テラーノベル
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夜の海風が、熱くなった頬を優しく撫でる。
冬馬先生の運転する車で辿り着いたのは、街の喧騒から切り離された、静かな海岸沿いの展望台だった。
「……先生、本当に良かったんですか?明日の朝にはまた、忙しいカンファレンスがあるのに」
「ああ……今の俺には、お前の瞳に映る月光を観察する時間のほうが、重要度が高いと判断しただけだ」
車を降りた冬馬先生は、私の肩を抱き寄せ、大きな掌で私の手を包み込んだ。
病院の中では常に「支配者」として君臨していた彼の指先が、今は驚くほど穏やかに、私の肌の熱を確かめている。
「結芽。……一条の言葉に、怯えていたな。俺がいつかお前を壊すのではないかと」
「……最初は、少しだけ。でも、先生が私を見て泣いてくれた時、確信したんです。この人は、私なしではいられないんだって」
私が少し悪戯っぽく微笑むと、先生は不機嫌そうに鼻を鳴らし、私の腰をグイと引き寄せた。
「……ふん。増長するなと言っただろう。……だが、お前の言う通りだ。俺は、お前という存在なしでは、完璧な執刀医ではいられない気すらする」
先生は私の顔を両手で包み込み、額をそっと合わせた。
眼鏡の奥、月光を映した瞳が、これまでになく透明な熱を帯びている。
「管理もしない、監視もしない。……だが、その代わり、お前の心に俺以外の男が入る隙間など、一生作らせない。……物理的な鎖ではなく、俺という存在そのもので、お前を縛り上げてやる」
「……それって、結局ドSな独占欲じゃないですか」
「当たり前だ。……俺が、お前を甘やかすだけの男に見えるか?」
「それは…んんっ、!」
先生はそう言って、私の唇を奪った。
それは海鳴りの音に溶けていくような、深くて、永い口づけ。
首筋に刻まれた痕も、薬指に光る指輪も
もはや強制的な記号ではない。
私たちが自らの意志で選び取った、愛の証。
「……一生、俺の隣で、俺を調律し続けろ。いいな?」
「…ふふ、望むところです」
水平線の向こう、夜が明ける準備を始めた空の下で
私たちはもう一度、唇を重ねた。
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