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金城が放った強烈なミドルシュートは、キーパーの手をすり抜け、見事にゴールネットに突き刺さった。
喜ぶ金城に対して、貴也は怒っていた。そして、喜ぶ金城に向かって歩いた。
貴也「おい!なんでパスを出さなかったんや!俺はお前の合図どおりに動いたのに!」
金城「おいおい、なんで怒っているんだ?俺はパスを出すとは一言も言ってないし、実際にゴールは奪えたじゃないか。僕は、君が囮になって動き出せば、そのスペースを利用できると思って提案したんだ。こんなの、サッカーの戦術ではよくあることじゃないか、怒る意味がわからない。」
金城「それに君はプレーを見る限り、どう見ても素人だ。ボールコントロールの足元のレベルや、体の使い方が素人すぎる。だから、君にパスを出したところで、どうせボールを収めて、ポストプレーもできないだろうし、ましてやシュートすら打たせてもらえないだろう。だから、僕はせめてその圧倒的な足の速さを活かして、囮になるような動きを指示したんだ。むしろ、君の活躍できる役割を与えたんだから、感謝してほしいくらいだよ。」
貴也「うるせえ!それでも俺はゴールを自分で奪いたいんや!!!!」
貴也は素人すぎるため、金城の言っている正論が正しいかどうかすら、理解できていないレベルだったが、ゴールへの想いだけで、反論していた。
金城「君の気持ちはわかったけど、味方からの信頼はサッカーだと大事だから、その味方に信頼されるくらいの技術とかは身につけてね!正直、今の君にはパスなんか出せないが、1試合に1回だけの囮としては信頼できる。」
貴也は金城の言っていることは理解できていなかったが、とにかく自分への怒りと悔しさで頭がいっぱいだった。
そして、試合終了のホイッスルが鳴った。
実は、貴也が裏への抜け出しを行っていたとき、コーチの中島の頭の中には1人の選手のプレーイメージが浮かんでいた。
それは、圧倒的なスピードでプレミアリーグの得点王にも輝いた、【ジェイミー・ヴァーディ】 だった。
中島は、貴也の圧倒的なスピードとその裏抜けの姿で根拠は無かったが、未完の大器としての可能性を密かに感じて、自分の手で育ててみたいという気持ちがふつふつと湧いていた。
中島「ちょっと君、いいかな?中学生の時は、どこの中学やクラブチームでサッカーしてたんだい?」
貴也「自分ですか?自分は高校からサッカーを始めてます。なんなら、さっきの試合が初めての試合でした。」
中島は、さらに自分の胸の鼓動が高鳴るのを感じていた。
そして、自分のこの鼓動の高鳴りを信じてみたい、ただの根拠のない直感だが、この子を育ててみたいという気持ちが爆発しそうになっていた。
中島「君、名前は?もしよかったら、2週間、全体練習に加えて、僕が考えるメニューに取り組んでみないか?」
貴也「自分は、赤城貴也と言います。よくわからないですが、是非お願いします。どんなことをしたら良いですか?」
中島「貴也か!そうだな、まず君は基礎が無さすぎるから、ボールを止めて、蹴るの練習だ。」
貴也「止めて、蹴る?なんか、簡単そうで良かったです」
中島「とりあえず、これから毎日、全体練習が終わったら私のところに来なさい。」
貴也「はい、わかりました。」
この紅白戦をきっかけから、これから日本代表を背負う、伝説的なストライカーが誕生することは、貴也本人も中島コーチも、その他大勢の部員も知る由もなかった。