その時、ベッドの上の朋也さんが少し動いた気がした。
『朋也さん!』
一弥先輩がすぐに先生を呼んできてくれた。
先生、朋也さんに何か話してる?
目が覚めたの?
ねえ、朋也さん。
先生がしばらくして出てきた。
そして、私達に言ってくれた…
『良かったですね。意識が戻りました。もう、大丈夫でしょう』
『ありがとうございます!』
私と一弥先輩が声を揃えた。
そして、私はイスにドスンと腰を落とし、顔をふせて…泣いた。
一弥先輩が、そんな私の背中をさすってくれた。
『良かった…本当に良かった』
『ああ、良かったね…』
ずっと心臓が張り裂けそうだったから、心から安心した。
看護師さんが来て、個室に移しますがまだしばらくは無理させないようにして下さいと言われた。
ドキドキして待っていると個室に呼ばれて、私達は中に入った。
やっと…朋也さんに会える…
『朋也さん…』
『恭香…』
『…大丈夫?本当に…良かった』
私は、近づいて顔を見た。
朋也さんは、ゆっくりうなづいた。
涙で汚い顔の私だけど、死ぬ思いをしたはずの朋也さんは…本当に綺麗な顔をしてた。
『恭香…ありがとう。ずっといてくれた?』
『うん。ずっといたよ。一弥先輩も』
『一弥君…来てくれたんだ。悪かった』
一弥先輩も、朋也さんの側に来た。
『いいよ、そんなの。恭香ちゃんから連絡もらってびっくりしたよ。社長にも連絡ついたから。つい、今、無事だって連絡したら、とても喜んでおられたよ』
『父さんは海外だからな…2人がいてくれて良かった…ありがとう』
『もうすぐ警察も来るみたいだけど…いったい何があったの?』
一弥先輩が聞いた。
ドキドキする質問だ、怖い。
『…知らないやつだった。いきなり刺されて…体が急に熱くなって、倒れて…誰かが救急車を呼んでくれたみたいだった。俺は…気づいたら恭香に電話してた』
『そんな大変な時に何で電話なんて…』
朋也さん…少し黙った。
『…声が聞きたかった。最後かも知れないって…思ったから…』
『そんな…』
『声が聞けたから、安心して…そのまま気を失ったんだな』
朋也さんが微笑む。
『何だか…僕は邪魔みたいだね』
一弥先輩が笑いながら言った。
『…一弥君、いろいろありがとう。本当に感謝してる』
『だから、いいってそんなこと。恭香ちゃん、すごく心配してたから。ちゃんと…優しくしてやって』
一弥先輩は、そう言って部屋を出て行った。
一弥先輩、ごめんなさい…
私は朋也さんの横に座りながら、朋也さんの手を握った。
しばらくずっと握ってた…
その手が温かくて、心から朋也さんが生きてるって感じることが出来た。
しばらくして、警察が来た。
朋也さんに話を聞いている。
防犯カメラの解析も終わり、衝撃的なことがわかった。
朋也さんを襲った犯人、それは…
菜々子先輩のお兄さん…だった。
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