。でも、暗闇の向こうから鮮明に声がする。エミリの声だ。
よかった、洗脳が解けたんだ。よかったよ。
それからみんながメッセージを送ってくる。
「シプリートいじめたのはすまんな。もうしないし、仲間だと思っているさ。だから早く目を覚ませ。本当は兄としてそ、尊敬している……」とドミニック。
はは、もうあの時のことは許したさ。それに僕よりもドミニックの方がリーダーシップ凄かったな。敵わないや。
「お兄様!また一緒に恋バナしようね!!だからお願い!目を開けて!」とアンジェ。
アンジェと話すの楽しかったな。また、話をしたり遊んだらしような。
「王子、いつもありがとうございます。目を覚ましたら、塩をあげます。運動には必要ですからね」とカロリーヌ。
天然発言、またしてるな。お前らしいや。提案いっぱいしてくれて、ありがとう。お前の起点、凄かったぜ。
「シプリート、いるなら返事をして!あなたとお花を育てたこと覚えてる?」と最後にエミリがたくさん話をしてくれる。
ああ、覚えているさ。
「隣町に買い物へ行ったことは?」
ああ、もちろん楽しかった。
「一緒に勉強したことは?」
ああ、勉強会はお前の方が優秀で教えられてばかりだったな。
「最後に言うよ。私ね、シプリートを誰よりも一番愛してるの!!大大大好きよ!!また思い出をたくさん……みんなで作ろうね」
そう言葉が聞こえて、目が冴えてきた。口だけで笑みを浮かべる。シプリートはみなから愛されているんだ。それがわかっただけで、とても心があったかくなる。
でもエミリのことが一番好きだ。だからいつもよりかっこいいところを見せてあげたい。ずっと弱虫で臆病だったけど、冒険すればするほど勇気が湧いて前向きになれたんだ。今抜け出さなければ!
「ダメだ。お前のこと、逃さねえ!」
だが後もう少し……後もう少しなのに、アズキール。アイツが足を引っ張って邪魔をする。
でもそんなの関係ないんだ。エミリとのいつもの日常も、カロリーヌやアンジェ、ザールやドミニックと冒険した日々も僕にとっては大切な出来事だ。だから、今変わるんだ!!僕は……
その意志がすべての空間を暗闇から光り輝く場所になっていき、泥の中から抜け出すことができた。
そしてアズキール。お前は本当に辛かったよな。憎しみや怒りを買っていたんだから。だけど、今度からはお前の怒りと憎しみは自分が受け止める。安らかに眠っててね。それからエミリは二人で愛し合うよ。
「……ありがとう」
アズキールがそう呟いて、心の中からチリのように消えていく。
アズキールとシプリート。この二人はエミリのためなら頑張れるんだ!!