テラーノベル
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月曜日に学校に行くと若井がクラスメイトに囲まれて何やら盛り上がっていた。
「なになに、どーしたの?」
「おはよー、昨日若井が年上のお姉さんとデートしてたって話!」
「だからデートじゃないって」
若井は強く否定して違うから、と俺に言った。けど俺は少なからずショックを受けていた。だって昨日はサッカーがあるからって俺には言ったから。
「けどカフェで2人楽しそうにしてたところ見ちゃったんだからね〜、それにジュエリーショップなんか入っちゃうところまで!若井にそんな彼女がいたなんてね〜」
高校生男子達は興味津々で若井そっちのけで盛り上がる。
いやだ、こんな話聞きたくない。
授業が始まっても俺はぼんやりと若井のことを見つめていた。
授業が終わって俺は一番に教室を出て行った。
若井と話したくない、嘘ついてまで女の人と会ってたなんて、本当に彼女だったらどうしよう。
「元貴まって!まてよっ···」
急いで帰ったけど走ってきたであろつ若井に肩掴まれる。
「離して···なに?」
「···誤解しないで、昨日会ってたのは彼女とかじゃない」
「じゃあなんで嘘ついてまで···何してたんだよ」
若井はぐっ、と返事に困って黙ってしまった。言えないってことはそういうことじゃないの?
「嘘付かなくてもいいだろ、正直にデートだからって断ってくれたら良かったのに!若井のバカ、だいっきらい」
若井の手を振り払って走って帰る。
もう追いかけては来なかった。
若井のバカ!なんで俺に最初に言ってくれないの。
好きな人がいるならなんで俺にあんなに優しくしたの。もしかしたらなんて自惚れた自分が恥ずかしくて悲しくて若井に大嫌い、なんて酷いこと言葉をかけた自分が一番嫌になる。
こんなに大好きなのに、やっぱり俺じゃダメなんだ···枕に顔を押し付けて声が漏れないように泣いた。
その日初めて若井からのごめん、っていうメッセージを無視した俺はそこから冬休みに入るまで若井に話しかけられても返事もしなくて、避けるように過ごした。
若井からメッセージが届いても俺は読まずに無視していた。
こんなに会わない期間なんてなくて寂しくて会いたいのに受け入れられなくて暇な時間をバイトの予定を入れてなんとか過ごしていた。
そして明日はクリスマスだっていうのに俺は暇を持て余して人通りの多い駅前を歩く。
本当だったら今頃、プレゼントを用意して若井とクリスマスの予定を立てていたはずだったし、映画も一緒に観に行っただろう。
プレゼントに貰ったマフラーを巻いて歩いているとふと若井を見かけたとクラスメイトが言っていたジュエリーショップが近くてフラフラと店内を覗き込んで見る。
そこは高校生でもなんとか入れないことはない、若い客層向けの少し前に出来たジュエリーショップでクリスマスを前に店内は賑わっている。
「···うそ」
そこには見間違えるはずがない、若井の姿があってその隣には綺麗な女の人がいた。
やだ、いやだ···。
俺は走ってそこから逃げる。
彼女が出来たって本当だったんだ。
もう今年からはクリスマスも一緒にお祝いすることもきっとない。
あの映画だって彼女と観に行って、夏の花火もお祭りも···。
家に帰って投げ出していた紙袋を拾ってクリスマスのラッピングがしてあるそれを眺める。
俺が貰ったのと似たマフラー、それに手袋があってつい買ってしまった。
黒の手袋はきっと指が長くて綺麗な若井に似合いそうだと思って選んだ。
それをはめた手で俺の手を暖めてほしかった。
いつだって俺は欲しがるばっかりで気持ちを隠して若井の隣にいて···その結果がきっとこれだ。
どんなに気持ちを隠してみてもずっと友達でなんか居られない。だって好きだから、友達なんかじゃないから。
「若井···好きだよ、大好き」
冷たい水で顔を洗って笑う練習をした。勝手なのはわかってる。
けどこの恋を終わらせる為に決めた。
明日、若井に告白する。
そしてフラレて若井が許してくれるなら今度こそただの友達になろう。
許してくれなかったら···それも受け入れよう。
久しぶりに若井からのメッセージを読む。毎日のように俺を気遣う言葉や何気ないことを送ってくれていた。
『ずっと無視しててごめん。明日何時でもいいから会いたい。話したいことがあります』
ピロン、と音がしてすぐに若井から返事が来た。
『返事くれてありがとう、明日15時にうちに来てくれる?俺も言わなきゃいけないことがある』
『わかった、ありがとう』
全部伝えよう。
後悔しないように、大好きの気持ちと、返しきれないくらいの今までのありがとうを。
その夜は何度も何度もなんて伝えようか考えたけど、どんな言葉を使っても自分の気持ちを表すには足りない気がして寂しくなった。
コメント
7件
うわ⋯ここからどうなるんだ? ドキドキ(๑•﹏•)ハラハラ
更新ありがとうございます! すれ違いがもどかしいです‥🥺 続きが楽しみです‥
今さらですが、最初から読ませていただきました🙇♀️ 純愛……お互いに自分が愛されているという自信が無いせいで、踏み込むのが恐くなっちゃってるの悲しいです🥲 もっと早くに出会いたかったです……はるかぜさんとこの作品に。