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幽々子様たちが嵐のように去り、宴の片付けも終わった頃。 「ふぁ……。もう眠いわ。アンタもさっさと寝なさいよ」 霊夢はそう言い残し、奥の部屋へと消えていった。
静まり返った博麗神社。 俺は一人、里で買い込んできた大量の荷物を解いた。 最高級の杉板、真っ白な障子紙、そして里の道具屋で吟味した新しい金槌(かなづち)とノミ。 五万二千円の大部分は、もうこれらに化けていた。
「よし……やるか」
そこに、箒にまたがった魔理沙がひょっこり現れる。 「おいおい、こんな夜中に何してんだ? まさか夜逃げの準備じゃねーだろな」 「しっ、声がデカいよ。……これ、神社の修繕をしようと思ってさ」 魔理沙は驚いたように目を丸くし、それからニカッと笑った。
「なんだ、そういうことか! 気が利くじゃねーか。よし、私の魔法で一気に……」 「いや、いいんだ。これは俺一人でやりたい」 差し出された魔理沙の手を、俺は静かに、でもはっきりと断った。
「……あいつ、文句ばっかり言ってるけどさ。ここ、居心地いいんだよ。だから、自分の手で直して、あいつを驚かせてやりたいんだ」 俺の言葉に、魔理沙は一瞬面食らったような顔をしたが、すぐに肩をすくめて箒を浮かかせた。 「……ふん、お熱いねえ。分かったよ、邪魔者は退散だ。その代わり、明日の朝飯は期待してるぜ、工務店さん!」
魔理沙が夜空へ消えていくのを見届け、俺は軍手をはめた。 まずはギシギシと悲鳴を上げていた縁側の床板。 古い釘を丁寧に抜き、新しい板を合わせる。
「……五万二千円か。あっちの世界じゃ、これだけで家が直るわけじゃないけど」 ノミで溝を削り、板をはめ込む。 「ここでは、このお金と俺の腕で、誰かを笑顔にできるんだな」
カツン、カツン、と、布を当てて音を殺しながら金槌を振るう。 破れた障子を剥がし、糊を塗り、ピンと紙を張る。 外の世界にいた頃は、こんなに一生懸命に何かを直したことなんてなかった。
深夜、冷え込む神社の境内で、俺は一人で汗をかいた。 疲労はある。でも、不思議と心は軽かった。 新しくなった木材の清々しい香りが、静かな境内にゆっくりと満ちていく。
「……よし。あとは、あの賽銭箱を磨き上げれば、終わりだ」
東の空がわずかに白み始めた頃。 俺の目の前には、見違えるように整えられた「博麗神社」の姿があった。