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誠実に、真面目に上官の指示に従う勇樹。
それ自体は素晴らしいこと、素晴らしいことなはずなのに
何故かみんなは勇樹を嫌い、憎んでいる。
こんなの、あんまりだよ..!
僕の目の前に広がる悲痛な現実に胸を痛めて
涙を零し、眠りについた。
「こういちっ!朝だよ!」
「今日も元気だねぇ、」
目をキラキラ輝かせる勇樹。その勇樹の周りにある悪意のことを思うと胸が締め付けられる。
「ほら!早よせんと上官に怒られるで!」
「分かってるよ..!」
寝ぼけ眼で準備をする。
「あと1分で朝礼だよ!?早く!!」
「うそ!?やばいやばい」
あわてて部屋を飛び出した。
「朝礼を始めるっ!」
「はいっ!」
僕の前には屈強な男の子達がわんさか居る。
そして僕は自他ともに認める小柄。
上官が何処にいるのかも分からない。
「今朝、伝達が入った。争いが始まったとの事だ。」
一瞬にして空気が変わった。
「我々の仕事は敵地へ忍び寄ること!」
そんなこと初めて聞いた。
「静かに、素早く激戦をくぐり抜け敵地へ行く。それが仕事だ。」
そんなの、あまりにも危険じゃないか..!
激戦地じゃないだけまし、なのか?
否、敵地ももちろん危険なはずだ。
「敵を内部から崩せ。内部が崩れれば激戦の流れも変わる。分かったら準備をしろ!今日から移動だ!」
「はいっ!」
食事を慌てて済ませる。
みんなあっという間に食べきって、荷物をまとめている。
それに対して僕はやっと3分の2を食べきったところだ。
何に対しても僕は昔からゆっくりだ。
「ご馳走様でした。」
食べ終わったら慌てて準備をする。
みんなに遅れを取ったぶん、なるべく早く。
寝巻き、軍服、軍服、日用品。
生活で最低限使うものだけをリュックに詰め込む
「あとはこれだけでも..!」
教科書も同時に詰める。
戦争に出た今、生きて帰ることはできないかもしれない。でも、まだ希望はある。
だから生きて帰ったときの為に僕は今も勉強を続けている。
「こういち!行くよ!」
「あ、うん!」
慌てて荷物を担いででる。
「これで全員揃ったか。出発するぞ。」
上官の指示に従い僕達は歩き出した。
「ここの先を真っ直ぐ行くと激戦地にあたるから迂回していくぞ。」
いつも鬼みたいな上官だけど、こういう所は思いやりがあるのかもしれない。
「任務と関係ない無駄タヒにさせる余裕などないからな。」
そんな一言がなければいい人なのに。
「ここからは静かに、バレずに、素早く移動だ。我等の1歩は日本の勝利への1歩となる。」
その一言で気持ちが引き締まった。
「あっ!𓏸𓏸さん!」
見知らぬ男性が上官へ声をかけた。
上官と男性は2人で奥へ行き話し始めた。
しばらくすると上官が帰ってきた。
「あそこに見張りがいるらしい。5時になると見張りは交代するらしいからその時間にささっとぬけるぞ」
なるほど。敵がいたのか。
「勘付かれないよう息を潜めておこう。」
「はい」
皆がいつもの100分の1くらいの声量で答えた。
しばらくこそこそ待っていると
「今だ、!物音を立てず行くぞ!」
声を抑えながら上官が言った。
「はい!」
こちらも声を抑えて答え、上官へ着いて走った。
「ここを抜けるとあまり見張りなどは見られないようだ。ここで全て食い止めるためだったのだろう。」
その一言でみんなが一気に力を抜いた。
「でも、ここは敵地にとても近い。気をつけるように。今日はここで泊まろう。」
みんな思い思いの居住区域を決めていった。
「こういちっ!見てこれ!」
慌てた様子で勇樹が僕を呼んだ。
「ゆうきどしたん?」
「これこれ!」
勇樹は近くの崖の下を指さした。
「うわぁ、怖っ!?」
崖の下には無数の針が一面に張り巡らされていた。
「こんな感じで近づいた敵を排除するための罠なのかな。」
「多分そんなだと思う。」
「おい!そこのふたりは何してるんだ?」
上官に呼ばれた。
「す、すみません!」
「ほら、集会始めるぞ。」
集会で言われたことは単純なものだった。
今夜はここで過ごすこと。
明日の朝は食事をした後少々稽古をして出発すること。
明日で完全に敵地へはいること。
「ではこれで解散!あ、食事配るぞ。」
俺らの食事は国に管理されているため上官から受け取り、思い思いの場所で食べることになった。
「ほんとうに、始まったんだな。戦。」
「だね、」
今日見た針や見張りを避けたことから徐々に実感が湧いてきた。
「ちょっと、怖いね。タヒぬかもしれないんだよ?」
「それを俺らは覚悟した上で来たんだ。お国のためにならタヒねるよ。」
平然とした顔で勇樹は答えた。
「さすがゆうき。かっこいい。」
食事を終えたら早々に寝ることになった。
次の日。
今日は一睡もできなかった。瞼の裏にあの針の光景がこびりついて、眠れなかった。
「ほら!食事を配るぞ。」
配られたご飯を食べたら次は稽古。
先に食べ終わったみんなはどこにいるのかな?
少しの間探し回った。
「あ、!いた!」
勇樹と勇樹の陰口を言っていたあの2人、?
針のある崖の隣で何をしてるんだろう。
よく見ると勇樹は崖の下を覗いていた。
ドカッ
2人が勇樹を崖に突き落とした。
「嘘だろ!?」
でもさすがの勇樹の運動神経だ。
くるっと身を翻して崖に掴まった。
「なに、を、する!」
勇樹が崖にしがみついているその手を2人はぐりぐりと踏み始めた。
「っ、!やめ、ろ!」
そして1本、また1本と指を崖から引き剥がし始めた。
「何してるんだ!やめろ!」
勇気を振り絞って僕が出たその瞬間
「くそっ、が、!」
勇樹の手が完全に崖から離れた。
「勇樹!?」
僕の叫び声に返ってきたのは
グシャッ
そんな音だった。
「おい、!お前何故そんなことを!」
「うざかったんだよ、あいつ」
「ほんとに!タヒんでせいせいした。」
アイツらに掴みかかりたい。アイツらを崖に落としたい。
でも、体格差がありすぎる。
「そんなにあの子といたいなら、いいよ?あの子のとこに連れてってあげようか?」
そう言いながら2人は僕に近づいてきた。
「やめろっ、!」
僕は上官のもとへ走った。
「上官、!」
「あ?なんだ?」
「勇樹が、!崖に、落とされて、!」
言いながら涙が溢れてきた。
「𓏸𓏸と、𓏸𓏸に突き落とされて。針に..!」
「あぁ、そうかタヒんじゃったのか」
ケロッと上官は言った
「あいつらに、処分を下してください。」
「無理だ。」
きっぱり断られた。
「何故、!無駄に犠牲を出したんですよ!?人を殺したんですよ!?」
「あいつもともと嫌われてたんだろ?空気が読めてないとかなんかで」
「だからなんですか。」
「あいつが悪いよ。空気を読めなかったあいつが悪い。」
勇樹が悪いと言われた瞬間怒りが込み上げてきた。
「じゃ、そろそろ行くぞ。」
上官は歩き始めてしまった。
それが彼の最期なのか?
誰よりも人のことを想って、人のために生きてきた彼にすることなのか?
人を気遣って、優しく声をかけてきた勇樹は誰にも悲しまれずにタヒぬのか?
おかしいだろう..!
おい神様。これが勇樹に対する仕打ちか?
この世に神様がいるのなら。この不条理を正してください。
そう願い、僕は針山に突っ込んだ。
《終》