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そんな俺の目の前に、生まれてから此の方人生の大半をずっと側にいた
姫苺がいる。男としか付き合えないのになぜか姫苺だけは特別だった。
その女子が……
人のモノになってしまっていてどんなに望んでも手に入らないはずだった
女性が……
一生懸命説得すれば手に入るかもしれないところにいるんだから、
慎しっかりしろっと俺は自身を鼓舞した。
自分の人生がもんすごい豊かになるか、どよぉ~んとなるかの
瀬戸際にきてるんだからなっと。
それなのに、そんなふうに心の中では息巻いていたのに
出て来た言葉は……。
「それで 姫苺ちゃん おれとどうかな?」 カクッ ワロタ
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
変てこなプロポーズをしてきたマリリン。
渡りに船じゃね?
結婚しようぜいっ。いえーいっ~♥
小さな頃からずっと一緒に居て見てきてる慎だから
マリリンがどんなに私を切望しているのか……
私との未来を切望しているのか……
不器用な言葉足らずのプロポーズで私には十分理解できた。
「マリリン、いいよ。
私たち結婚しよっ。
家族になろっ。
出来ればそりゃあ越したことはないけどさ……もしもだよ、私たち
SEXできなくっても大丈夫だよ。
私はそれでマリリンを責めたりしないからそこんところは安心していいよ。
どうせ私なんて、ずっと処女生活のつもりだったんだし」
俺にストレスを与えないよう、安心させようと健気なことを言う姫苺が
可愛くもあり、悲しかった。
冬也の野郎、許さん……アンノ糞野郎め。
“ 急がないと(善は急げ)Strike while iron is hot. “
「なぁ、 姫苺ちゃん俺たち子供作ろう!」
今の俺は望めば子供を持てるのかもしれない。
ずっと叶わぬ夢と目を背け、耳を塞ぎ、見て見ぬ振りをしてきた。
普通の家庭を持ち、子を持つということを。
姫苺 との間の結婚話は、思ってた以上に俺の人生を明るいものに
してくれそうだ。
俺は今の自分の境遇に最大の感謝を……
心よりの感謝を……
目には見えない心の拠り所とする存在にした。
絶大の信頼を寄せていたからこそのあの幼い日の姫苺への告白。
自分のアイデンティティーを正直に伝えた ……
「僕ね、 姫苺ちゃん……男の子のことが好きなんだ」
俺の告白を聞いた後もずっとずっと今まで通りでいてくれた 姫苺 。
姫苺の気持ちに気付いて傷ついた学生時代。
……って他の男とつきあったことなんだけどな。
いつも側にいた 姫苺ちゃんがよもや他の男と付き合うようになるなんて
天地がひっくり返るほどの衝撃だった。
そして翼の片方を失くした気分になった姫苺の結婚。
異性とは行為が出来ないのだから、諦めるしかないと己を
慰めるしかなかった日々。
それなりに同性との行為に耽るも、ある日突然夜這いをかけられ
異性との行為が成功した日の衝撃。
俺の中を様々なことが一瞬に走馬灯のように蘇った。
そんな走馬灯を脳内で見ている俺に向けられた 姫苺の顔には、
驚き……そして泣き笑いの微妙な表情が紡ぎ出された。
そして 姫苺は俺にしがみ付いてきた。
俺は素敵に……驚いた。
「マリリン、すごいっ! マリリンってすごい奴だったんだ」
えっ?そっ、そんなに褒められてもぉ~ン 照れるだろっ?
だけど何で? 何で?
結婚したらまぁ普通に子供作るよな?
はっはぁ~ん! 閃いた。
そっか、姫苺は冬也と長い間レスだったと言ってたっけ。
姫苺 がいくら子供を欲しいと願っていたとしても、できるわけないよな。
「マリリン私さ、もう高齢出産になっちゃうけど3人くらい欲しいんだ。
どう思う? 欲張り過ぎかなぁ?」
「いいんじゃね、賑やかで」
「なら、善は急げだわね。
冬也と早く離婚しないと子作りが遅れちゃう~」
すごいよ 姫苺 、俺たち。
お互いにないもの、持てないはずのものを持てるかもしれないんだから。
ふたりでこの幸せな時間をいっぱい堪能したってバチは当たんないよな。
「あっ、ヤバイっ……カモ」
「どうした?」
「私、マリリンとの結婚なんて1mmも考えたことなかったから
マリリンの言葉に甘えて居候決めこんじゃったけど、私たちが
結婚するならこの今の状況はヤバイよ、非常にやっばぁ~イ」
「そうなのか?」
「私、冬也の件で社内の女性関係が白なのか黒なのか興信所を使って
調べてたんだけど、そんな中での興信所のスタッフとの遣り取りだとか
インターネットでの情報だとかで、既婚者の自由恋愛または不倫ともいう
けれど、いろいろ学んだことがあるのよ。
既婚者である私が独身の異性の部屋で一緒に暮らしてるって非常に
まずいわけよ」
「そんなの今更だろ? 最初から分かってたことじゃないの」
「私がここに来た時と今じゃ天と地ほどに事情が違ってるわ。
私がマリリンの家に転がり込んでもマリリンがゲイなら問題ないけれど……
冬也も知ってるしね。
だけど今のマリリンはどうよ、私の未来の結婚相手としての存在に
なってるじゃない。
夫の冬也からしてみれば妻を寝取った輩ってことになるのよ。
慰謝料だって請求されるかもしれないわよ。
会社に乗り込まれたらマリリン左遷か首だよ? やっばぁ~い。
こうしちゃいられない、私とにかく一度実家に戻るわ」
「そっか? 分かった。荷物まとめたら送ってくわ」
「うん、ありがと」
今まで寛ぐことのできた安全地帯❀が、危険地帯に変わったことを
私は知った。
ただそれはうれしさを伴なう困惑だった。
私は夫と同じ轍は踏まない。
ちゃんと冬也と離婚してからマリリンとは付き合うと決めている。
今回の里帰りではちゃんと両親にも離婚の決意が固いことを
知らせようと思う。
けどぉ……マリリンとのことは、いつ知らせようか!