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Dream of memorY.4
ー『なんで、生きてるの、』
俺のことを否定される。
そんなの、しらねぇよ。
好きで生きているわけじゃない。
好きでこんなふうに生まれたわけじゃない。
『なら、タヒねば?』
いっそ、その方がいいんだろうな。
コイツらも、皆も、それを望んでいる。
俺は、それでもいいか。
だけど、
心のどこかで、
怖がっている。
幸せになりたいと思っている。
-今を頑張れば、いつか幸せになれるはずだ。だから、こんなことしか言えないけど、信じて、生きるんだ。-
本当に、そんな日が来るのだろうか。
僕の、本当の父の言葉。
僕は、それを信じるしかなかった。
-誰かが辛い思いをしているなら、助けるんだ。そして、その子が正しいなら守って、その子が間違えたなら正してあられる人になって欲しい。-
そんなの、難しいよ。
そんなこと、簡単にはできないよ。
-君には、特別な力がある。だから、君ならできるはずだ。-
『・・・』
『いてぇっ!』
一人、男の子が転けた。
コイツは、
いじめてきたヤツの一人だ。
笑ってやろう。
俺は、歩く。
ソイツのところまで行って、
『何やってんだよ。』
俺は、
ソイツに、
手を差し出した。
『は?』
ソイツは、俺を睨んだ。
そして、
『ふざけんな!』
俺の手を叩く
行ってしまった。
やっぱり、意味なんてない。
助けても、変わらない。
もう、嫌になる。
俺は、教室に行く。
『○○が怪我をしたのはお前のせいだろ。』
入れば、すぐこれだ。
先生に決めつけられた。
『うわ、最低。』
『帰れよ!』
『お前が怪我すればよかったのにな。』
皆がから、罵声を浴びせられる。
もう、お前らから傷つけれてんだよ。
クソどもが。
『ちげぇよ、俺が転けただけだ。』
今、なんで言った?
アイツ、何を…
『お前がやったんだろ?もしかして、言えないように脅したのか?』
先生が俺を見る。
冷たい目だ。
『アイツはかんけぇねえよ!』
でもアイツは、否定した。
何してんだよコイツ。
頭でも打ったのか?
俺を庇っているように聞こえる。
『そうか、保健室に行かなくていいのか?』
『いい、』
アイツは、席に座る。
それから、アイツは…
暴言は言ってくるけど、
暴力を振るわなくなった。
『・・・』
父が言ったことが、初めてわかった気がする。
けど、
他のヤツらはまだ、暴力を振るってくる。
まだ、終わったわけじゃない。
あの子も、
水をかけられていた。
水をかけたヤツらは笑っている。
何も、変わっていないように見える。
それだけ、いじめるヤツが多いから。
どいつもこいつも皆、敵だから。
『お前ら、教室から出ていけ。』
先生も敵だ。
あの子と、廊下に出た。
どうするか、
『狼夢さん、遊びたい…』
『は?』
遊んでる場合か?
『いつも、一人、遊んでる。悲しい。』
マジかよ…
でも、何もすることがない。
こんなところで、立っていたくはない。
どこかに行こう。
俺は適当に、歩く。
あの子が、ついてきた。
『遊ぶの?』
『ちげぇよ。』
遊ぶことしか考えてないのか?
はぁ、
『何がしたいんだ?』
『?』
何度か訊いたけど、この子は不思議そうな顔をするだけだった。
『狼夢さんの近くにいたい…』
『はぁ?』
何を言ってんだよ。
『お前なんかと一緒にいたくない。』
俺は、この子に冷たくする。
そうすれば、離れていくと思ったから。
でも、
『いい子、する。』
この子は離れようとしない。
もう、気にせず歩く。
ついてくる。
『どこいくの?』
俺は、外に出る。
人がこなさそうなところに行こう。
俺は、校舎裏に行く。
ここなら、ゆっくりできるだろう。
この子がいなければな。
『ともだち?なって欲しい。』
『それ、何回も聞いた。』
その度に断った。
『友達、なったらこれ、あげる。』
そして、あの子が何かを取り出した。
青透明の丸い球体。
『これ何。』
『わかんないの。落ちてた。』
『そんなのいらない。』
そう言ったら、あの子が悲しそうにした。
ちょっと綺麗だけど、
『友達、いない。欲しいよ…寂しいよ…』
また、泣きそうだった。
『・・・』
下を向いて、落ち込んでいる。
『そんなものはいらない。でも、しょうがないから友達になってやってもいいぞ。』
仕方ない。
この子が、演技をしているようには見えない。
悪い人ではないかもしれない。
どうかを試してみるのもいいかもしれないし、
『ほんと?』
『俺も、友達はいない。だから、なるなら初めての友達だ。』
『初めての友達、嬉しい。狼夢さん、好き。』
この子が、笑顔になった。
前以上の笑顔。
本当に嬉しいんだ。
『・・・』
この子が悪い人だと、思えない。
本当に、俺と同じ…なのか?
『遊ぼう?』
その子が、近くに生えていた白い花を取る。
そして、
俺の頭に乗せた。
『えへへ、かわいい。』
『勝手なことするなよ。花が可哀想だろ。』
俺は、花を落とす。
『あ、お花さん、ごめんなさい…』
その子は、花に謝った。
『やっぱり優しいんだね。』
『なっ!』
またやってしまった…
『は、花ごとき、どうでもいい!汚れるからやめろ。』
『ごめんね?嫌だった?』
本当に、嫌だった。
だけど、
『大したことない。気にするな。』
そう答えた。
その子が、優しそうな目を向けてきた。
それからしばらく、
ただ、空を見上げていた。
あの子は、そんな俺を見ていた。
『雲さんふわふわ!』
『はぁ、』
あの子は、楽しそうだ。
もうそろそろ、給食の時間か。
でも、あの場所に行きたくはない。
今日は、ここにいよう。
何も、食べられないのか。
まぁ、別にいい。
あまりお腹空いてないしな。
『お腹すいた。何か食べたい…』
だけど、
この子はお腹空いているみたい。
『なら、行ってこいよ。』
『狼夢さんは行かないの?』
『行かない。』
行っても、食べられるとも限らないしな。
『なら、私も行かない。』
『大丈夫なのか?』
さっきお腹すいたと言ってたのに…
『一人、怖い。』
・・・
ぐぅ〜
その子のお腹が鳴る。
『大丈夫だから…』
でも、あまり大丈夫そうではなかった。
『ちゃんと、家で食べさせてもらえてるのか?』
それが気になる。
『食べてない。』
『あ、ぁ、』
食べさせてくれないのかもしれない。
どうしよう。
あ、
あの時の…
行ってみよう。
俺は立ち上がる。
『どこいくの?まってぇ。』
俺は、学校から出る。
『お家帰るの?もっと、一緒にいたいよ…』
俺は、目的の場所に行く。
と、
『お、来たのか。弁当いるか?』
弁当屋。
ここなら、もしかしたらと思って来た。
『一つあればいい…お願いします…』
俺は、頭を下げる。
『いいぞ、ほら。』
そこに、二つの弁当があった。
『え、』
『後ろの子もだろ?持ってけ。』
二つの弁当を差し出してくる。
『ありがとうございます。』
俺はもう一度頭を下げる。
そして、
近くにあった公園のベンチで、
『ほら、食え。』
弁当を二つ渡す。
『一つもらっていい?』
『二つでもいいぞ。』
『一つで大丈夫だよ。』
そして、食べる。
この時間なら、誰もいない。
公園に行ったのは、いつが最後だろう。
少し、昔のことを思い出す。
『美味しい…』
その子は、涙を流して食べていた。
そうだな、
美味しい。
そして、食べ終わり、
そこら辺を、歩いていた。
『学校、戻らないの?』
『戻っても、いいことない。こうしてた方がいい。』
こうしてた方が、間違いなくいい。
そうだ。
もう、学校に行かなければいいんだ。
『パパとママに怒られちゃう…』
『・・・』
そういうわけにはいかないか。
『なら、戻るか。』
今から行けば、5時間目には間に合うはず。
俺たちは、学校に行く。
酷い目に遭った。
でも、なぜか、
今までほど、辛くない気がした。
下校。
その時に、
『大丈夫?痛くない?』
指、
鉛筆で刺されたところが痛む。
『大したことない。』
でも、
あの子は、
俺の手を、両手で持って、
『はむ。』
『な‼︎』
口に咥えた。
ぺろぺろ。
『やめろ!』
あの子に、傷口を舐められた。
『傷には、唾液がいいってパパが言ってたの。…嫌だった?ごめんなさい…汚かったね…』
あの子が落ち込んだ。
傷が唾液で治る?
そんなのは知らない。
『ごめん、急にされたからびっくりしただけ。』
『ほんと?』
あの子は心配そうに、こちらを見ていた。
『ああ、大丈夫だ。』
周りに人がいなくてよかったとは思ったけど。
『心配してくれて、ありがと。』
『血の味、する。』
『ごめん、俺の手の方が汚かったな。』
血が、まだ出てたのか。
『ううん、大丈夫だよ。』
そうか。
大丈夫か。
そうして、あの子と別れて、
家に着く。
と、
『狼夢!』
母が、怒っていた。
俺は、黙っていた。
言いたいことはたくさんあった。
だって、何もかもが違うから。
だけど、言えない。
余計に怒らせるだけだから。
無駄だから。
そして、
父が帰ると。
『出ていけ。』
父が、冷たく言った。
『そうね、30分くらい反省しなさい。』
母が、俺を引っ張って、
外に出される。
家の、ドアの鍵が閉まる音がした。
もう外は、日が沈み始めていた。
俺は、適当に歩く。
反省も何もする必要はない。
そして30分ほどして、
家の中に入らせてくれる。
いつか、幸せになれるんだろうか。
それから、あの子といることが増えた。
『明日も、遊ぼ?』
あの子に誘われる。
明日は、学校は休み。
『9時くらいからずっと遊べるよ?』
『まぁ、俺も大丈夫だけど…』
『あの、おべんと食べた公園に来てくれる?』
『あ、あぁ、うん。まぁ、大丈夫…』
親が、許してくれるだろうか。
まぁ、俺のことはあまり気にしていないだろうけど。
でも、
ーごみと、仲良くしてるんだってね。あんなのといるからいじめるんでしょ。あんなのと、もう関わらないようにして。ー
母は、この子のことを悪く思っていた。
もちろん父もだろう。
『待ってるね。またね?』
あの子は、帰っていった。
で、
家に帰って、
『明日、9時前から遊びに行ってくる。』
母に伝える。
『ごみとじゃないよね?』
やはり、そう聞いてきた。
あの子は、悪い子じゃない。
そう言いたかった。
でも、そしたら止められる。
『違うよ。』
だから、そう言った。
『そう。』
母もそれだけ言って、夜ご飯を作る。
そして、次の日。
8時半。
『もうそろそろ言ってくる。』
母は、何も言わなかった。
そして、あの公園に行く。
と、
もうすでにいた。
まだ、20分くらい前だろうに。
『あ、狼夢さん!』
『もう来てたのか。』
あの子の私服も、薄汚れていた。
『うん、楽しみだったから。』
あの子と友達になってから、あの子は笑顔を見せるようになった。
『遊ぼ?』
あの子と、遊んだ。
『クマさんだよー』
『あ、犬さんだよぉ…』
何をさせられているんだろう。
この子が持っていた、小さなぬいぐるみ。
それで、遊んでいた…
『にゃんにゃん、ねこさんも混ぜてー』
この子は、嬉しそうだ。
でも、
面白くない。
『これ、遊びなのか?あとこれ、俺に似合わないだろうし…』
『他のことする?』
とは言っても、他にすることなんてない。
『・・・』
何をしよう。
『何も、思いつかない…』
残念ながら、何も思いつかなかった。
でも、子供の声が聞こえる。
『誰かくるかもしれないし、他のとこに行こう。』
俺は、立ち上がる。
やはり、子供たちがいる。
あの子も、ついてきた。
あてもなく、
ただ歩く。
『どこにいくの?』
『どこだろう…』
もはや、知らない道を歩いていた。
ここは、田んぼか?
住宅地を抜けて、緑と茶色の四角いものがたくさんある場所に来た。
ここは、人がほとんどいない。
『わあ!きれい!』
あの子は、景色を見て言った。
そうかな。
まぁ、見慣れた家ばかり見るよりマシだけど…
と、
あれは、
本当の親と見た…
名前はなんだっけ。
そこに向けて歩く。
あの子も、歩く。
そして着いたのは。
『わぁ!もっときれい!』
薄いピンク色の花をつけた木。
花びらが、落ちていく。
そこら地面も、花びらでピンク色になっている。
綺麗だ。
すごいな。
周りの木は、緑色なのに、
この木だけはピンク色だ。
ふと、あの子を見る。
目を輝かせて、ピンク色の木を見ていた。
あ、
『髪に、花びらついてんぞ。』
『え?』
取ってやる。
『ほら。』
一枚の花びら。
手から離すと、風に乗ってどこかに飛ばされる。
俺はしばらく、目で追いかけた。
そして、
また歩く。
大したものはないけど、
見慣れないものを見るのは楽しい。
あの子も、楽しそうだし。
しばらくはこうしていよう。
そして、
川に着く。
『水?流れてるの?』
『これは、川だよ。知らないのか?』
『かわ?初めて見た。』
そうなのか。
とは言っても、俺もあまり見たことはなかった。
川に近づいてみる。
水の流れる音が心地よい。
『冷たい、』
あの子は、川の水を触っていた。
俺も触ってみる。
確かに冷たい。
『狼夢さん、体洗ってもいい?』
『え?ここでか?』
何を言ってんだ?
『うん、』
まあ、いいか。
『俺は向こうにいるから、好きにしてていいぞ。』
俺は、もう少し上の方にいく。
お、
魚が泳いでいる。
俺も少し入ってみるか。
俺は靴と靴下を脱いで、川に入る。
冷たっ!
そして魚は、遠くに逃げた。
さすがに、あっちまでは…
深すぎる。
戻るか…
と、
『わ、わあ!』
え?
あの子の方を見ると、
転けそうになっていた。
あぶねぇな。
だが、
『ちょっ!』
ふらふらしている。
そして、
『きゃあ!』
あの子が、バランスを崩した。
!
走る。
なんとか、受け止めた。
『狼夢さん、ありがとうございます。』
『ったく、気をつけないと流されるぞ。』
『ごめんなさい…』
『え、』
だけど、気になったのは…
身体中、傷だらけだった。
中には、かなり痛そうな傷もある。
『もう、戻るぞ。』
『でも、まだ洗えてないよ。』
『服を着ろ。もう行く。』
俺は、見てはいけないものを見た気がする。
あんな傷、俺にはない。
俺が、守っていたはずなのに、
なんで…
『もう着たよ。』
『他のとこに行くぞ。』
『狼夢さん、怖いよ?どうしたの…』
『置いてくぞ、早くこい。』
俺は歩き出す。
あの子は、後を追いかけてきた。
『ごめんなさい。何かしちゃったかな、』
違う。
何もしていない。
『その傷、誰につけられたの。』
『この傷は…ほとんどがパパとママだよ。』
やっぱりだ。
親から、やられたんだ。
『私は、大丈夫だよ。』
『・・・』
俺に、止められるとは思えない。
だからと言って、他に何かできるわけじゃない。
どうすればいいのかわからない。
『気にしてくれてありがとう。』
『・・・』
『あの、狼夢君って言ってもいい?』
『あぁ…』
俺にできること。
それは、
家以外で、この子に傷をつけないようにすること。
まだ、俺はマシだから。
だから、俺が守るんだ。
俺たちは、その後も色々行った。
なるべく長い間、一緒にいた。
家にいる時間が少なくて済むように。ー
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