さとみ 「なんだ、お前起きたんだ。」
ソファの上で寝ていたさとみが、ゆっくり体を起こした。
AIのくせに寝相だけは妙に人間臭い。
るぅと「まだいるんですか…、」
そう言うと、さとみはじっと俺の顔を見つめて言った。
さとみ「まぁお世話係だしな」
さとみ「あぁ、それで、」
さとみ「……莉犬は?」
キッチンの方を指さす。
るぅと「まだ部屋ですよ。」
るぅと「体調まだ良くないみたいで」
その瞬間、さとみの表情がほんの一瞬だけ固まった。
AIなのに、“嫌な予感”、みたいな反応だった。
さとみ「……雨、降ってたからな。」
るぅと「あなたのせいですけどね」
少し力強く言う。
そう聞くと、あいつは答えずに立ち上がった。
そのまま莉犬の部屋の前でノックもせずにドアを開ける。
るぅと「ちょっ、勝手に……!」
怒りかけた僕の声が、喉で止まった。
部屋の中。
莉犬は布団の上で小さく丸まっていた。
ぐったりしてて、顔色は青白いように見えて、
額には汗がにじんでいる。
まるで“熱で倒れてる人間”みたいだった。
るぅと「莉犬!?大丈夫!?」
駆け寄ろうとした瞬間、さとみが腕を掴んで止めた。
さとみ「触るな。」
るぅと「は!?なんで——」
さとみ「熱、高いから。」
莉犬「…あれ…2人とも…」
莉犬は小さく震えながら、ぼそりと言った。
「ねぇ……なんか、胸が痛いの……
息すると、変な音がする……」
確かに、呼吸に合わせて
胸の奥で“カチッ……カチッ……”と、小さな電子音がしている。
僕は一気に血の気が引いた。
るぅと「……なにその音…」
るぅと「…心臓じゃないッ……?」
莉犬は苦しそうに笑った。
莉犬「ねぇ、俺…ただの風邪だよ…?」
莉犬「昨日、雨の中ちょっと外出ただけ」
さとみが低い声で言う。
莉犬「莉犬。お前、どれくらい外いた。」
莉犬「数分…だよ、…?」
さとみは息を呑んだ。
さとみ「……アウトだ。」
るぅと「アウトってどういうことですか?」
僕が問うと、さとみは苦しそうに言った。
さとみ「こいつは、人間じゃない。」
莉犬の目が揺れた。
莉犬「人間じゃない、?」
莉犬「変なこと言わないでよ…」
汗で濡れた莉犬の頬が震えた。
莉犬「俺……人間じゃないの…?」
その瞬間、
莉犬の胸の奥で、“ビィッ…”と電子音が鳴り、
部屋の空気が一瞬止まった。
僕は思った。
——これ、“体調不良”なんかじゃない。
これは、
機械が壊れていく音だ。
その瞬間目の前で莉犬は苦しみ始めた。
表情が歪んだ。
額に触れると、熱いどころじゃない。
皮膚の奥から異常な熱が伝わってくる。
さとみは一瞬で莉犬の腕を掴んだ。
さとみ「莉犬、動くな。」
さとみ「内部温度が急上昇してる。」
さとみ「このままだとお前は…タヒぬ。」
莉犬「な、なにそれ…ッ」
莉犬「息ッ……できないッ……!」
胸を押さえて倒れこみ咳き込む莉犬。
その様子は、誰が見ても
「体調不良で倒れた人間」
にしか見えない。
莉犬ver
目が覚めると、体が熱かった。
吐き出す行きは熱いと言うよりもジリジリとした熱気に変わる。
心臓の孤独が早くなって、どくどくの心臓の音さえも聞こえてしまう。
2人は俺を見るなり驚愕した。
さとみくんはおかしなことを言う。
俺は人間じゃない。と。
胸の奥でまた何かがチカッと光る。
瞬きの中で、視界が水平に、僅かにずれた。
自分の呼吸さえ、本物かどうか分からなくなる。
俺は誰。
俺は莉犬じゃないの?
君は、
誰なの?
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神ですか?