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✧≡≡ FILE_037: 逆流 ≡≡✧
爆弾を抱えたまま、Bはその場にしゃがみ込んだ。
Aは肩で息をしながら、数歩離れたところで魂が抜けたように腰を抜かしている。
「……あつ……」
ふいに、Bが小さく呟いた。
爆弾の表面を撫でるように触れ、手を引っ込める。
「ねえ、A。これさ……段々、熱くなってる」
「え、ええっ……?」
「ほんとうだよ。さっきより、あったかい。手、赤くなってるでしょ?」
「……ッ、も、もう、触るな!それもう!」
そんなやり取りをしていると、後ろから冷たい声が降ってきた。
「──何してるの?」
振り向くと、Kが立っていた。
腕を組み、呆れたように眉をひそめている。
「K、おかえり。出戻りか?」
「違うよ。AとBの声が聞こえたから来ただけ。──それより……」
じっとKは爆弾を見下ろした。
「ああ。爆弾だ!」
Bが子犬のように爆弾を持ち上げて見せる。
「拾ったんだぁ!」
「それ、爆弾よ?」
「うん」
「放せ」
「やだ」
Kは深く息を吐いた。
「……とにかく、今は下に置いて。ほんの少しの振動で、爆発する可能性もある」
「揺すったけど」
そう言ってBはゆさゆさ振って見せた。
「バカ!もう……ッ!!」
Aが悲鳴混じりに怒鳴ると、Bは文字通りケタケタと笑って爆弾をそっと地面に置いた。
「……ほんと、見てられない」
Kはしゃがみ、爆弾を囲むケーブルを慎重に観察し始めた。
「……中に電気が溜まってる……これが起爆源ね」
「電線を抜いたら──」
「それはダメ。抜いたら爆発する可能性がある。絶対触らないで」
「だ、だよね」
Kの圧にAは息をのむ。
「──この家、見て」
Kが指差した。すぐ横の住宅の屋根。そこの電線から爆弾に繋がっている。
「ソーラーパネルがある。しかも──あの壁面、逆潮流対応型の分電盤」
「ぎゃく、ちょーりゅう?」
Aが眉をひそめた。
「簡単に言うと、家で余った電気を“外”に流せる仕組み。普通は電力会社から電気をもらって家の中に流すけど、余った電気は逆に“家から外”に電気を流す。これが“逆流”」
「それが何さ」
「つまり──そっちの方向に電気を流して……爆弾の中の電気を抜くの!」
「なるほど、そういうこと」
「……おもしろい……」
Bが爆弾をじっと見つめる。
「中の電気さえ抜けば、温度は自然と下がるはず。28.7度には到達しない。──外はこんなにも寒いしね」
「ええ。ケーブルが壁の中に入ってる……たぶん、あのブレーカーから来てるのね」
Kは爆弾のケーブルのルートを目で追った。
「この家のブレーカー、外にあるわね。電気工事用に出しっぱなしにされてる。今なら私でも開けられるかも」
「でも、勝手に触って大丈夫なの?」
「誰もいないし、非常事態。しかも、今触らないと……」
Kは爆弾を見た。
「この熱……28度は超えてる。ワイミーさんが作った金属で出来てるなら、28.7度に到達したらまずい──」
Aが唇を噛んだ。
「……やるしか、ないの?」
「うん」
「……怖いよ……!下手に触んない方がいいんじゃないか?」
「大丈夫だよ、A」
「……?」
Bが唐突に立ち上がると、Aの右手を引っ張った。
「“死なないさ”」
「…………ほんと?」
「ああ」
Aは震える手で拳を握った。
「あっ──!でも怪我はするかもしれない」
「──っ!?もうやだあああぁぁぁ!」
Kは無言ですでに家のブレーカーに向かって歩き出していた。
抵抗するAを引きづりながら、Kの背中だけが頼もしく見える。
まるで、誰かの“意思”を背負っているかのように──