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無能@活動休止中
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#呪術廻戦
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♡11ありがとうございます
第陸話Start
朝。
いつもより少し早く家を出た。
今日は社会科見学の日。
目的地は――ヨコハマ。
『行ってきます』
「気を付けてね、夜凪」
玄関まで見送りに来たお母さんに手を振る。
『うん。行ってきます』
扉を閉める。
朝の空気は少し冷たかった。
学校へ向かう道を歩きながら、
私は何度目か分からないくらい今日の予定表を確認する。
午前は歴史資料館。
その後、港周辺を見学。
昼食を挟んで、班ごとの自由行動。
そして夕方に集合。
学校からそれほど離れた場所ではない。
それでも、今日は少しだけ特別な日だった。
なぜなら。
――ヨコハマへ行くから。
「夜凪!」
学校に着くと、日葵が大きく手を振っていた。
『おはよう』
「おはよう!ちゃんと寝た?」
『寝たよ』
「本当に?」
『本当』
「ならよし!」
その後ろから、班員の黒美さんと博井くんもやってくる。
「おはよう」
『おはようございます』
「おはよう。今日はよろしく」
『こちらこそ』
四人が揃ったところで、先生が点呼を始めた。
「一班――」
順番に名前が呼ばれていく。
「はい!」
「二班――」
そして、私たちの番。
「三班」
『はい』
「四班」
「はい!」
全員の名前が確認される。
「よし。全員いるな」
先生が時計を見る。
「それじゃあ、出発するぞ!」
「はーい!」
生徒たちの声が重なった。
電車の中。
朝早いこともあって、車内はそこまで混んでいなかった。
私たちは班ごとにまとまり、座席に座る。
「楽しみだなあ!」
日葵が窓の外を眺めながら言う。
「中華街行きたい!」
「社会科見学だから、遊びに行くわけじゃないだろ」
歴史博士が呆れたように言った。
「でも自由時間あるじゃん」
「それはそうだが……」
「夜凪は?」
突然、私に話が振られる。
『私?』
「うん。ヨコハマで行きたいところある?」
『……』
少し考える。
行きたい場所。
そう聞かれても、すぐには思いつかなかった。
『特に決めてないかな』
「えー! せっかくヨコハマなのに!」
『だって、何があるかもよく知らないし』
「前に住んでたんじゃなかった?」
『そうらしいけど……』
私は窓の外を見る。
『覚えてないんだ』
日葵が少しだけ黙った。
「……そっか」
『うん』
それ以上、誰も聞かなかった。
窓の外を流れていく景色。
見慣れた街並み。
何度も通った道。
そのはずなのに。
今日は少し違って見える。
電車が進むにつれて、胸の奥がざわざわしてきた。
知らない場所へ向かっているはずなのに。
どこかへ帰っているような。
そんな、不思議な感覚。
しばらくして。
「次、ヨコハマだぞ!」
誰かの声が上がった。
車内が少しだけ騒がしくなる。
私は顔を上げた。
窓の外に広がる街並み。
見覚えのない景色。
なのに――
『……』
胸が大きく鳴った。
何かを知っている。
そう思った。
けれど、それが何なのかは分からない。
駅に電車が入る。
扉が開く。
「着いた!」
生徒たちが次々と降りていく。
私も立ち上がった。
ホームへ足を踏み出した瞬間。
――ぞくり。
背筋を何かが走った。
『……?』
思わず振り返る。
誰かに見られている。
そんな気がした。
けれど、人混みの中にそれらしい人物はいない。
「凪?」
『……何でもない』
友達に呼ばれ、前を向く。
「早く行こう」
『うん』
四人で歩き始める。
駅を出る。
目の前に広がる街。
港へ向かう道。
古い建物。
行き交う人々。
そして、遠くに見える海。
『……』
足が止まった。
海。
昨日まで写真でしか見ていなかった景色。
なのに。
どうして――
こんなにも懐かしい。
波の音。
潮の匂い。
風。
胸の奥が締め付けられる。
「凪?」
日葵の声。
私は我に返った。
『……ごめん』
「どうしたの?」
『ううん』
海から目を逸らす。
『ただ……』
言葉が続かなかった。
何かを思い出しそうなのに。
指の間から砂がこぼれるように、何も掴めない。
『……ここ、知ってる気がする』
「え?」
『なんでもない』
私は笑った。
『行こう』
班員たちの後を追う。
その背中を見ながら、私はもう一度だけ海を振り返った。
遠くで波が揺れている。
その景色の中に。
私が忘れてしまった何かが、確かに眠っているような気がした。
――そして。
この日。
私の知らない過去が眠る街で。
物語は、静かに動き始めた。
昨日の分の伍話と今日の分の陸話更新しました。
コメント
1件
あおいです🌷 第陸話、読ませていただきました。 「知らないはずの場所なのに、どこかへ帰ってくるような感覚」——この一文、とても好きです。夜凪さんの胸のざわつきや、海を前にしたときの懐かしさが、静かに、でも確かに伝わってきました。 何かを思い出しかけてはこぼれ落ちる、そのもどかしさが切なくて。 これから、忘れた過去がどう動き出すのか……続きがすごく気になります。素敵なエピソードをありがとうございました🕊️