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小鳥がさえずり、太陽の光が差し込む。
「ふわぁ〜っうぅん。朝かぁ」
寝ぼながら起きようと欠伸をし、朝であることを確認するようにつぶやく声は普段より低い。
「バイトは夜だしなぁとりあえず、ご飯食べよう。」
やっとの思いで身体を起こし、キッチンにつくといつもと同じコーヒーとパンを焼く。
ローテーブルにそれらを置き、使い込み心無しかぺしゃんこになったクッションに座り込み、動画を見る。
その後、夜まで適当に時間を潰していった。
日中をそんなふうにダラダラしている日は、少しもったいないと罪悪感も感じていた。
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「いらっしゃいませ〜」
言い慣れた言葉に、見慣れた光景に飽き飽きしていた。休憩時間、店長が
「明後日のバイトから3ヶ月、ヘルプとしてここへ行ってくれないか。」
問いかけているがほぼ行けっと言っているようなもの。そんなことよりもアルバーンが顔を少ししかめた理由は、ヘルプの場所が書かれた紙だった。
そこは『VSF』という警察署が近くのコンビニであったこと。怪盗なのだから嫌がる理由は当たり前。
しかし、
「はい、わかりました。」
と渋々と返事をする。何かしら情報を得られるかもしれないし、と前向きに考えることにする。生活費のために。
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ヘルプ3日目。今日も何事もないことを祈りながらコンビニへ向かう。
同じコンビニでもいつもと違う雰囲気にまだ少し新鮮味を感じながら言い慣れた言葉を言う。
「いらっしゃいませ〜」
「これお願いします。」
「は〜い!わ、かりましたぁ…」
思わず少し言葉を詰まらせた。相手にはバレない程度だっただろう。
「(VSFだ!)」
やはり、こんなに近くにいると少し身構えてしまう。それに金髪で綺麗な顔。それでも、いつもの笑顔で…
「ありがとうございました〜!ニコッ」
「っ!」
VSFの男は少し固まった。
「どうかしました?」
「いえ…何も。」
なんだったんだろう、と少しの疑問と金髪で顔が綺麗だったこと以外その日のバイトは何も問題はなかった。
しかし、VSFの男はその日からアルバーンがいる、同じ時間に来るようになっていた。
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ヘルプから1ヶ月と少しが経った。VSFの男がここ1週間コンビニに姿を現していない。
「いらっしゃいませ〜」
男が来る時間になる頃、今日も来ないかもしれない、とふと思っていると、
「これお願いします。」
聞き覚えのある声に、顔を上に向けるとVSFの男がいた。
「っ!」
思わずびっくりして顔を凝視してしまった。
久々の登場と目の下にはクマができ、顔色が良いとはいえなかったからだ。
「えっと、何か?」
男は少し困ったような笑顔を浮かべる。
「あ!いえ…えっと、お仕事お疲れ様です!」
何を言っているのだろうか。すぐに自分で発した言葉に後悔する。しかし、
「あ、ありがとうございます。」
男は少し照れくさそうに笑った。
かわいい。そうパッと頭に浮かんだ。だが、すぐに我に返り、慌てて会計をする。
「ありがとうございました〜」
『かわいい』なぜあんなことを思ったのだろう。その日は深く考えずに終え、その日以降会計をしている間ちょっとした雑談をするようになった。