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カイルの部屋は、城の本棟からは別棟・厩舎きゅうしゃ近くの離れに設けられていた。昔は他の侍従同様、屋敷内に部屋が確保されていたのだが、ブランシュが身ごもったのを機に、うまや近くに居を移したいとカイルから願い出てきた。その方が馬たちの異変にいち早く対処できると熱弁されて、ランディリックがそれを叶えたのだ。

最初、老医師セイレン・トーカは、療養は屋敷内に空きがある侍従部屋で……と勧めた。その方がなにかあった時に医務室も近いし、対処しやすい。

だが、カイルは馬たちが心配だから……と眉根を寄せて首を縦に振らなかった。もう長いこと馬たちの様子を見ていない、それが気掛かりだから、と。

もちろん、自分のこともままならないカイルは今、馬の世話が出来る状態ではない。厩舎の近くにいたからといってさして役には立てないのだが、それで彼の気が休まるなら……とセイレンが折れたのだ。リリアンナが彼に付きそうと言ってくれたのも大きい。


カイルに厩舎傍の自室へ戻ることを許可しているセイレンを横目に、ランディリックはグッとこぶしを握り締める。

(厩舎の傍といえば、オオカミ事件の現場に近いではないか)

兵士たちが急ピッチで城壁にあいた穴を塞ぐ工事をしてくれてはいるが、リリアンナはそんなところに行って、平気だろうか?

ランディリックはそれが気掛かりでならない。


(それに……離れでは目が行き届かない)

屋敷内にいてでさえ、ちょいちょいリリアンナの動向を見失う。それが離れともなれば余計だ。

ランディリックには、その距離がもどかしかった。


せめて見通しのいい場所にカイルの小屋があればいいのだが、あいにく屋敷からはかなり離れているし、間に遮蔽物も沢山ある。本邸の窓からでは様子をうかがえないのだ。


リリアンナは一度離れへ足を運べば、長い時間戻ってこないだろう。カイルの介助もさることながら、大好きな馬たちも近くにいるのだから尚更だ。


ブランシュが産んだ仔馬はリリアンナの愛馬になる予定の子だ。色々あって、まだ彼女は仔馬に対面出来ていない。これ幸いとうまやに足を向けるのは目に見えていた。カイルが傍にいるのであれば、馬たちも安心してリリアンナを受け入れるだろう。

きっとそういう意味でもリリアンナにとってカイルの小屋は魅力的なのだ。


(……何故僕はカイルが厩舎の傍へ移り住みたいと願い出た時に許してしまったんだ……)


今更考えても仕方のない後悔をしてしまったランディリックである。


「カイル、リリアンナ。キミたちはオオカミに襲われた現場近くへ行くのが怖くはないのか?」


ついセイレンから今後の治療について説明を受けているカイルやリリアンナの会話に水を差してしまったのは、致し方ないことだろう。それに、ランディリックの言い分は――真の理由はどうあれ――ここの統率者として理に敵うものだった。


ランディリックの指摘にハッとした様子のセイレンが、「閣下の言い分はもっともでございます。このセイレン、思慮が浅かったと反省いたしました」と頭を下げる。そうして続けるのだ。

ヤンデレ辺境伯は年の離れた養い子に恋着する

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負けるなランディリック!

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