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「あ、あ、あのね、永井くん」
「はい」
「ま、毎日だと、そのあの……た、体力がもたなくて……あの」
もたもた、ごにゃごにゃと口を動かす。毎日はさすがにキツいよ。あんなに抱かれたら腰砕けそうだもの。それに心臓がもたない……。
「仕事に支障が出ると?」
「……っそう!! そうなの!!」
私は仕事を理由にあれこれと言い訳をはじめた。
「早く出勤しないといけないし、明日からは残業もする予定だから」
ふむと考え込んだ永井くん。なんとか毎日サブスクは避けたいっ……!!!
願うように懇願し、ややあって彼が口を開く。
「……わかりました」
「ありがとう!!」
「しばらくは週末サブスクで行きましょう」
「し、週末サブスク!?」
金曜夜から来るように言われて、ごくんと唾を飲み込んだ。
「週末サブスクは第一幕が終わるまでです」
「はぁ……」
半分しょうがないという感じの永井くん。え、第二幕以降はどんな……?
そんな疑問も浮かぶけれど、酔いもあって言葉がうまくでてこない。
「そろそろ行きますか?」
「あ、うん……」
ふたりでお店を出て最寄駅へ向かう。途中の飲食店のテラス席は、まだまだ賑わいをみせていた。
いつもよりビールを飲んだので、若干足がふらついている。
「こっち」
手をパッとつながれて、彼のポケットの中にすっと収まる。
すごくスマートに手を繋ぐけど、こういうのに慣れているんだろうか。
そう思って背の高い彼の顔を見つめる。
「どうかしましたか?」
「あの、えっと……」
手を繋がれたまま、彼の歩く方にとことこついていく。地下鉄の駅まで一緒に来てくれるって話しだったけれど、こっちはなんか違うような気がする。
さっき歩いた裏通りを永井くんは進んでいく。人気がなく静かだ。地下鉄の駅のある大通りからは、どんどん離れて行っている。
「永井くん、どこ行くの?」
「花音」
ポケットの中で、指が絡まる。ビクッとすると同時に顎をすくわれて、キスが降ってくる。
体を引こうとしても、後頭部をぐっと支えられていて逃げられない。
いつの間にか舌が絡まって、キスが深くなる。アルコールのせいか頭がくらくらしてよろけそうになると腰をぐっと引き寄せられる。「そんなにふらふらで。家まで送ります」
「ふぇっ……? だ、大丈夫だからぁ」
いやいやと小さく首を振るとぎゅっと抱きしめられる。すっぽり包まれる感覚。頭をすっと撫でられたら、恥ずかしくてぎゅっと目を瞑った。
「人の気も知らないで」
「えっ?」
「週末、覚悟しておいてくださいね」
永井くんはそう言うと体を離して歩き出し、狭い路地から表通りに出た。
サッとタクシーを拾って一緒に乗りこむ。彼に促されるまま自宅近くの地名を告げると、