コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
新シリーズです
葛葉[ ]
叶『』
葛葉side
俺は吸血鬼として生まれた
吸血鬼は特殊な力を使えたり、空が飛べたり…とにかく人間にはできないことが容易にできる、
いわば人より進化した人種だ。
だからこそ、この世界では吸血鬼は排除すべき存在で
恐れられるものだった
そのせいで俺は今もこうして
村の外れの館に追いやられている
不自由のない生活を送れてはいるが
なんだか足りない?生活だとしみじみ思う
[あ〜なんかつまんねぇなあ〜]
そんな変わらない日常を送っていたある日
突然館の扉が開く音がした
…誰だ?街の人間は入ってこないはずだし
家族、、はとっくにいなくなってるしな
俺は警戒しながらドアの方を見る
なんだ?このガキ
下を見てみると
首を傾げる小さな少年の姿があった
茶色のふわふわした髪、灰色の大きな瞳をもつ
顔の整った少年
小学生か?いや、それよりももっと下だな
人間がこの館に来たのはいつぶりだろうな…
俺は内心めんどくさいと思いつつもこのまま放っておくこともできないと思い、質問をする
[おいガキ、どうしたぁ?迷子か?]
少年はふるふると首を横に振った
[じゃあどうしたんだ?]
少年はただ黙って俺の方を見る
こんな離れの館に来るなんて
絶対何か理由があるはずなのに
[言わなきゃわかんねぇよ…]
俺は半分呆れ気味に呟く
すると少年は目一杯に涙を浮かべ今にも泣きそうな顔をしていた
[あぁ、おいっ!泣くなって…]
子供の扱いには慣れていない。こういうの苦手なんだよ
どうしたら泣き止むのだろう
翼でも見せてやれば、面白がるだろうか
俺は吸血鬼特有の真っ黒な翼を出す
その途端少年はキラキラした目で俺の方を見た
きれい!きれい!なんて囃し立てられるものだからなんだか恥ずかしくなってくる
少し不服そうな俺をみて少年は手を伸ばした
『 んー!なあえ!』
なんだ?なあえ?
『 なあえ!ない!』
名前を知りたがってるのか?
どこのやつかもわかんないガキに名前を教えるのか…まぁきっともう二度と会わないだろうし、いいか
[葛葉だよ]
『 !くーは!』
キラキラと輝かせる瞳に
俺が写っているのがなぜだか面白かった
[で、なんでここにいんだよ]
『 ?』
“?”じゃねぇんだよ…
このままじゃらちが開かないと思い、
俺はその少年を抱えて空を飛んだ
『 わぁぁ!!』
少年の茶色のふわふわとした髪が靡く
そして、さっき羽を見せてあげた時と同様
目をキラキラと輝かせていた
少し飛行を続けていると
館の下にある町が見えてきた
まぁこの町にきっと住んでるんだろうし、適当な場所で下すか…
[よしっ、じゃーな!もう二度とくんなよ!]
『 !や!くーは!』
俺は嫌がるガキに背を向け
そのまま館へと戻っていった
はずなのに…
翌朝、またあのカギが館にやってきた
もう二度と来るなって言ったのに…
[おーい、なんできたぁ]
『 !くーは!これ!』
少年は俺に紫色の花を渡してきた
『 おれい!』
花なんて興味ないんだよな…
まぁでも、渡されたものは断れないし
俺はとりあえず少年の花をうけとることにした
その日から毎日
少年は館を訪れるようになった
『 くーは!くーは!』
あ〜やけに気に入られちまったぁ
ぶっちゃけあまり人間とは絡みたくない。
敵対している人種同士だからってのもあるけど
人間は脆いから、いつ死ぬかわからないし
この手で触ったら壊れてしまいそうで
近づくのが怖い
きっといつかいなくなるから
どうにかしてこのガキ、離さないとなぁ
[このままずっとここに来るなら、喰っちまうぞ?]
ちょっと脅しの言葉をかける
しかし少年はへらへらと笑うだけで
怖がる様子は一切なかった
意味が分かってないのか?
はぁ…これは大変だなぁ
ジェスチャーで食べるぞ、と伝える
しかし少年はただケラケラと笑うだけで理解はしていないようだった。
はぁ…
そんな騒がしい日々が気がつけば三年立っていた
少年は5~7歳?くらいにまで発達した…と思う
人間ってのはすごいもので、三年も経つと少年は俺と普通に会話ができるようになっていた
[ここに来んなって毎回言ってるだろ…]
『 やだ!ずっと来るもん!』
[言うこと聞けよ!ガキ]
『 ガキじゃない!』
[じゃあ人間!]
『 僕は叶っていうの!!』
叶…
そういえば三年間一度もこの少年の名前を聞いたことがなかった
そうか、叶…
[ん?苗字は?]
たしか人間には苗字というものがあるって聞いた気がするんだけど…
『 ない!』
[なんでだ?]
『 僕に親がいないから!』
話を聞くとどうやら叶に両親はおらず
今は村の個人院で住まわせてもらっているらしい
道理で毎回この館に来られるわけだ…
[じゃあ叶!どうしていつもここに来る?]
『 !…なまえ』
叶はハッとした顔をして照れくさそうに下を向いた
なんだ?名前を呼ばれたことが嬉しかったのか?
って、そんなことはどうでもよくて!
あぁもう!
やっぱり人間と話すのは難しい