第2章「仄暗い願い」その16
練習が始まった。
修介は壁際に座り、練習する俳優の卵たちの様子を眺めていた。
もう、修介があれこれ言う段階は過ぎている。
あとは、役者たち 各々(おのおの)のやりやすさや、完成度を目指せばいい。
今後は、練習を最初から最後まで見届けることも少なくなる。
今のうちに、彼らの姿をよく脳裏に焼き付けておこう――そんな気持ちで、修介は練習風景を見守っていた。
「――ちょっといいか」
しばらく練習が進んだ頃。
シーンを一つ終えた時点で、直木がそう告げた。
彼が見ているのは、岡島と相瀬。
その傍(かたわ)らには香島も立っている。
今練習していたシーンは 終盤。
「喋(しゃべ)る」という、意思疎通(いしそつう)のしやすい手段を取らずに心を通わせた人々のシーンだ。
「……?」
直木の視線を受けた岡島が、首を傾(かし)げている。
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