そこからまた数年
叶は10歳ほどになった…らしい?
結局何度注意しても来るのをやめない
はぁ…まじでどういうことだよ
[なーお前いつまでくんの?]
『 お前?』
[あー叶]
俺に名前を呼ばせると満足げな表情をする
ったく、いつからこんなに生意気になったんだ?
ついこの間まではまだ言語もろくに話せなかったのに
っていうかずっと話逸らしてくるな!こいつ
[で、いつまでくんの?]
『 んーずっと!』
[ずっとってなんだよ]
『 僕が死ぬまでずっと!』
人間の寿命は…たしか八十年くらいだっけ?
結構短いが、かといってもこいつに振り回される期間だと思うと相当長いな…
[はぁ…]
[てかお前こんなところにずっと来てると友達いなくなんぞ?]
『 元々…いないもん』
叶は悲しそうな顔をして俯く
…この話題は流石にまずかったか?
めんどくさいとは思うけど、
悲しんで欲しいわけじゃない
だからそんな泣きそうな顔するなよ…
[あぁ!わかった!じゃあ俺達は”友達”な!]
『 とも、だち?』
叶はキラキラとした瞳をこちらに向けてくる
[そうだよ、友達だから元気出せよ]
『 じゃあ葛葉は友達1号だ!』
『 えへへ』
そういうと叶は顔を赤くしてにまにまと笑った
…可愛い顔はしてるんだよな
てかノリで友達になってしまった…
もういい!どうにでもなれ!
次の日
今日は下の町に久しぶりに降りた
最近の人間の傾向と流行りを調査するために
俺はこうして定期的に町へ降りている
といっても吸血鬼だとバレると色々とめんどくさいので
毎回、黒髪に赤パーカーで人間を装い紛れていた
「〜〜!」
「ーー!!」
ん?なんだ?あっちの方が騒がしいな
俺が道を歩いていると奥の方から大きな声が聞こえた
なんだ?喧嘩か?
人間の喧嘩というものに少し興味があった俺は
ひっそりと人影から現場を覗く
すると
!
「おい!なんとかいえよ!おら!」
『 っ、』
叶が中学生の団体に暴力を振るわれていた
うわぁ、人間って意外と物騒なんだな、
ってか叶、痛そー
あんな大きいやつと喧嘩って何したんだよ
まぁでもこれは人間同士の問題だし、
俺がなんか口を挟むのもちがうよな
それに叶もこれで痛い目見れば生意気じゃなくなるだろ!
あいつは生意気すぎなんだよ!少しは反省しろ!
そう思い俺はその場を立ち去ろうとした
「ほら!なんか言ってみろよ!!」
「親に捨てられた叶くん?」
『 …っ!』
のに
[やめろよ]
「は?」
[こんなちいせぇやつを寄ってたかっていじめんじゃねぇよ、だせぇな]
なぜか俺はいじめっ子の前に立っていた
「なっ、」
『 葛葉…、』
[ほら、いくぞ]
何してんだ俺は
人間の問題に首を突っ込んでいくなんて
どうかしてる
でも、
叶が、悲しそうな、泣きそうな顔…してたから
それを見たらいてもたってもいられなくて
あ〜口を挟まないって決めてたのにな
『 いぃ…』
[ほら、我慢しろ]
俺は館に戻り、叶の怪我を見ていた
ていうか一体どうしてあんな状況になったんだ?
[叶、なんであんなことになってた?]
『 …』
[なんか理由があったのか?]
『 …』
俺が何を聞いても叶は下を俯いて黙っている
はぁ…たく
ポンポン
[がんばったな]
俺は叶の頭を撫でながらそう呟く
だってそうだろ、たかが一人の小さな小学生が、中学生相手に逃げも、泣きもせず立ち向かったんだ
叶はよく頑張ったよ
叶はびっくりしたような顔をして
少し頬を染めていた
次の日
『 く、葛葉』
[ん?]
『 これ!昨日の…お礼』
そういうと叶は白いツツジを渡してきた
こいつ花が好きなのか?事あるごとに渡してきている気がする
まぁ、受け取らないわけにもいかないし…
[ありがとな]
『 じ、じゃぁ今日はこれで!バイバイ』
[あ!おい、]
叶は小走りに去っていった
いつもなら、このままずっと居座るのに
どうしたんだ?あいつ
白いツツジをもらってから
数ヶ月がたった
俺は今日も懲りずに叶に帰れと声をかける
するといつもは聞き流している叶が
珍しく口を開いた
『葛葉は僕に帰ってほしいの…?』
いつも自信満々なその声が今日はとても弱々しく聞こえる
[な、急にどうしたんだよ]
『だって…』
叶はとても悲しそうな顔をする
そんな顔するなって…
[あー!いいよ!ここにいても!]
『本当?邪魔じゃない?』
[何弱気になってんだよ、いーよもう勝手にしろ]
叶は嬉しそうににこにこと笑っている
やっぱこっちの顔の方がいいよな
しかし叶も不安になることとかあるんだな
新たな一面を知れてとても興味深かった
コメント
1件
完全にテラーから離れてました… こんなに離れていたのに読んでくれた方ありがとうございます😭 嬉しい限りです