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ろのみ🩵🫧
43
#愛され
おうか
252
そこにいたのは……吉良くん。
ホッとし過ぎて……涙が溢れた。
「うわ、何だよ。ハンカチ……あ、持ってんじゃん。え? 湊、足……」
擦りむいた膝にハンカチを当てると、吉良くんが私の怪我に気づく。
その時
「湊! ……何で逃げ……」
彼は吉良くんを見ると、私に歩み寄るのを止め、ぐっと歯ぎしりをするように顔が歪めた。
「……話……、話がしたいだけなんだよ。頼むよ」
そう言った彼に
「ここで、されたらどうですか? ……彼女、ケガしてるみたいですけど……」
彼を睨むように、吉良くんが冷ややかに言った。
「いや、電話、して。必ず」
吉良くんに睨まれ、ばつが悪そうにそう言って、去って行った。
「……誰? アイツのせい? 」
「いいえ、私が勝手に転けただけで……」
「庇う価値はあんのか? 怪我してるって言っても何も言わないような奴に。で、誰だよ」
黙って俯く私に吉良くんは悟ったようだ。
「前の……か? 」
その言葉に頷いた。
「しつこくされてんの? ……警察、行く? 」
「うん、でもここしかバレてないし、もう辞めるから、警察までは」
「そっか、あ……4月迄って言ってたな」
「一応、籍は5月。ほぼ有給消化で今月は滅多に来ない」
この人にも、会いたくなくて4月までって言ったのに……こんなとこ見られて嫌になる。
「……清水部長には? 」
吉良くんが枯れろの関係を知ってる事に心臓が跳ねる。
「あ、言わないで。彼、忙しいし……迷惑掛けたくない。それに、その……恥ずかしい」
「分かったけど……お前から言えよ。彼だって教えて欲しいだろ。頼りになる人だよ」
ただ、頷いた。
「このまま帰る? 会社戻るなら送ろうか? 」
「あ、大丈夫。会社の子が迎えに……」
その時、ちょうど息を切らした二宮くんが到着した。
「皆! ……えっと……? 」
走って来てくれただろう二宮くんが吉良くんに気づいて言葉を止めた。
「あ、友人なの。今、たまたま会って……彼のお陰で助かった……」
二宮くんがホッとしたようにため息を吐いた。
「だから、外出るときは俺とって言ったのに」
「アイツ、相当しつこいんですか? 」
吉良くんが二宮くにん尋ねる。
「はい、会社を特定はしてないんでしょうけど……近くをうろうろと」
「湊、やっぱり……」
「大丈夫、ごめんね、吉良くん」
それ以上はと、遮った。
「すいません、お世話になりました」
二宮くんが、吉良くんにそう言って頭を下げる。
私に向き直ると
「はい、立てんの? おんぶ? 抱っこ? 」
真顔でそう聞いてくる。
「いや、腕貸してくれたらいいから」
……若者は何も考えてなくて、怖い。
「面倒くさ。おぶされよ、もう」
「いや、君にそんな事してもらったら女子社員に何言われるか分かんないでしょ!? 」
「いんじゃない? もう辞めるんだし。俺は気にしないし」
「去る鳥、後を濁したくないんです」
「とりあえず、医務室だな。昼から帰るなら、俺も帰る」
「いや、サボらないで。ほら」
吉良くんが何か言いたそうにしたけど、その場を離れた。
二宮くんの腕を借りて少しずつ進む。
「……めちゃめちゃイケメンだね。今の“お友達”」
少しトゲのある言い方をされる。
「うん、君もね」
「この前の部長さんといい、格好いい人ばっかりだね。皆さんのまわりは」
「はいはい、君もね」
「君が一番。くらい、言って貰えません? 」
「あのメンツじゃ厳しいな~」
「分かってますよ、勝つ気もない。皆さんの中で……って」
「そこでも厳しいな~」
「お姫様抱っこして、会社入ろうか」
「止めて下さい、王子!」
ああ、しまったな……あの人、吉良くんに話してるのか……。
どういうつもりなのだろう。
吉良くん、そういうの無理なのに。そういう関係は無理な人なのに。
それに、今日の事が耳に入ったら、彼なら心配してくれるだろう。それも……嫌だった。
──医務室。
はー……
二宮くんの大きなため息。
「もう、心配かけないで貰えます? 」
「あ、ごめん。ご迷惑を……」
彼に膝を消毒してもらって、足首に湿布を貼ってもらった。病院に行くほどではなさそう。
「……迷惑じゃない」
そう言った彼と医務室から出ようとすると
「ねぇ」
二宮くんが足を止める。
「はい」
「もっと後で……最終日にでも言おうと思ってたんだけど」
「はい? 」
「付き合ってくれない? 」
それは、どこへ?とか……じゃないやつ?
嘘……冗談じゃ……ない……やつ?
「無理です」
「即答するなよ」
「だって」
「いい、物件だよ?」
「伸び代? 」
「いや、このままでも、だ! 」
知ってるよ、社内でめちゃめちゃ人気ある。だからこそ。私なんかじゃなくもっといい人がいる。
「ありがとう。でも、無理」
「考えて。いや、むしろ……」
その瞬間、唇に……柔らかい感触。
え
何?
唇?
キス!?
キスされてると、そう理解した瞬間、ほんの少し……彼の舌が私の舌に……触れた。
そのまま顔を離すと、その舌を少し出したままイタズラっぽく笑った。
ペロッと舌をしまい
「考えられるように、なった?」
「え、ちょ……ちょっと!」
「はは、赤~」
そう言って、先に医務室を出た彼の背中を見ていた。再びドアから顔を覗かせると
「何かあった? 行こ! 」
と、フロアの方を指差した。
怖。怖い。イケメンの若者、怖いものなしで……怖い。
いや、キス。キスした。キス……しちゃったし。
えぇー!!!
何?最近の若者はあんな感じなの?
彼は今年、やっと、新卒じゃなくなった、先月から2年目に入った若者だ。
帰りも、駅まで二宮くんが送ってくれて、家まで戻って来た。
えーっと。今日はまったく……色々あった日だなぁ。
うん。二宮くんの事も。あの男も、吉良くんに見られた事も。清水部長とのことを知っていたことも……。
今週の金曜日に清水部長と会う。何だか疲れてしまっていた。
そして、終わりにするって決めているのに、私の心のほとんどを埋めている……清水部長の事。
麗佳さんを好きだった。そんな事さえ、落ち込んでしまう。仕方がない、あんなに綺麗なんだもの。
そして、金曜日で終わりにするっていうのに……落ち込む必要なんてない。
なのに、頭から離れない。
好きで……
好きで……。
ただ、叶わない思いに恋、焦がれているだけかもしれない。私だけに向けられない……彼の優しい目……その事に。
二宮くんは……何考えてるんだろ。まあいいや。
あっちのあの男は……もういっそ、話を聞けば納得するのだろうか……。
会う気はないけど、電話くらいならいいか。それに、あの会社は辞めるってことを伝えたらもう来ないのだろうか。
コメント
1件
おお、第25話……ついに二宮くんが動いたな! いやー、まさかあのタイミングでキスするとは思わんかったわ。仕事辞めるって決めてる湊さんに、真っ向から「考えられるように」って、熱いなあ。でも吉良くんとのやりとりも気になるし、清水部長のこと、そして元カレのしつこさ……もう色々詰め込みすぎて情報量やばい(いい意味で)。湊さんの「好きで…好きで…」って内心が切ない。金曜日の決着、どうなるんやろ……続きが気になりすぎる🔥