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#シークレットベビー
#ヤクザ
夏目萌*優しい彼~コミカライズ
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西原衣都
639
猫塚ルイ

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顔の半分を覆うようにマスクを付け、冷え切った目だけが三人を見据えている。
「っ……!」
乙哉は羽衣子と希海を背に庇うように立ちはだかっているものの、希海が震えながら羽衣子の服を掴む。
「ういちゃ……っ、こわい……」
「大丈夫……っ、大丈夫だから……」
今にも泣き出しそうな声を漏らす希海を羽衣子はより強く抱き締めるものの、羽衣子自身も恐怖で指先が震えている。
「羽衣子ちゃん、ギリギリまで下がって」
乙哉は羽衣子に小声でそう指示しながら出来る限り相手との距離を取らせていく。
一方その頃、連絡を受けた昴は既にマンション近くまで戻って来ていた。
「……チッ」
乙哉にそう告げた直後電話が切られると、スピードを上げてマンション敷地内まで車を飛ばして来た昴は素早く駐車すると車のドアを乱暴に閉め、エントランスへ駆け込んだその瞬間、背後から黒づくめの男二人が一気に昴へ襲いかかった。
「っ!!」
が、すんでのところで攻撃を受け止めた昴は力の限り押し退け蹴りを入れると相手は倒れ、もう一人に掴み掛って地面へ押さえつけた。
「誰の差し金だ? 言え」
押さえつけた男に問い掛けるも答えず、蹴りを入れられ蹲っていた男に所持していた銃を向ける。
「……し、知らねぇよ、俺たちは金で雇われただけだ……」
観念したのか押さえつけられていた男がそう呟くと、銃を向けられた男は、
「それよりも、早く部屋に行った方がいいぜ? あっちには俺らなんかよりも力のある男が行ってるんだからさ」
と、どこか挑発的な態度で昴に言った、その直後、昴から連絡を受けた組員が数人駆けつけ、男たちを頼んで自身は部屋へ向かって行った。
室内では、依然として乙哉が羽衣子と希海を庇うように立っている。
どちらも相手の出方を窺っているようで動かない。
それを見ていた羽衣子は背にしていたクローゼットのドアを開けると、震える希海の身体を抱き抱え、
「ういちゃ……!?」
「大丈夫だから、ここにいて……っ、絶対出てきちゃダメだよ」
必死に笑おうとしても声が震えてしまう羽衣子。
戸惑う希海を押し込むように中へ入れると扉を閉めた。
その直後。
「やだっ……! ういちゃん!!」
中から泣き声が響くけれど、それでも羽衣子は開けなかった。
そしてそのクローゼットの前へ立った羽衣子は、未だ動きの無い乙哉たちに視線を向けた。
(私は、どうすれば……っ)
そう思っていた矢先、相手が動き出す。
それに反応した乙哉が相手の攻撃を止めるも、もう一人がポケットから何かを取り出すとそれを乙哉目掛けて振り上げた。
「……っクソ!」
振り上げたそれは小型のナイフで、一人の攻撃を受け止めて体勢を崩させたものの、ナイフを振り上げて来たもう一人の動きまで止めきれず、
「っ……!」
腕に刃が掠ったことで乙哉は顔をしかめ、それでも何とか相手の手元に一発食らわせてナイフを弾き落とした。
「広瀬さん!!」
そう羽衣子が叫ぶ中、ナイフを払い落とされた男は羽衣子へ向かっていき、その瞬間、羽衣子の背筋がゾクリと冷える。
「テメェらの相手は俺だっての!!」
そこへ乙哉が男の足へしがみつき、必死に止めようと腕へ力を込める。
「離せ」
男は苛立ち声を荒らげると、力の限り足に力を込め、容赦なく乙哉を蹴り上げた。
「っ!!」
その弾みで乙哉の身体が壁へ叩きつけられる。
「広瀬さん!!」
羽衣子が再び叫んだ、その時だった。
バンッ!! と勢いよく玄関扉が開く音が聞こえると共に、
「吾妻さん、希海、乙哉!!」
聞き慣れた声が部屋に響き渡ると、昴が寝室へ駆け込んできた。
昴が寝室へ飛び込んできた瞬間、羽衣子へ迫っていた男の身体が勢いよく引き剥がされた。
「っ、ぐぁ!?」
そして、鋭い音と共に男が床へ叩きつけられ、昴はそのまま男の胸ぐらを掴むと容赦なく押さえ込んだ。
「誰に手ぇ出そうとしてんだ」
低く吐き捨てられた声に男の表情が強張る。
その背後から、もう一人の男が昴へ飛びかかろうとするも、
「行かせるかよ」
痛みを堪えつつも乙哉が男の腕を掴み、そのまま強引に床へ引き倒した。
「っ!!」
逃れようともがく男の動きを乙哉は全身で封じ込め、昴も押さえ込んでいた男の腕を捻り上げて完全に身動きを奪った。
そんな一部始終を目の当たりに羽衣子は、その場でへたり込みそうになるのを堪えながら震える身体でクローゼットのドアを開けると、暗闇の中で小さな身体がびくりと震えた。
「希海くん……!」
「ういちゃぁん!!」
そして次の瞬間、希海が勢いよく羽衣子へしがみついてきた。
「ごめんね……っ、ごめん、怖かったよね……っ」
震える小さな身体を羽衣子は強く抱き締める。
突然見知らぬ男たちが現れ、更には暗いクローゼットの中に一人で閉じ込められていた恐怖。
希海は羽衣子の胸へ顔を埋めたまま大声で泣き出した。
「やだったぁ……っ、こわかったぁっ……!!」
「うん……うん……ごめんね、もう大丈夫だから……」
羽衣子自身も涙が滲む中、必死にその小さな背中を撫で続けた。
それから少しして部屋へ複数の足音が駆け込んでくる。
「兄貴!」
やって来たのは組員たちで、
「さっきの奴ら同様こいつらも連れて行ってふざけた野郎の居場所を吐かせろ」
昴が冷たく言い放った。
「はい」
組員たちは即座に男たちを引きずるように連行して行き、乙哉は先程受けた攻撃の影響で、腕からは血が流れ、壁に打ち付けられたこともあって骨の方も心配があることから、すぐに病院へ運ぶよう指示された。
そこへ新たに別の組員が近づいて来る。
「兄貴、車、表に回しました」
「ああ」
その言葉に頷いた昴は羽衣子へ視線を向けた。
「ここにはもう居られないので、今すぐ必要な物だけ持ってください」
「……え?」
「他の荷物は後程運び出しますから、ひとまず今から引っ越し先へ向かいます」
「……分かり、ました」
頷いた羽衣子は希海や昴と共に急遽新しい居住先へ向かうことになったのだった。
コメント
1件
わあ、今回もハラハラしっぱなしでした……!昴さんの登場のタイミングが完璧すぎて、思わず「来た!」って声が出ました。乙哉さんが必死に羽衣子さんと希海くんを守ろうとする姿に胸が熱くなりましたし、羽衣子さんが希海くんをクローゼットに押し込む場面は、母親のような強さを感じて泣きそうになりました。昴さんの低い声の「誰に手ぇ出そうとしてんだ」、めちゃくちゃかっこよかったです。引っ越し編、新しい場所でどんな日々が待っているのか、続きが気になります!