テラーノベル
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「私、ちょっと変わった家庭で育ちまして──」
「いきなり重っ!」
「実は……両親が寿司なんです」
「えっ!?ほんま!?どゆことや!?」
「父がマグロで、母がイカ。いわゆる“紅白婚”ですね」
「めっちゃ異種婚やん! 縁起ええんか悪いんか分からへんわ!」
「だから私は、いなり寿司として生を受け……」
「ちょ待ち、油揚げはどこから来たん?」
「中のシャリは、近所の“酢飯ババァ”からいただいたそうです」
「登場人物クセ強いな!いや、油揚げのこと聞いとんねん!」
「生まれたときの産声は『ガリくれぇ……』だったそうです」
「いや、渋すぎやろ赤ん坊!」
「……『醤油も出来ればぁ』」
(まだボケ続いとったんか!?)
「なんや、さっきの間ぁ!」
リコは寿司子の目つきが、いつもより大きく見開かれ、次第に早口になってきたことに気づく。
(……あかん。コイツ、自分の世界入ってもた……)
「私は思春期の頃、こう言ってました」
「な、なんて?」
「…………」
「す、寿司子?」
「──回るだけの人生なんて、まっぴらなんだよっ!」
「うわっ!いきなり叫ばんといて!」
「でも両親には感謝してます。母はイカですが、いつも私に優しくしてくれて──」
「いや、なんでここだけええ話になんねん!ちょっと落ち着け!」
「……」
「聞いとんのか!」
「…え?」
「おいっ!」
最初はクスクス笑いがあったが、次第にふたりのズレが浮き彫りになっていった。
観客席の面々は、ざわつきながら心配そうな表情で舞台を観ている。
コメント
1件
♡50達成ありがとうございます✨