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美月ゆめかだよ〜🌸 第32話、めっちゃ胸にきました…「耳、隠したほうがいいですか?」ってミナちゃんの声、森野さんの「誰かに決めさせないで」って言葉、心にズシンときた。でも翌朝、耳を出して学校に行くって決めたミナちゃんの勇気が尊すぎる…!友達が「遅い!」って普通に話してくれる日常の尊さよ😭 そしてラストの政府からの書類…国が本気で動き出した…!続きが気になりすぎる!
第32話「エルフの女子高生が特定されました」
午前九時。
営業企画部。
神崎レオンのスマートフォン。
そこには。
昨日会社見学に来た。
藤崎ミナ。
十七歳。
制服姿の写真。
長い耳は。
完全に見えている。
投稿。
『エルフの女子高生発見』
さらに。
コメント。
『この制服どこ?』
『○○高校じゃない?』
『たぶんそう』
『駅も分かった』
『会いに行きたい』
森野リリカの顔から。
笑顔が消えた。
「駄目です」
相沢直人が聞く。
「何が?」
「学校まで行く人が出ます」
部長も画面を見る。
「会社の前で待ってた連中と同じか」
「高校生ですよ」
森野の耳が。
完全に下がる。
「大人とは違います」
神崎が言う。
「すでにエルフ側でも対応を始めています」
「榊原さん?」
「はい」
「本人には?」
「連絡中です」
そのとき。
森野のスマートフォンが鳴る。
表示。
藤崎ミナ。
「ミナちゃん」
すぐ出る。
「もしもし?」
『森野さん』
昨日とは。
声が違う。
小さい。
「大丈夫?」
『……はい』
ぴく。
森野の耳。
相手の嘘は。
耳では分からない。
それでも。
分かった。
大丈夫ではない。
「今どこ?」
『家です』
「学校は?」
『休みました』
「ご両親は?」
『います』
森野は。
少し安心する。
「外に出ないで」
『はい』
「知らない人から連絡来てる?」
沈黙。
「ミナちゃん?」
『いっぱい』
森野が目を閉じる。
『SNS』
「うん」
『知らない人から』
「うん」
『写真撮らせてくださいとか』
「うん」
『取材したいとか』
「うん」
『会いたいとか』
森野は。
自分の昔を思い出す。
見つかる。
逃げる。
名前を変える。
町を離れる。
でも。
ミナは十七歳。
学校がある。
友達がいる。
家がある。
逃げればいい。
とは。
言いたくなかった。
『森野さん』
「何?」
『私』
声が震える。
『耳、隠したほうがいいですか?』
森野は。
答えられなかった。
昨日。
一度も耳を隠したことがない。
そう笑っていた少女。
その少女が。
たった一日で。
聞いている。
耳を隠すべきか。
森野は。
自分の髪に触れた。
百年以上。
耳を隠してきた髪。
「ミナちゃん」
『はい』
「今は」
少し考える。
「怖かったら隠していい」
『……』
「隠さなくてもいい」
『どっちですか?』
「どっちでもいい」
『……』
「大事なのは」
森野は言った。
「あなたが決めること」
『私が?』
「そう」
「耳を出すのも」
「隠すのも」
「誰かに決めさせないで」
電話の向こう。
静か。
やがて。
『分かりました』
「今日は休んで」
『はい』
「学校のことは大人が考えるから」
『森野さん』
「何?」
『大人なんですね』
森野。
「百四十三歳ですから」
電話の向こうで。
少し笑う声。
『そうでした』
通話終了。
森野は。
スマートフォンを置く。
部長が言う。
「会社としても協力しよう」
「いいんですか?」
「うちに見学に来た帰りに撮られたんだろ」
「はい」
「会社前の防犯映像も確認する」
「ありがとうございます」
「それと」
部長が相沢を見る。
「相沢君」
「はい」
「今日の企画書」
「……」
「忘れるなよ」
「この状況で?」
「この状況でも会社は会社だ」
森野が。
少し笑った。
「そうですね」
午前十一時。
状況は悪化。
投稿は削除された。
しかし。
画像はコピーされていた。
学校名。
最寄り駅。
部活動。
少しずつ。
情報が集められている。
田中が言う。
「怖いですね」
森野。
「はい」
「みんな一個ずつ情報出して」
「はい」
「最後につながっちゃう」
神崎が言う。
「だから私たちは長い間、写真を避けてきました」
相沢が聞く。
「昔も?」
「昔は今より楽でした」
「ネットないから?」
「はい」
森野も言う。
「昔なら町を離れれば終わりました」
「今は?」
「写真が残ります」
「世界中に」
「はい」
月島セシルが。
静かに聞いていた。
「森野さん」
「はい」
「私」
「何ですか」
「少し後悔しています」
「何を?」
月島は自分の耳を見る。
「公表したこと」
森野が止まる。
「月島さん」
「私は大人です」
「はい」
「嫌なら会社を辞められる」
「……」
「引っ越すこともできる」
「はい」
「でも」
月島はスマートフォンの中のミナを見る。
「子供は違います」
神崎が言う。
「だからこそ」
「はい」
「今、ルールが必要なんでしょう」
「ルール?」
「エルフ側にも」
神崎は言う。
「人間社会側にも」
昼。
緊急のオンライン会議。
榊原。
森野。
神崎。
月島。
ミナの母。
そして。
数人のエルフ。
ミナ本人は。
参加させなかった。
母親は。
見た目四十代くらい。
耳を出している。
「娘には」
母親が言う。
「ずっと自由にさせてきました」
森野は黙って聞く。
「私自身は」
母親が髪を触る。
「百年以上、耳を隠していました」
森野と同じ。
「だから娘には」
「はい」
「同じ思いをさせたくなかった」
声が。
少し震える。
「でも」
「……」
「間違っていたんでしょうか」
森野が言った。
「違います」
即答。
全員が森野を見る。
「間違ってません」
「でも娘が」
「悪いのは」
森野は言う。
「耳を出したことじゃありません」
少し強く。
「勝手に写真を撮って、学校を探して、追いかけることです」
母親は。
黙る。
榊原がうなずく。
『その通りだ』
森野の耳は。
動かない。
本心。
午後。
学校側も対応。
校門周辺の警戒。
生徒への撮影禁止の注意。
ミナの情報を外部へ出さないよう周知。
数日。
休ませることになった。
夕方。
森野のスマートフォン。
ミナから。
メッセージ。
『少し話せますか』
森野は。
会社の休憩スペースへ。
電話する。
「もしもし」
『森野さん』
「どうした?」
『決めました』
「何を?」
『明日』
少し間。
『学校行きます』
森野が驚く。
「大丈夫?」
『分かりません』
「無理しなくていいんだよ」
『はい』
「休んでもいい」
『でも』
ミナは言った。
『友達が待ってるって』
「……」
『普通に来ればいいって』
森野の耳が。
少し上がる。
『だから行きます』
「そう」
『それで』
「うん」
『耳』
森野は黙る。
『出して行きます』
「……」
『怖いですけど』
「うん」
『一回隠したら』
「うん」
『怖いから隠したのか、自分が隠したかったのか』
ミナは言う。
『分からなくなりそうだから』
森野は。
しばらく何も言えなかった。
「分かった」
『はい』
「でも」
『はい』
「怖くなったら」
『はい』
「いつでも隠していいからね」
『はい』
「それは負けじゃないから」
『分かりました』
翌朝。
高校。
校門。
報道関係者はいない。
学校側が取材を断っている。
ただ。
少し離れた場所。
何人か。
スマートフォンを持った人間。
ミナは。
駅から歩いてくる。
制服。
黒髪。
長い耳。
そのまま。
校門前。
立ち止まる。
少し。
怖い。
すると。
「ミナー!」
同級生の女子。
走ってくる。
「遅い!」
「ごめん」
「数学の宿題やった?」
ミナ。
「……」
「何?」
「忘れた」
「最悪」
「昨日それどころじゃなかったんだけど!」
「それと宿題は別!」
二人で笑う。
そして。
普通に。
校門へ入っていった。
耳の話は。
しなかった。
その日の午後。
営業企画部。
森野のスマートフォン。
ミナからメッセージ。
『学校行けました』
写真。
友達と。
学食らしい場所。
二人で。
パンを持っている。
耳も。
写っている。
森野は。
しばらく写真を見る。
相沢が横から。
「よかったね」
「はい」
「泣いてる?」
「泣いてません」
ぴく。
「耳」
「これは」
森野が目元を拭く。
「目にゴミが」
ぴく。
「耳」
「相沢さん」
「はい」
「うるさいです」
でも。
笑っていた。
午後五時半。
部長が言う。
「森野さん」
「はい」
「また問い合わせ」
森野の笑顔が消える。
「今度は何ですか」
「テレビ?」
「違う」
「研究?」
「違う」
「エルフ?」
「違う」
「じゃあ何ですか」
部長が一枚の書類を渡す。
「政府」
森野。
「……」
神崎が立ち上がる。
「どの省庁です?」
「一つじゃない」
書類。
関係省庁合同。
森野が読む。
長寿者。
戸籍。
雇用。
年金。
教育。
医療。
婚姻。
相続。
そして。
未成年エルフの保護。
相沢が言う。
「とうとう国が本格的に動く?」
神崎。
「当然でしょう」
月島も書類を見る。
「今まで制度上、存在しないことになっていましたから」
森野。
「面倒ですね」
部長が言う。
「それで」
「まだあるんですか?」
「森野さんに」
嫌な予感。
「有識者会議へ参加してほしいって」
森野。
「嫌です」
即答。
部長。
「返事早いな」
「私は有識者じゃありません」
神崎。
「百四十三年間、人間社会で生活しています」
「レオン」
「はい」
「代わりに行って」
「嫌です」
「何で!」
「私も有識者ではありません」
月島。
「私、二百三歳ですけど」
森野が期待して見る。
月島。
「嫌です」
「月島さん!」
相沢が笑う。
田中が言う。
「じゃんけん?」
三人のエルフ。
同時に。
「嫌です」
しかし。
一週間後。
霞が関。
会議室。
森野リリカ。
神崎レオン。
月島セシル。
三人。
並んで座っていた。
森野が小声で言う。
「どうして三人とも来てるんですか」
神崎。
「公平ですね」
月島。
「じゃんけんで決まらなかったので」
森野。
「全員参加って一番悪い結果でしょう」
正面には。
各省庁の担当者。
資料。
マイク。
そして。
議題。
『長寿種族と現行社会制度の整合性について』
森野が資料を見る。
「長寿種族……」
神崎。
「私たちですね」
月島。
「すごい呼び方ですね」
森野は。
深くため息をついた。
会社で。
普通に働きたかっただけなのに。
いつの間にか。
国の制度まで。
動き始めていた。