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人外の出た現場の交差点に着くと、サイズが以前剣達と戦った個体より少し小さく、見た目もさほど変わらない人外がいた。
「小さいからって油断は禁物だな。」
月華は少し後ろに下がって様子見をすることにしたようで、剣と月弥の手を引いた。
「見た目はさほど変わらないけど…攻撃パターンは変わってそうだよな、違う個体だろうし。」
月弥も警戒した様子で人外を見つめる。人外もこちらを警戒するようにこちらを見ている。
「向こうも警戒してるみたいだね…。」
剣は少し顔を歪め、隙を伺っていた。しかし突然、人外は多くのある目のうち一つだけを開き、それ以外は閉ざした。開いていた目はこちらを凝視しており、心なしか殺気立った気配を感じる。
「前回のあいつもだけど、今回の奴もだいぶ殺気立ってるなぁ。」
月弥は人外を見ては不愉快そうに呟いた。
「なんで一個だけ開いたんだろう…。」
「そうだよな…あんなに目があるなら全部の目を使えば周囲を把握出来そうだが…。」
剣の疑問に対し、月華も同じ疑問を持ったようだった。しかし考えている暇などなかった。人外はいきなり腕を伸ばしてきて剣達を捕まえようとした。
「!!!!(前みたいに捕まってたまるか…!!)」
間一髪で月華は避け、剣も回避した。月弥はなんとなく動きが読めていたのか楽々とかわしている。
「っ、速いね、動きが。」
剣はその速さに圧倒されながらも、伸びてくる腕を避け続ける。月華は弱点を探しながら少しずつ人外に距離を詰めていっている。月弥はなんとなく弱点が分かったのか、月華に合図を出した。
「あいつの中心部分を狙って。」
「中心…???腹っぽい部分か??(そもそも腹とかいう概念がこいつにあるんだか……)」
「そう。まぁ分かりずらいかも…そうだな、開いている目のちょうど下くらい。」
開いている目は弱点を見つけられて動揺したのか、動きを速めた。月華は真っ直ぐ進みながら腕を避ける。
「っあ!!さっきまで閉じていた目がなくなってる……??」
どうやら開いている以外の目はダミーだったようだ。剣が驚いていると、剣の方にも腕が再び伸びてきた。
「しまっ……」
攻撃を受けると思ったのか避けようと足を動かそうとした瞬間
「危ない……。」
静かな声の少年に抱き抱えられていた。少年はそのまま高く跳ね上がり、人外の頭の上に乗った。
「あ、ありがとう…。」
剣が少年の方を向くと、剣は思わず声を上げた。
「つ、月音君!?!?」
「なんで知ってるの…??あ、もしかして兄さんの友達とか…??」
こてん、と首を傾げて剣を見るも、すぐに納得した様子で微笑んだ。一方月華はというと、弱点が腕で塞がれてしまい攻撃出来ない状況になっていた。
「ッチ、弱点塞いだな……。」
剣は苦戦している月華を見て、すぐに人外の頭から降りた。
「月華君!!…弱点が……。」
「見ての通り塞がれた。今はかろうじて腕が伸びてきてない。月弥が自ら囮になってくれたからな…。月弥の体力が尽きる前に、とっとと終わらせる。」
「だね……!!」
剣は弱点を塞いだ腕に掴みかかる。
「そ、そう簡単には外れないだろ……。」
月華は呆れた様子だったが、どうやら剣のやり方が合っていたらしい。以外にもあっさり振りほどけた。
「まじか…。」
二人が腕を振りほどくこと数分、やがて弱点は露になり、その弱点目掛けて二人は蹴りを入れた。
ぐちゅっ
鈍い音が響いた後、人外は以前のように跡形もなく消え去った。そして人外の上に乗っかっていた月音は綺麗に着地し、三人を見て微笑んだ。
「凄いね三人とも。まぁやってくれるとは思ってたけど。」
月音はにこにこしながら三人を見渡した。
「月音……お前今までどこ行ってたんだよ……。」
驚きのあまり声も出せなかった月弥がようやく口を開いた。
「ごめんね兄さん、人外始末に忙しくて。今日三人が戦ってた奴もさっき見つけて始末しようとしたけど、三人いたから僕が参戦する必要もなさそうだなって思って。」
月音はにこにこしている。そんな月音を見て月弥は耐えられなくなったように月音を抱き締めた。
「やっと……会えた……。」
二人の再会に、剣と月華の表情も緩んだ。月音も兄である月弥に会えて嬉しいようで、月弥を抱き締め返した。