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『忘れてまった君へ』

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『忘れてまった君へ』

25 - 第25話  『放課後の校舎の廊下』ゾムロボ

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2025年06月13日

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放課後、夕焼けに染まる誰もいない校舎の廊下。


ゾムとシャオロンがどこかで話していたのは知ってたけど、今はもう姿が見えへん。


ロボロはゆっくり階段を下りながら、胸の奥でくすぶる感覚に向き合ってた。


――夢の中。あの観覧車の景色。

目の前で笑ってた男の子の顔。それが、昨日一緒に遊園地へ行ったゾムと重なった。


ずっと、ただの「懐かしい気がする」で済ませてたけど――ちゃう。


「……思い出したんや」


校門を出ると、少し先のフェンスのとこでゾムがぼーっと空見てた。


ロボロは歩いて、そっと横に立った。


「なあ、ゾム」


「ん?」


「昨日の遊園地のことなんやけどな……」


ゾムはこっちを見た。目の奥に一瞬、不安がよぎったのがわかった。


「……あそこな、俺、ちっちゃい頃にも行っとった。ほんで、観覧車も、ティーカップも、ポップコーンの匂いも……全部、夢の中と同じやった」


ゾムは何も言わへん。ただ、じっと耳を傾けてた。


「夢で見てたんは、あんたやったんやな。俺の隣におったん、ゾムやった。あの顔……笑い方……ゾムやったんや」


声が震えそうになるのを、ロボロは噛みしめながら続けた。


「ごめんな。忘れてたん、ほんまに……ごめんな……」


ゾムの目が、少し潤んで見えた。


「……おいおい、急に謝られたら泣いてまうやろ」


「泣いてもええんやで?」


「いや、ロボロが先に泣けや」


「いやや、俺は泣かへん」


そんなアホみたいな会話をして、ふたりは並んで笑った。


けど、その笑いの奥には、ちゃんと想いがあった。

心の奥にずっと置いてきぼりになってた“思い出”が、ようやく歩き出した気がした。


――それでも、全部はまだ戻ってへん。


でも、きっとこの先また思い出せる。ゾムと一緒なら、きっと。


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