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注意事項〇剣の打ち合い、及びそれに伴う暴力表現。
〇戦闘描写の練習で書いたものの、心情描写の方が多いかもです。
〇友情や努力、成長をテーマに戦闘シーンを書きました。
〇他作品とは一切関係ありません。
〇作者の完全オリジナル作品です。実在する人物、団体、歴史とは何ら関係ありません。
〇剣術の模擬戦の光景を描いています。
〇今後戦闘シーンを書く時に作者が参考にする可能性があります。
以上の事をご理解の上、本作品をお楽しみ下さい。
草原に朝の爽やかな風が吹き抜ける。
空を薄紅色に染めて、徐々に朝日も昇り始めてきた。
そんな草原に、二人の青年が静かにただずんでいる。まるで、誰かを持つように。
そんな静寂の中、ザッザッと音を立てて、一人の老人がやって来た。
その老人からはただならぬ気配が漂っており、シワが増えてはいるが、かつては剣聖と呼ばれた男だ。
老人は、二人の青年に向かって、片手に持っていた木剣を投げた。
「師匠、ありがとうございます」
二人の青年は本にでも載っているような見事なまでの礼を披露した。
どうからあの老人は彼ら二人の師匠らしい。
「では、予定どうり、これより二人の模擬戦を開始する」
「準備は良いか?朱、蒼」
老人は二人の青年に問いかける。穏やかな口調だが、その眼差しは鋭かった。
朱は、燃えるような赤色の服。蒼は、海のような深い青色の服を着ている。
そんな老人の問いかけに「はい!」朱は元気よく応え、蒼は静かに頷いた。
「では、始め!」
老人の一声で彼らの模擬戦は開始を告げた。
朱はその声を合図に、勢いよく踏み切り、蒼の方へ飛び出した。彼の剣先は間違いなく、朱の喉元を狙っていた。
一方蒼は、剣を構える事すらせず、微動だにしなかった。ただ、朱の剣筋を冷静に見つめていた。
彼が見ている世界はまるでスローモーションのようで、少しづつ朱が蒼の方へ近付いて行く。
蒼が朱の間合いに入った瞬間、蒼は勢い良く屈み、朱の剣を避けようとした。
だが、朱はそれを見越してなのか、“突く”のでは無く、斜めに斬った。
そんな朱の予想外の行動に蒼は驚いたように目を見開き、咄嗟に後ろへと飛び、朱との距離を置いた。
「あの脳筋バカが……」
そう呟くと、蒼はニヤリと笑った。
永遠のライバルで親友の朱の成長。それは、蒼にとっても嬉しい事だった。
「チッ、避けられた」
朱は渾身の一撃を避けられ、わざとらしく舌打ちした。だが、その表情はどこか楽しそうだ。
きっと、こんな物で自分のライバルがやられるわけないと理解しての、一撃だったに違いない。
二人は剣を構えたまま、少しづつ、少しづつ、近付いて行きながら見つめ合う。
先に動き出したのは、蒼だ。
朱と前に模擬戦をした時よりも一層速くなった動きで朱を翻弄する。
朱は一瞬、蒼の動きに困り果て、力任せに残像であっても斬ってみようかと考えたが、ここで力任せにするのなら、きっと蒼には勝てない。と朱は判断し、蒼がよく言っていた事を思い出す。
『力任せなら、俺は簡単にお前の攻撃をかわせる』
相変わらず余裕で、腹の底が見えない笑みを浮かべながら蒼はよくそう朱に言い聞かせていた。
あれはきっと、蒼は朱と共に成長し、共に歩んでいける未来を想像して言っていたのだろう。
ある時、朱がスランプに陥り、蒼に全く勝てなくなっていた時、朱は恥を承知で蒼に尋ねた事がある。
『どうやってお前は俺の動きの先を読んでんだよ』
夕陽が蒼を赤々と照らし、空は碧色に染まるその下で、朱が聞いた。
『お前の行動全てを先読みしている訳ではない。お前の癖から予測しているだけだ。それこそ何百通りも。な』
たったそれだけを言って、蒼は稽古に戻った。
彼奴にできる事なら俺にもできるはずだ。朱はそう考えた。
そんな事を思い出している間にも蒼は朱の隙を狙って攻撃を仕掛けている。
それを朱は冷や汗をかきながら、かわしたり、防いでいる。
蒼は、動くスピードもそうだが、剣を振る速さも桁違いに速くなっていた。
朱は悶々と考えながら蒼の攻撃をかわし続ける。
それでも時々、かわすことができずに、カンッと木剣を打ち合わせて互いに後ろへと引く。その繰り返しだ。
そんな中、突然朱が叫びだした。
「あ〜もう!同時にそんな事考えられっかよ!」
蒼の癖について考えていると、攻撃を受けそうで、なのに、蒼の癖の事も考えないといけない。
普段2つ物事を同時に考えるなんて事をしない朱はそれが難しかったらしい。
「俺のいつもの力任せが効かないならっ、こうすれば良いんだろっ!」
朱はそう叫びながら蒼の足元を素早く、されど力を込めて剣で薙ぎ払った。
「は?!」
普段あまり話さない蒼もこの行動には拍子抜けし、声を上げた。
だが、蒼もその程度でやられる程やわじゃない。
朱には無い柔軟さを活かして、宙へひらりと浮かび、空で弧を描いて音も無く着地した。
「本当、“勘だけ”は良いよな。頭は悪いが」
嫌味混じりにも聞こえるような声で蒼はそう朱に話しかける。
「お前も、“頭と柔軟さだけ”は良いよな。力は俺に及ばないけどな」
そんな蒼に朱も嫌味で返した。
「一言余計だぞ、朱」
「お前もな、蒼」
お互いに距離を置き、見つめ合いながら二人は笑い合う。
「ここからは本気で行かせてもらう」
二人の声が揃った。
蒼はニヤリと笑いながら。朱は嬉々とした顔で。
目にも追えぬ速さで二人の木剣は衝突した。
ーーカンッ!
木剣が何度もぶつかり合う音が草原に響き渡る。
その光景を二人の師匠は少し離れた所から見ている。
朱と蒼。二人の木剣が同時に踏み出し、木剣を勢い良くぶつける。
二人の力が相反するように、互いの木剣が弾き飛ばされ、二人共その場にへたれ込んだ。
「やめ!」
二人が力尽きたと同時に師匠が声を上げた。
その声で朱と蒼二人は息を吐きながら草原に寝転んだ。
「二人共、成長したな」
師匠はニコニコと笑いながら朱と蒼に話しかけた。
「ほら、そろそろ食事の時間だ。家に帰るぞ」
笑いながら師匠は二人に一切手を貸さずに家へ向かって行った。