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それでは、
どうぞっ。
ーーーーー
数日後。
屋敷の空気は、どこか張り詰めていた。
『正式に婚約を進めることになった。』
父のその一言で、すべてが決まった。
『来月には顔合わせ、その後すぐに発表だ。』
淡々と告げられる未来。
逃げ道なんて、最初からなかったみたいに。
🤍「……承知しました。」
気づけば、そう答えていた。
反抗も、拒絶も、出てこない。
ただ“正しく”あることを選んだ自分に、少しだけ笑いたくなる。
ーーーーー
部屋を出たあと、廊下で足を止める。
🤍「……ほんとに、決まっちゃった。」
誰に言うでもなく呟く。
いつもなら、
このタイミングで来るはずの人がいる。
でも今日は、
🤍「……来ないんだ。」
分かっていた。
あの日から、彼は明らかに距離を置いている。
必要最低限の会話だけ。
目も合わせない。
“完璧な執事”に戻った。
それが正しいのに、
どうしようもなく、嫌だった。
ーーーーー
夕方。
珍しく、別の使用人が部屋を訪れる。
💛「失礼いたします。お嬢様。」
🤍「……あれ?」
思わず眉をひそめる。
🤍「今日は、あの人じゃないの?」
ほんの軽い疑問のつもりだった。
でも。
💛「本日より、担当が変更となりました。」
一瞬、意味が分からなかった。
🤍「……え?」
💛「今後は私が、お嬢様付きとしてお仕えいたします。」
頭の中が、真っ白になる。
🤍「ちょっと待って、」
思わず立ち上がる。
🤍「どういうこと?」
💛「詳細は_」
🤍「いいから。」
遮る。
🤍「なんで?」
声が少し強くなる。
使用人は困ったように視線を伏せた。
💛「執事長の判断と伺っております。」
🤍「……本人は?」
一番聞きたいこと。
💛「……ご自身の申し出もあったと。」
🤍「っ、…」
その瞬間、胸の奥が強く締め付けられる。
自分で、離れた?
どうして?
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いや、分かってる。
分かってるけど。
🤍「ふざけないでよ。」
小さく呟く。
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夜。
足は自然と、彼のいる場所へ向かっていた。
ノックなんてしない。
そのまま扉を開ける。
🩵「…、なんで。」
部屋の中にいた彼女が、驚いたように顔を上げる。
でもすぐに、いつもの表情に戻る。
🩵「お嬢様。このような時間に、」
🤍「なんで勝手に離れるの。」
真っ直ぐに言う。
逃がさない。
🩵「……それが最善と判断いたしました。」
落ち着いた声。
何も変わらないみたいに。
🤍「誰にとっての?」
即座に返す。
🩵「お嬢様にとってです。」
🤍「嘘。」
一歩、近づく。
🤍「自分でしょ。」
彼女の眉が、わずかに動く。
🩵「……違います。」
🤍「じゃあなんで。」
声が揺れる。
抑えようとしても、無理だった。
🤍「なんで何も言わずにいなくなるの。」
責めたいわけじゃない。
ただ。
🤍「ちゃんと説明してよ」
聞きたかっただけなのに。
NEXT.
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