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こういう時、ちゃんと挨拶しなきゃダメだよねって思って立ち上がって
『姫野〇〇です』
って挨拶する。
「うわー。可愛い」
「もう、渡辺には勿体ないわ」
「渡辺って高校教師だろ?まさか生徒とか!」
みんなが笑いあっている。
生徒⋯その言葉に胸がズキっと痛む。
「現役じゃねぇーよ。元 生徒な」
別に隠す訳じゃない、って言った先生に少しホットした。
でも、
「え、それって法的に大丈夫なの?」
「現実にあんだ。そんな展開」
そんなの、予想してなきゃダメだったのに直接言われるとやっぱり悲しい。
「期待に添えてなくて悪ぃけど、〇〇はもう22なの。全然大丈夫だから」
って先生は平気に笑う。
そしたら彼らも「そっか」って笑う。
「なぁ、渡辺!1杯だけ乾杯しない?」
「あぁ、オレ車なのよ。」
申し訳なさそうに先生は手を合わせる。
「彼女に運転して貰えば?」
「あー。俺も飲み行く時は嫁に任せてるわ」
「うちは嫁も飲みたがりだからジャンケンだな」
当然だ ってほどに︎笑いあって会話する中、先生は頭をポリポリしながら「悪ぃな」って謝る。
「あ、そっか⋯若いもんな彼女。」
そんな言葉の中には「免許ないんだ」って意味が含まれてる。
別に若くたって免許もってる人はいるし…何で私取らなかったんだろう。⋯悔しい
「ってか。ほんと可愛げだよな。純粋そうで」
「うちも結婚したばっかは可愛かったのに」
「年齢と共に老けんのよ。女は」
って彼らは話す。
「可愛い」って言われたのは素直に嬉しかった
けど
きっとこの「可愛い」は違う意味での可愛い。
全然、嬉しくなくて。
上手く笑えなかった。
「あ、彼女困った顔しちゃった。」
「ゴメンねぇ。オッサン達に囲まれて。」
「オッサン、若いこと話すなんてないから浮かれちゃう!」
アッハッハッハッハッって笑うあの人たちに恨みなんてないけど。
『いえ⋯』って笑ったつもりなのに笑えない
残ってた烏龍茶を飲むと、溜息が出てしまった。
「ちょっと。人の彼女に気安く喋りかけないでくれる?」
先生が、彼らに薄く笑いながら言う。
もう、感情がめちゃくちゃで泣きそう
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