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「店長っ!!今日、お昼一緒に食べに行ってくれますか?仕事のことでご相談があるんです…」
翌日、私はみんなより遅い出勤をすると、事務所に入り、店長に声をかけた。
他の人がいるため、普段よりもイチオクターブ高い声と愛くるしい笑顔を振り撒く。
店長にこの態度で話しかけたのはすごく久しぶりだ。
「俺に?あ、ああ…もちろん。」
それは店長も同じ感覚だったのか、別人を見るような瞳で、私を見つめて戸惑っている。
周りは、そんな様子に気づくはずもなく、微笑ましそうに反応してくれた。
「あらぁ、藤塚さんが珍しいわね。」
「はいっ!!ちょっと…えへへ。」
「くそっ…俺も店長だったら美里亜ちゃんと…」
男性陣が、ボソボソと悔しそうに肩を震わせてるのを見逃さなかった。
すかさず、私はにっこり笑いかける。
「皆さんも、今度ご飯食べましょうね!!お誘いするかもしれないのでよろしくお願いします!!」
思ってもいない言葉を吐いたのに、たったそれだけで男性の鼻の下が伸びる。
「それではっ!!お願いしますね。今日も頑張りましょう!!」
心の中で、嘲笑いながら事務所の扉を閉めるのだった。