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『忘れてまった君へ』

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『忘れてまった君へ』

24 - 第24話  『校舎裏の階段──ゾムとシャオロン』

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2025年06月12日

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昼休み。生徒たちのざわめきが遠くに聞こえる。


ゾムはいつもより静かで、缶コーヒーを手のひらで転がしながら言うた。


「シャオロン……この前ロボロと遊園地行ってん」


シャオロンはペットボトルのキャップを締めて、こっちを見た。


「お、行ったんや。どやった?」


「楽しかったよ、ちゃんと。でも……正直、つらかった」


「……やっぱり?」


ゾムは少しだけ笑った。


「なんかさ、全部“初めてみたい”な反応でな。ティーカップも観覧車も、懐かしさはある言うてたけど……“思い出した”わけじゃないねん」


「……そっか」


「俺だけやねん。知ってんの。あの頃、どんな順番で乗ったとか、何食べたとか、どの道迷ったとか」


缶コーヒーがぬるくなってるのに気づいて、ゾムはそれを一口だけ飲んだ。


「でな、観覧車の中で、ロボロが言うたんや。“なんか悔しい”って。“あんたは知ってるのに、俺は覚えてへん”って」


シャオロンの目が少し揺れた。


「……それ、ロボロの口から出たんや?」


「うん。あいつな、ほんまは気づいてんねん。自分の中に“何か”あるって。でもそれが何かわからんことが、たぶん一番怖いんやと思う」


「……そっか……」


「なんか俺、泣いてもうた。観覧車の中で」


「ゾム……」


「俺、ずっと思ってた。ロボロが記憶思い出してくれたら、全部元に戻るって。けどたぶん、戻らへん。俺が知ってるロボロは、もうおらんのかもしれん」


シャオロンは黙って聞いてた。

その表情に、何か言いたそうな迷いが見えたけど、言葉にはしなかった。


ゾムはそれにも気づいてた。でも、今は聞かなかった。


「でもな……それでも、今のロボロが俺の前で笑ってくれるんやったら、それでええって、ちょっと思えた」


「……強いな、ゾム」


「ちゃうよ。ずっとしんどい。でも、シャオロンが聞いてくれるから、なんとかなる」


少しの沈黙のあと、シャオロンがふっと笑った。


「俺はいつでも味方やで。……まぁ、たまには俺にも頼れよ?」


「……おう、ありがとな」


ほんの一瞬、雲の切れ間から光が差して、ふたりの影が階段に並んだ。


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