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とてもショックだった。
菜々子先輩のお兄さんがなぜ朋也さんを襲ったのか?
警察によると、防犯カメラに映し出された怪しい人物からすぐに犯人が特定され、逮捕したとのこと。
犯人は、隠す様子もなく簡単に自供したらしい。
菜々子先輩が朋也さんにフラれたことを話し、怒りに任せて言った「私をフルなんて許せない!」との言葉を聞いて、実のお兄さんが犯行に及んだと……
お兄さんにはいくつか前科もあったらしい。
菜々子先輩に、お兄さんがいたことは誰も知らなかった。
カメラの男と前科者のデータベースの顔が一致して、スピード逮捕に至ったようだ。
菜々子先輩も、今、警察で取り調べを受けてるそうだ。
朋也さんは、菜々子先輩に告白された。
なのに、あんな綺麗な人をフッたんだ……
2人はとてもお似合いだと思っていたけれど、朋也さんは私のことを選んでくれた。
それがとても嬉しい。
私のことを本当に想ってくれているのだと、改めてわかったから。
だけれど、こんな事件になった原因は……私だった。
そのことを思うと、とても申し訳なくて、どんなふうに謝ればいいのかわからなかった。
警察も帰り、私は朋也さんに少し休むように言った。
朋也さんは、気丈に振る舞っていたけれど、まだまだ体力が無い状態でかなり無理をさせてしまったと思う。
私は一旦部屋を出た。
一弥先輩は、帰らずに私を待ってくれていた。
「恭香ちゃん、大丈夫?」
「あっ、すみません。もう帰られたのかと思ってました」
「……君のことが心配で……顔を見てから帰ろうと思ったんだ。ごめんね」
「そんなとんでもないです。本当にいろいろありがとうございました。一弥先輩がいなかったら、私はきっとオロオロしてるだけで、何もできなかったと思います。いえ……間違いなく、私は冷静ではいられませんでした」
「……そう思ってくれたなら良かったよ。少しでも恭香ちゃんの役に立てて。本宮君、良かったね、本当に無事で。お医者さんが言ってた通り、彼の生命力は抜群だったね。さすがだよ……」
「一弥先輩……」
「本宮君は、きっと君に会いたくて、一生懸命がんばったんだね。大変な中、君への一途な思いだけで彼は戻ってきたんだ……。僕にはかなわないよ」
「一弥先輩……。本当にごめんなさい」
「いいよ、いいよ、大丈夫。何も言わなくていいよ。僕は恭香ちゃんにフラれたんだから、ちゃんと受け止めるよ。仕事頑張りながら、恭香ちゃんへの想いを断ち切れるようにしないとね」
私は、深く深く頭を下げた。
「だけど……やっぱり、しばらくは無理かな。大好きな恭香ちゃんへの想いは、そう簡単には消せないだろうし」
「一弥先輩……」
「恭香ちゃんの顔も見れたし、じゃあ、先に帰るよ。会社の事は心配するなんて、本宮君に伝えて」
「はい。わかりました。……伝えます」
一弥先輩は、手を挙げて行ってしまった。
私は、先輩を見送ってから朋也さんの部屋に戻った。
「朋也さん、大丈夫? 眠れなかった?」
「……そうだな」
「傷は大丈夫なの? 痛む?」
「大丈夫だよ、痛み止め効いてる。心配しなくていいから」
「うん。あのね、一弥先輩、仕事に戻るから朋也さんによろしくって。会社のことは心配するなって言ってくれてたよ」
「そっか……。一弥君がいれば会社は安心だな。『文映堂』にとって、彼はとても大切な人材だから。社長も彼の才能を褒めていた。……一弥君にも、恭香にも、迷惑をかけてしまったな。本当に2人には申し訳ないことをした」
朋也さんの声、やっぱり元気がない。
こっちまで苦しくなる。
「朋也さんは謝らなくていいから。何も悪いことしてないし……。謝らないといけないのは私の方。私のせいで朋也さんがこんな目に遭ってしまって……何て謝ったらいいのかわからない……本当に……ごめんなさい」
「バカだな。お前は何も悪くない。お前のせいで俺がこんなふうになったなんて、そんなこと絶対に考えるな。……俺がもっと大人の対応をしていれば、そこまで憎ませることも無かったんだ。つい言いたいことを言ってしまって、こんな大事にしたのは自分自身のせいだ」
朋也さんは、一生懸命話してくれた。
自分の胸に抱え込んだ、苦しい気持ちを隠して。
そうやって、朋也さんはいつも私を守ってくれている。
「優しいね。うん、今は……朋也さんが生きていてくれたことに、ただ感謝するね」
「ああ。そうしてほしい。もう一度、恭香に会えて、本当に嬉しい。声が聞けて、その可愛い顔を見れて、俺は今、どうしようもないくらい、幸せだ」
「朋也さん……」
朋也さんがまた微笑んだ。
こんなにも優しくて素敵な笑顔を見たら、私はもっともっと朋也さんを好きになってしまう。
本当に……
目を覚ましてくれて、生きていてくれて、ありがとう。
どうしようもないくらい幸せなのは、私の方だよ。