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──10年前。
王宮殿の使用人見習いとなって、1ヶ月ほど経った頃。
洗濯済みのタオルの山を抱え、回廊を足早に歩いていたときのことだ。
「うわあっ!」
回廊に面した中庭のほうから、ふいに幼い叫び声が上がった。
歩を止めて顔を向けると、そこには尻餅をついた、小柄な王太子殿下の姿があった。
手元には木刀が落ちている。
「ううっ……」
王太子殿下は荒い呼吸を繰り返しながら、大きな瞳を潤ませ、目の前に立ちはだかる人物を見上げた。
その人物は対照的に息切れひとつせず、木刀片手に王太子殿下を冷ややかに見下ろしている。
「口ほどにもないな」
……まるで悪役の台詞だ。
一体どこの高位貴族のご令息だろうか。
国王陛下の次に尊い身分にある王太子殿下に、あんなふうに高圧的な態度を取れるなんて、よほど豪胆と見**********
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