テラーノベル
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「うわ〜、桜キレイだな〜! ……あっ、やべっ! 電柱にぶつかる――!」
ドシーン!
派手な音を立てて倒れる慶太。カバンから教科書やプリントがぶちまけられる。
加山 慶太
「いっててて……。おーい蓮、置いてくなよ〜!」
陣内 蓮(じんのうち れん)
「お前がよそ見して歩いてるからだろ! ほら立つ……って、おい、プリント散らばりすぎだろ!」
【少し離れた場所】
散らばったプリントの一枚が、風に乗って一人の少女の足元へひらりと舞い降りる。
透き通るような肌に、整いすぎた顔立ち。
新入生代表として入学式に向かう少女――緑 聖羅(みどり せいら)だった。
聖羅はふと立ち止まり、足元に落ちたプリントを拾い上げる。
緑 聖羅
「……?」
そこにあったのは、歪んだミミズのような文字で埋め尽くされた、到底解読不可能な入学課題の解答用紙。
緑 聖羅
(何かしら、この支離滅裂な数式と文字は……。計算のロジックが破綻している。解なし、どころではないわ)
聖羅はフッと呆れたように息を吐き、プリントの持ち主へ視線を向けた。
**【慶太たち】**
加山 慶太
「あっ! ゴメンな、お姉さん! 俺のプリント拾ってくれてありが……って、うわっ! めちゃくちゃ可愛い!!」
頭を掻きながら無邪気に笑う慶太。
その目には一切の裏表がなく、ただ純粋な驚きと感動が浮かんでいた。
緑 聖羅
「……あなたのもの?」
加山 慶太
「おう! あ、でもそれ俺のなんだけど、自分の名前の漢字がかけなくてさ! 『かやまけいた』ってどう書くんだっけ?」
陣内 蓮
「だから『加』は力と口だろって言ったろお前!!」
加山 慶太
「へへっ! 俺バカだからさ、漢字も計算もサッパリなんだ! 拾ってくれてサンキューな、綺麗なお姉さん!」
慶太は満面の笑みでプリントを受け取ると、さっさと体育館の方へ走っていく。
加山 慶太
「蓮、早く行こうぜー! 入学式遅れる!」
陣内 蓮
「待てって! 本当すみません、失礼しましたー!」
【残された通学路】
ぽつんと取り残された聖羅。
緑 聖羅
「……加山、慶太……」
全国模試1位、暗算は電卓より早く、円周率を全て暗唱できる「天才」。
彼女の周りにいる人間はみんな、彼女の頭脳を恐れるか、媚びを売るか、遠巻きに眺めるかだけだった。
誰もが「正解」を求めて聖羅を見る中で――
慶太だけが、自分のバカさを隠しもせず、完璧な自分をただの「綺麗なお姉さん」として真っ直ぐに見て、屈託なく笑った。
緑 聖羅
(自分の名前も書けないのに……なんて、迷いのない目をするの)
ドクン、と胸の奥が小さく跳ねる。
今までどんな難解な数式を解いたときよりも速い速度で、彼女の心拍数が上がっていく。
緑 聖羅
「……不思議な人。もっと、知りたい……」
冷徹なまでに完璧だった天才少女の心に、小さな「憧れ」と「好奇心」の芽が芽生えた瞬間だった。
【体育館・入学式】
新入生代表の挨拶を終え、壇上から降りてくる聖羅。
新入生たちが息をのんで見送る中、聖羅の視線は一直線に後方の列――慶太へと向かっていた。
陣内 蓮
「おい慶太……さっきの綺麗なお嬢様、めちゃくちゃこっち見てないか?」
加山 慶太
「ん? あ、さっきの親切なお姉さんだ! おーい!」
慶太が能天気に手を振る。
その姿を見た聖羅は、静かに、だが確かな意志を込めて、慶太の目を見つめ返した。
緑 聖羅
(待っていてね、加山慶太くん。……私の解けない『謎』のあなたを、絶対に振り向かせてみせるから)
これが、自分の名前も書けないバカな俺と、俺に一目惚れ(?)した学年一の天才彼女の、甘くてズレた恋の始まり――(になるのは、もう少しだけ先のお話)。
#学園
ルル
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コメント
1件
読了しました!冒頭の電柱衝突シーンで一気に慶太くんのキャラが立ってて、思わず笑っちゃいました。聖羅さんが「ミミズのような文字」のプリントを拾うところ、彼女の冷徹な天才像と慶太くんの無邪気さの対比が鮮やかで、心拍数が上がる描写に「あ、恋の始まりだ」とドキドキしました。自分の名前も書けないバカを「解けない謎」と呼ぶ視点のズレが絶妙で、続きが気になります🌷