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ー俺は、剣士署を出る。
振り返る。
誰もいない。
寂しくなる。
あの時のことを思い出してしまう。
シンちゃん…
俺は、あの人のおかげでここにいて、変われたんだ。
でも、今はいない。
俺が、守れなかったから。
銅のように、助けようとすらできなかった。
今日も、アイツらを捕まえられなかった。
その結果、誰かが犠牲になった。
俺は、まだ弱かったんだ。
昔の銅に比べれば、まだまだ弱いもんな。
最近の銅は強くなってきている気がする。
いつか、近いうちに、
あの頃のように強くなるだろう。
『ヘヘッ、負けねぇからな、アマちゃん。』
アマちゃんは、仲間であり、最大のライバルだ。ー
『甘太郎、例の結果が来たよ。』
花咲さんが話しかけてくる。
注射器の検査の結果だろう。
『少し厄介だなぁ。甘太郎にも関係があるかもしれない。』
僕にも、関係が?
僕の、嫌な予想が当たったのだろうか。
『ULF-60 の改良型、人狼の力を消す薬と同じものが検出されたそうよ。』
『え…』
なんだよそれ、
そんなものがあるのか…
『この薬品はまだほとんど出回っていないし、かなり高価なものなんだけど、甘太郎も気をつけておいた方がいい。』
『・・・』
あの時、あの男が持っていた注射器には何が入っていたんだろう。
だけど、
もうすでに、ってことも…
その予想が当たっていたら、
『ほぼ間違いないだろうけど、茜に打たれているかは、血液検査をしないとわからない。』
僕は、茜さんを見る。
『血液を取るのは、注射器みたいなものなんだけど、どうする?検査する?』
花咲さんが僕の耳元で、小声で言った。
『やめといた方が、良いと思います。』
僕も、小声で言う。
『茜はもう、人狼の力がないと思ってた方が良いだろうね。最悪、普通の人間以上の力を奪われているかもしれない。特に改良型は強すぎるから、そういうこともあるんだよ。』
茜さんは全体的に、少し弱く感じる。
今も、僕の腕を掴む力が弱い。
それは、もしかして…
『ま、今日はこんくらいで、またね〜』
花咲さんが手を振って、背を向ける。
僕も、軽く手をあげておく。
『・・・』
ULF-60。
そんなものがあるなんて知らなかった。
もしそれが、もっとたくさんあって、簡単に手に入れられて、有名になったら…
嫌な目で見られたりしなくなるだろうか…
でも、そんなの…
嫌だ。
僕が、人狼は悪い人ばかりではないことを証明するんだ。