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よりぬき物語集①~i×f~ 『酔えば、君は甘えたになる』 『幸せすぎて死にそうな話』 『悩める受け
第1話 - よりぬき物語集①~i×f~ 『酔えば、君は甘えたになる』 『幸せすぎて死にそうな話』 『悩める受け
31
2025年06月27日
テラーノベル
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2025年06月27日
「酔えば、君は甘えたになる」~i×f~
Side照
「ふっかって、ほんと酔うとダメだな」
そんな呟きを、何度繰り返しただろう。
あの日の収録終わり、俺は楽屋で着替えをしながら聞き捨てならないことを耳にした。
「今度のメンバー飲み、俺ちょっと先に行くかも」
ふっかが気軽に言った言葉に、思わず口を挟んだ。
「ダメだろ、それは」
俺としては普通の反応だったつもりだ。
でもふっかは、まさかの全否定に眉を寄せて振り返る。
「え?なんで?今日、照めっちゃ反応早くない?」
「お前、酒癖、悪いからな」
即答した。
自覚なさげに目をぱちくりさせるふっかを見て、ちょっとムッとしたのを覚えてる。
「え、俺そこまで悪くないし!ってか、照の方が記憶なくしてることあるだろ!」
「いやいや、ふっかの方がタチ悪い。お前はな……」
言いかけて黙った。
「知らないなら、教えない」。このときはそう思っていた。
言い争いの火種はそれだけで、俺たちはしばらく押し問答したまま、結局ふっかが先に行く形になった。
俺はその日、雑誌の撮影が長引いてしまい、飲み会に合流できたのは予定より30分も遅れていた。
――俺が店に着いた頃には、すでに何人かが潰れていた。
ガラッと扉を開けた瞬間、すでに酔い始めた空気が店内に満ちていた。
佐久間と阿部は不参加、渡辺と舘さん、ラウールが奥で楽しそうに盛り上がっていて、目黒と康二が手前のテーブルで何かを話していた。
その中心に、斜めに傾いた姿勢で座っているのは……ふっかだった。
頬はほんのり紅潮していて、目は少し据わっている。
片手にはジョッキ、もう片手は……なぜか目黒の肩に置かれていた。
「ふっかさん、マジで飲みすぎ」
目黒がそう言いながらふっかの前に水を置いていたけど、彼は手を伸ばそうとしない。
代わりに掴んだのは、誰のものか分からないグラス。
「おい……」
声をかける前に、ふっかはそのグラスをグイッと煽っていた。
顔をしかめる目黒と康二。
ラウールはもう膝枕の上で寝てる。
「……ふっかさん、今日荒れてんな。岩本くんまだ?」
「遅いな~。撮影やったっけ?そろそろ来てもいい時間やけどな」
康二がスマホをちらっと見て言ったその瞬間、ふっかが急に笑い出した。
「ふふふ……よし。めめにチューしてやろう」
……は?
目を疑った。
耳を疑った。
でも、それは紛れもない事実だった。
ふっかは今、目黒にキスしようとしていた。
「や、やめろってふっか!冗談だよな!?なあ!?」
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『幸せすぎて死にそうな話』~i×f~
Side照
足取りが軽い。一日がもうすぐ終わる。辺りはもう真っ暗だ。だが俺はまだまだ何でもできる。そんな気分だった。
とにかく今の俺は機嫌がいい。
当たり前だ。今日はいい事しかなかった。
とにかく朝から今の今までいい事しかなかったからだ。
仕事、会議、先輩からの評価、新しい企画の話、くじ運。でかいことから小さな事まで。いったい何なんだ今日は。もしかしたら今日が人生のピークなのか?そうなのか?あとは下るだけとか言ってくれるなよ?
とにかく俺は気分よく家への帰路につく。
何もかもが絶好調だった。
だが、俺の幸せはそれだけじゃ完成しない。
家に着くまでに待ち切れずに俺は携帯でメールを打つ。いつもなら細かいとこを考えてしまうメールだって今日はすらすらと文章が浮かんできた。普段なら恥ずかしいと思ってしまう文だろうが俺は構わずそれを打ちこんだ。それが相手に届いて返事が来て、ふっかがそれを実行してくれれば完成だ。それしかない。俺のテンションはどこまでも高く、何をしようと何を考えようとらしくなくても今は自分に正直でいられた。
「……ふっか」
俺はついついその名を口に出して呟いていた。
アパートに着いて玄関前で送信ボタンを押す。ふっかへのメールだ。ふっかと俺は付き合っている。付き合い始めたのがグループ結成してからで、けっこう長く続いてるとは思う。
幸せの真っただ中。
そんな中に恋人であるふっかがいる事は当然だ。
メールをして呼び出してそうしてふっかが来て俺の幸福の真ん中にふっかが立って、それで完璧なハッピーエンドになる。
ふとどこからともなく音楽が聞こえてきた。俺はまだ自分の住処の外にいる。それなのに俺の住処の中から聞き慣れたメロディが聞えて来た。俺は玄関を開けた。3歩も歩けば俺の住処は一望できる。
ふっかがいた。
玄関開けたら3歩でふっかだ。
まさかそこにふっかがいるなんて思ってもみなかった。
呼び出したのは今さっきだ。
ふっかは着信音を未だ鳴らしたままの携帯を片手に俺を振り返った。
ふっかが俺の姿を確認している間にふっかの手の中でそのメロディはぷつっと止まる。
ふっかは俺のメールすらまだ読んではいなかった。
それなのに俺よりも先に俺の帰るべき場所へと到着していた。
ああ、そういえば合鍵わたしてたんだった。
膝の上に乗っかっている俺の服を見るにどうやら俺の洗濯物を勝手に畳んでいたらしい。
ふっかはこっちを振り返って「照、おかえり」と言った。
にへらっといつもと変わらない緊張感のない顔で笑った。
俺はそんなふっかに大股で近付きすぐにその体を抱きしめた。
「え?うわ、なに?」
座り込んでいた体を抱きあげてとにかく抱きしめた。ハッピーエンドへの道のりはあっという間だった。
こんなに一気にいい事が起こるなんて、俺は明日死ぬかもしれない。
俺に掻き乱されてぼさぼさになった頭をそのままにふっかはびっくりしたまま固まっている。俺はそんなふっかにキスをする。それによってふっかの金縛りが解けた。
「照!あ、あのさ、俺ごはん作ってあげようと思って、来てみたん…だけど」
顔を真っ赤にして俺の腕の中から出ていこうともがくふっかの体を俺は離さない。
「飯は後」
「はぁ?」
素っ頓狂な声をあげたふっかを肩に担ぎあげて、俺は一歩歩いてすぐそこにあるベッドへと投げおろす。
こんな風にベッドへ下ろされればふっかにもその先は予想がつく。
だが俺の突然の奇行に頭が付いてきていないらしい。
俺にはそんなもん関係なかった。
俺の幸福の世界は完成した。
メールには明日でもいいから家に来いとも記したがふっかにとってはそっちの方が良かったかもしれない。
俺の頭が冷えるのを待ってから家に来た方が良かったかもな。
「照!その、お風呂は……?」
「風呂も後」
そのままふっかの上にのしかかる。
いまだあたふたしているふっかの顔を固定して口にかぶりついた。ベッドへと体を押し付けて、少しだけ口を離すとふっかが俺を押しのける。なんだよ早く観念しろよ。いつもならお前の方から鬱陶しいくらいじゃれついて来る癖に。俺はとりあえずふっかを腕に収めたままその言い分を聞こうとじっと待ってやった。
「……ごはんも後で、お風呂も後…じゃ、じゃあ」
どうやら今度こそ観念したようだ。
じゃあ、なんだよ。
俺は笑った。
「……俺?」
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『悩める受けのお話』
Side深澤
友情出演~d×n~
気づいたら朝だった。どうやら俺はいつの間にか寝てたらしい。
薄っすらとカーテンの隙間から差し込む朝の光が、ベッドの上を淡く照らしている。隣には照がすやすやと安らかな寝顔をさらしてる。
いつもより少し疲れたような表情で、でも穏やかに眠っている。昨夜のことを思い出すと、胸の奥がきゅっと締め付けられる。わりと日常的な光景だ。俺と照が裸でさえなければ。
「……やっちゃった、よ……」
声に出してしまってから、慌てて照の方を見る。 でも幸い、まだ起きる気配はない。
ほっとして、でもすぐにまた現実が押し寄せてくる。
思わず声が小さくなる。
正確には、やられちゃった、の方が正しいのかな。
いや、そうじゃなくて。 俺は照とセッ〇スした。
別に恋人的なお付き合いをしてるわけでもないのに。
ため息を吐く。
俺はひとまずベッドを降りようとして、腰の違和感に気づく。
だってこの部屋ヤバい。におい、ヤバい。 俺たち何発出したのってくらいヤバい。
甘ったるくて、でもどこか生々しくて、確実に昨夜の証拠を物語ってる。 顔が熱くなる。空気清浄機のスイッチを入れた。
しばらくすれば臭いはとれるはず。
でも記憶は消えないんだよな、と思ったら余計に憂鬱になった。
ていうか俺たち、マジでやっちゃったんだな……ちょっと夢オチ的な展開を期待してた俺はがっくりした。
夢なら夢で、自分の願望に絶望してたかもしれないけど。
現実だと、これからどう顔を合わせればいいのかわからなくて、それがもっと重い。
照の寝顔をちらりと盗み見る。普段のまっすぐな表情とは違って、無防備で少年らしい顔をしてる。
こんな顔を見てると、昨夜の情熱的な照が嘘みたいだ。
でも確かに、俺は照に抱かれた。
照の手で、照の唇で、照の……。
「うわあああ、考えるな考えるな!」
小さく頭を振って、そんな記憶を振り払おうとする。
でも体の奥に残ってる違和感が、全部本当だったんだって教えてくる。
昨日穿いてたパンツが床に落ちてたので手に取る。 とりあえずこれを穿くかと思って、やめる。 うわなんかかぴかぴしてる……げんなりした。
全裸のまま移動して、シャワーを浴びることにする。
なんか体中がべたついてるし、ローション的なものが乾いちゃって気持ち悪いし。
地味に腰が筋肉痛だ。歩きにくい。
穴になんとなく違和感があるようなないような。
痛みがなくてよかった。
照のが出たり入ったりしてたわりに、頑丈なんだな俺の穴……。
それとも、照が優しくしてくれたのか。
シャワーを浴びる。
泡を洗い流しながら、このまま昨日のことも流れていけばいいのにと思って、そんなわけはないのもわかってるので気分が重い。
今日は朝から会議があるので、照が目を覚ます前に家を出よう、そうしよう、それがいい。
簡単に朝飯をつくってラップして、あっためて食べてって、メモを残して逃げるように家を出た。朝の光が気持ちいい。
爽やかな朝だ。俺の心情にはまったく似つかわしくないほど爽やかだ。
会議の間中考えてたのはプロデューサーの話してる内容じゃなくて、なんで照があんなことをしたのかということについてだった。
「深澤さん、どう思います?」
「あ、はい、すみません、もう一度お願いします」
急に振られて、慌てて謝る。
でも心ここにあらずで、全然集中できない。
周りのスタッフには申し訳ないけど、頭の中は照のことでいっぱいだった。
昨日の照は撮影があるとかなんとかで帰りが遅かった。
最近忙しくて、一緒にいる時間も少なくなってたし、なんとなく距離を感じてた。
でも、それが普通だと思ってた。
俺たちは同居人であって、恋人じゃないんだから。
今日も翔太と舘さんと飲むっていうのに、らしくもない。
普段の照なら、前日にあんなに飲んだら次の日は控えめにするのに。
昨夜、俺はダンスのフリいれで遅くなって、帰宅したのは11時過ぎだった。
照はもう家にいて、リビングでテレビを見ながらビールを飲んでいた。
「お疲れさま。遅かったね」
「うん、お疲れさま。飲んでるの?」
「ちょっとね。ふっかも飲む?」
そんな何気ない会話から始まった。 照が缶ビールを差し出してくれて、俺も一緒に飲むことになった。
最初はいつも通りの他愛もない話をしていた。
仕事のこと、メンバーのこと、最近見たテレビ番組のこと。
でも、だんだん照の様子がおかしくなってきた。
いつもより饒舌で、いつもよりじっと俺を見つめてくる。
「ふっか」
「ん?」
「俺たち、ずっと一緒にいるよね」
「そうだね。もう何年になるかな」
「ふっかは、俺のことどう思ってる?」
突然の質問に戸惑った。照の目が真剣で、いつもの軽い感じじゃなかった。
「どうって……大切な仲間だよ。家族みたいな存在というか」
照の表情が少し曇ったのを見逃さなかった。
「家族、か」
「照?」
照は黙ってビールを飲み干して、新しい缶を開けた。俺も付き合って飲んでいたけど、照の飲むペースが早くて、気がついたら結構酔っぱらっていた。
「ふっか、シャワー浴びてこない?」
「え?」
「一緒に」
その時の照の目は、いつもと違っていた。
真剣で、でもどこか不安そうで、まるで何かを確かめるような目だった。 俺は酔っていたこともあって、深く考えずに頷いてしまった。
シャワールームで裸になった時、照が俺をじっと見つめていたのを覚えている。
「ふっか」
「何?」
「綺麗だね」
そう言って、照が俺の頬に手を当てた。 その瞬間、何かが変わった。 いつもの照と俺の関係じゃない、何か特別な空気が流れた。
「照……」
「俺、ずっと思ってたんだ」
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