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マリリンが次の話に進めようとしていたその一瞬
私はさっきのマリリンの質問をすばやく脳内で考えていた。
昔も今も私はマリリンを愛しているし好意も持っていると
思う。それは肉親としても異性としても、である。
ただ冬也と付き合い始めた頃と、そして結婚後は違ったと思う。
私の最愛の人、夫の冬也がいたから。
マリリンの意図が読めない。
この私たちの関係において、いつも問題はマリリンのほうにあったからだ。
物心ついた時から、私を含め女性は恋愛の性愛の対象にはならないと
本人から言われてたのだから。
私が人間として、好きだよと折角告白した時も、分からないとヤツは
答えている。
おっさん、おばさんになった今頃、何故私から自分への愛を
確かめるんだぁ~?
そんな私の突っ込みをよそに、
ちょっと困惑気味の私の横でマリリンは話を進めようとしていた。
けれどいつまで待っても今までのように滑舌良く滑らかにスラスラと
言葉が出てこないようで、見ているとマリリンの顔は思案顔のままだ。
手を動かしてジェスチャーを入れることで、口から何とか言葉を紡ぎ出そうと
するのだけれど、声に乗せてマリリンの言葉が出てくることはなかった。
そんないつにないマリリンの様相を見ているうちに早くマリリンの
紡ぎ出す言葉が語る話が何なのか、興味が一層湧いてきた。
そのせいか、気がつけば私の口は勝手にマリリンに発破をかけていた。
「どうしちゃったの? マリリ~ン!
そんなに話しにくいこと? それともすごい難しい話なの?
ね、何なのよぉ~。
私をじらして楽しんでんの? もしかして。
だったら私怒るよぉ~」
「あぁ~もう。
衝撃的で、自分の一生がかかってると思うと、どう話を進めていくのが
最善なんだろうって、考え過ぎるほど考えてしまうんだよ。
すると頭の中がこんがらがって、そんでもって益々焦って……なかなか
言葉にならないんだよ。
こんなの初めてのことだから俺自身もっすごい戸惑ってる。
何から話そ……マジ 焦る」
なんかよく分かんない話をするよねぇ~。
「ね、なんとなくニュアンス的には分るような……。
だけど衝撃的っていう台詞は何のことを言ってるのかな?
もしくは何がそんなに衝撃的なのかしら?」
「おぉ、そこ聞いてくれて助かったぜィ。
自分で話しててきっと 姫苺にちゃんと伝わらんだろうなって思いつつ
話してたからな」
「まぁまぁ……落ち着けぇ~マリリン」
「上手く話せそうにないから順番に話してくわ。
俺ホストしてた時に客として来てたバーのママにスカウトされたって
言ってただろ?
その頃にさそのママに夜這い掛けられてDOTEI捨てたんだ」
へっ?
突拍子もない話を振られて、思わず私はたじろいた。
何なの? 何なの?
妙なことを言うマリリンに私は言葉を失くした。
「ちょっ……マリリン、今自分が何しゃべってるかちゃんと分かってる?
辻褄の全く合わない無茶苦茶な内容だよ?
だってあんなに小さな頃から自覚していたほどマリリンは
根っからのゲイだったじゃない?
それなのに女性と、しかも恋愛感情も無さげな女と?
ヤったって?
冗談!
こほんっ
えーっと……今日はエイブリールフールだったか!」
「 姫苺こそ落ち着けって!
今話したことは本当のことだしこれから先に話さなきゃいけないことに
対してもっすごい重要で大事なことなんだよ。
だから、冗談とか嘘を話してるわけじゃないし。
第一お|《め》ぇ~、人が真面目に恥を忍んで話してるのにエイブリールフール
のせいにすんなっ。……ったく。
まっ、いいわ、話を戻すけどさ。
それで俺は初めて自分でも知らなかった自分の限界っていうか
未知の領域を知ったんだな、女性とも性交できるって」
「うーあー、私の前でよくそういうこと話せるよねぇ~」
「何言っちゃってくれてんのよぉ……姫苺はりっぱな既婚者さまだろ?
生娘のようなこと言うなって」
「マリリン、あたしってほぼ生娘みたいなもんなんだよ?
だってさぁ、マリリンだから話すけど、私と冬也がSEXしてたのって
ほんの1年しかなくてしかも数えるほどだった。
もうあれから何年経ったかな?
処女みたいなものなのよ」
「そりゃまた、酷い男だなぁ。
SEXを楽しめる時間なんてあっという間に過ぎていくっていうのに。
もったいない」
「もったいない? ははっ、笑える。
私は無為な結婚生活を送ってたんだね。
マリリンの反応聞いてたら泣けてきた」
「俺、今人生の一大事な帰路に立ってる気分」
「いきなり、なんなのぉ?
ふふっ、先の読めない話を振られるのって嫌いじゃないけど」
「……」
「待ってるのにぃ、聞いてあげようって私めが待ってるのに何で
だんまりなのよ」
「それはな、ある意味緊張してるからだ」
「はぁ~? 何言ってんのよ。早くしゃべってみ」
「俺、高校生の時お前が男と初めて付き合って……自分の気持ちを
知って驚いた」
「初チュー頑張れって言ってたマリリンがなによ?
あーーーっ、分ったぁ~。
やだなぁ~わたしの付き合ってた相手のことを好きになったとか?
言ってくれればよかったのに。
すぐにあいつとは駄目になったし、だから言ってくれてれば
紹介したのにさ」
「チガウ……」
「聞こえない、何?」
「違うって言ったんだよ。
俺が、男が好きな俺が好きになったのはお前、オマエだったんだよ」
『ぎゃあ~言ってもうたよ』
だけどここで言っておかないと俺はこの先一生 姫苺に告白できない
ような気がした。
はは、 姫苺 の顔見たら 目が点になってる。おかしぃ~。
まさかの俺からの告白だからなぁ~。
俺は半分襲われた形でママと初体験したわけだが、
普通に子供が持てる家庭が持てると思うとすんごくうれしかった。
諦めてたから。
けどいきなり己を知ったからと言って……
今まで同性としか付き合ってこなかった俺には結婚を考えられる相手が
いなかった。
つまらんかった。