テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
放課後の校門前。夕陽が背中を温かく照らしているのに、私の胸の内は冷たい。
「出水ー!ちょっこれお願いしていい?」
隣にいる出水先輩に、先輩のクラスの女子が声をかける。
「いいよ、任せろ」
彼はいつもどおり、誰にでも笑顔で応じていた。
その姿を見て、胸がぎゅっと締めつけられる。
『流石優男〜』
つい、茶化すように言ってしまった。
でもその言葉には、ほんの少しだけ嫉妬が混ざっていた。
出水先輩は一瞬驚いた顔をしたけど、すぐににやりと笑う。
「そうか?ナマエだって、みんなに優しいじゃん」
『先輩とは、違うよ』
そう言いながら、私は少し早歩きでその場を離れようとした。
「ちょっと待って、ナマエ」
突然、出水先輩の手が私の手首を掴んだ。
『や、やだ……離してよ』
慌てて手を振りほどこうとするけど、彼の手はしっかりと私の腕を包んでいた。
「なんだよ、また逃げるの?」
『うるさ、!別に逃げてない!』
言い返しながらも、心はどこかで揺れていた。
私は深く息をついて、そっと手を振りほどき、そのまま一人で歩き出す。
背中に、出水先輩の視線を感じる。
(……ずるいよ、先輩は)
そのまま、言葉にできない思いを胸に抱えて歩き続けた。