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2日後、5人は新千歳空港の国内線ターミナルにいた。
「もう少しかな」
ジェシーが時計を見やって言う。
彼らが待っているのは、大我の帰りだ。予定通り東京での仕事を終え、また北海道に戻ってくる。それをみんなで迎えに来た。
しばらく待っていると、ゲートからスーツケースを引いた大我が姿を見せた。
樹が手を振って知らせると、大我は笑みを浮かべた。
「みんな来てくれてたんだ。ありがとう」
「これから行きたいところがあるのさ」
北斗が言った。「疲れてなかったらだけど」
「いや、全然。どこ行くの?」
「さっぽろ雪まつり」
千歳に来る前にみんなで話していたのは、今開催しているさっぽろ雪まつりに行くプランだ。少し遠いが、せっかくだから行こうとなった。
すっかり調子を取り戻した慎太郎は、すでに浮き立っている。
「ねえ、早く行こうよ」
5人は笑いながら空港を出た。
優吾の運転で札幌に向かう。
その車内は、かかっている音楽にのせて歌うみんなの歌声で賑やかだ。
1時間ほど車を走らせ、大通会場の近くまで来た。
車を降りると、途端に冷えた空気に包まれる。降り積もる雪の中歩いていく。
「みんな寒くないかい?」
北斗が声を掛けると、「大丈夫」とそれぞれ返事をした。
やがてゲートが見えてくる。
その奥には、大きな建物の形をした雪像が鎮座している。窓から屋根に至るまで、精巧に作られている。
「わあ、すごい!」
慎太郎は声を上げた。初めてで興奮しているようだ。
5人も辺りを見回し、そのお客さんの多さや規模の大きさに驚いている。寒さも関係ないほどの熱気だ。
「すごい、人多いもね」
「あ、このキャラクター見たことあるべ」
「あー、それ何だっけ……」と楽しそうな笑声を上げた。
大通りを過ぎると、その足ですすきの会場へと向かう。
「さっきは雪像だったけど、こっちは氷像とかがあるの」
歩きながらジェシーが慎太郎に説明した。
そこは先ほどと変わらない盛り上がりになっている。
薄暗くなってきた時間に合わせ、ライトが氷を照らす。透明さが際立って、美しい光を発している。
「うわぁ…」
大我が感嘆の声を漏らした。白い吐息がふっと消えた。
「これすごい。めっちゃリアルな鳥だ」
慎太郎は2羽の鳥を模した像を指さす。体は小さいが、尾が長い。そしてくりくりした瞳がかわいらしい。
「あー、これはシマエナガっていう鳥だわ」
優吾が言った。「ちっちゃくて丸くてかわいいのさ」
「北海道にしかいないんだけど、なまら珍しいから俺らも見たことないんだよね」
樹も続く。
「でもいつかは見てみたいな」
「みんなでね」
とジェシーと慎太郎は笑い合った。
凍てつく寒さの中でも、そこは温かくて真っ白な、湯気みたいな空気で満ちていた。
続く