テラーノベル
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しばらく沈黙が続いたあと――涼ちゃんは、ゆっくりと口を開いた。
「……薬は、家から持ってきたやつです」
その声はかすれて小さいけれど、
はっきりと看護師に届いた。
「眠れなかったんじゃなくて……」
涼ちゃんは少し視線をふらつかせ、
それでもまっすぐに言葉を続けた。
「……死にたいだけです」
その言葉は、とても簡単に、何気なく口から出たようだった。
まるで「今日は暑いですね」とでも言うかのように。
重くて、しかしどこか現実味を失ったような響きだけが病室に残る。
看護師はその言葉に一瞬、息をのんだ。
だが驚きを表には出さず、そっと涼ちゃんの肩に手を置いた。
「そんなふうに思ってしまうくらい、苦しかったんだね」
涼ちゃんは再び下を向き、
何も答えずに布団の端を握ったままだった。
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