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柔太朗に問われた、あの一言が、勇斗の中で、幾日も反芻され続けていた。
――仁人って人の、本当の望みって、何だったんだろうね。
仁人に生き延びてほしい。それは、勇斗自身の、切実な願いだった。だが、その願いばかりを追いかけて、仁人自身の意志を置き去りにしているのではないか。勇斗は、そのことに、ようやく気づき始めていた。
(――俺の願いじゃなくて、仁人の願いを、叶えたい)
仁人が本当に望んでいるのは、ただ生き延びることではない。あの王都に、もう一度戻ることだ。その思いは日を追うごとに、勇斗の中で揺るぎないものになっていった。
ならば、自分がすべきことは、ただ仁人を逃がすことではない。あの人の願いを、この手で叶えることだ。
勇斗は、密かに、王都奪還への算段を巡らせ始めていた。
ある日、舜太が、勇斗を陣幕に呼び出した。
「――近々、西の古都に総攻撃をかける」
「……本気か」
「これで、全部終わらせるつもりや」
舜太の声には、迷いがなかった。
「勇ちゃん。この混乱に乗じて、その人を連れて逃げろ。捕まれば、お前らは二人とも元王族や。どんな処遇になるか、俺にも保証はでけへん」
「――」
「白色の国の伝手で、商船を手配してある。名も、素性も隠して、二人でどこか遠くへ渡ってくれ」
その用意周到さに、勇斗は言葉を失った。
「なんで、そこまで」
「――さあ?」
舜太は、少しだけ、寂しそうに笑った。
「全部失っても生きろ。運命になんか、抗って生きろ。それが、俺に言える、精一杯や」
だが、勇斗は、舜太の申し出を、そのままの形では受け取らなかった。
仁人の本当の望みが、逃げることではなく、王都に戻ることだと分かっている以上、ただ二人で逃げるという選択肢は、勇斗の中には、もう残されていなかった。舜太が用意してくれた逃げ道を無駄にすることに、罪悪感がないわけではなかった。それでも、仁人の意志を無視して、自分の願う「安全」だけを押し付けることは、もう二度としたくなかった。
その夜、勇斗は、密かに一通の書状を認めた。総攻撃の規模と、決行の日時。古都の守りが手薄になれば、王都は一時的にでも、奪還できるはずだ――そう書き記し、信頼できる商人に託して、古都へと送り出した。
その密書が、仁人のもとへ届いたのは、決行の三日前のことだった。
「――これを、勇斗が?」
仁人は、その筆跡を、何度も確かめた。にわかには信じられなかった。裏切ったはずの男が、なぜ、これほど詳細な情報を、命懸けで届けてくるのか。
だが、古都の陥落が、もはや時間の問題であることも、仁人には分かっていた。このまま座して滅びを待つか、それとも、一か八かの賭けに出るか。
脳裏に、王都を失ってからの、幾月もの悲しみが甦る。偉大な女王が遺したものを、ただ滅ぼしただけの王。そう自分を責め続けてきた日々に、終止符を打てるかもしれない、最初で最後の機会だった。
仁人は、静かに、決意を固めた。
「――王都を、取り戻す」
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#ご本人様には関係ありません
あか
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#からぴち
琉愛˚𓆩✞𓆪˙
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この国のすべてを、終わらせる覚悟で。
総攻撃の日、古都は、あっけなく陥落した。
守りについていたはずの軍勢は、もぬけの殻だった。仁人が、密かに主力をすべて、王都奪還のために動かしていたからだ。
それとほぼ同時に、王都が、黄色の国の手に取り戻されたという報せが、舜太の陣営にも届いた。
その報せを聞いた舜太は、思わず、傍らに立つ勇斗へと視線を向けた。
逃げるように言ったはずのその男は、まだ、陣営に留まったままだった。
「――お前」
舜太は、すべてを察した。
勇斗が送った密書は、逃走のためではなく、王都奪還のためのものだったのだ。自分が与えた情報を、勇斗はそのまま仁人に流し、この機を突かせた。
「やってくれるな」
舜太は、苦笑とも怒りともつかない表情を浮かべたあと、すぐに、鋭い声で命じた。
「――王都を、奪還する。すぐに軍を動かせ!」
コメント
3件
初コメ失礼します。 めっちゃこの話好きです… ありがとうございます😭
おおお、これはめっちゃ熱い展開来たな…!勇斗が仁人の“本当の願い”を考えて、自分の安全より仁人の意志を選んだところが胸に刺さったわ。舜太の「全部失っても生きろ」も泣けるし、でもその優しさを裏切る形で王都奪還に動く勇斗の覚悟、痺れる。仁人が密書を見て決意するシーンも良かった。続きが気になる🔥