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疑心暗鬼だった味覚が、一瞬にして幸福感に包まれたのだ。
信じられない思いで他の料理も口に運んでみるが
毒など入っているどころか
どれもこれも「店の味か?」と疑うほどの絶品だった。
鮭はふっくらと焼き上がり
おひたしは上品な出汁の香りが広がり
味噌汁は胃に染みわたる優しい味わい。
なにが目的なのか分からないまま、俺は夢中で朝食を完食してしまった。
しかし、飯を与えられただけで
次こそなにかされるはずだと身構える。
だが、碧は食後の食器を片付け始めると、拍子抜けするほどあっさりとした言葉を口にした。
「悪いんだけど、ちょっと買い物に行ってくるから、その間、留守番しといてくれるかな?」
俺は呆然と碧の背中を見送るしかなかった。
その後、なにか碧の弱みが無いかと部屋をくまなく漁り探す。
そして奴が帰ってきたその時、後ろから冷たいものが頭に添えられた。
「飼い主のいない隙に悪戯とはいい度胸だね」
そう言って担がれて、あっという間にベッドに押し倒される。
しかもネクタイで両腕を縛られ、頭の上に固定されてしまった。
その状態で俺の上に跨ぐ碧。
「お仕置きしないとね?」
そう言いながら、俺の服を脱がせていく。
抵抗するも、あっという間にパンツ一丁にされて
「なにする気だよ…ヤ、ヤるとか言わねぇよな…っ?」
「殺さないって」
「そっちの殺るじゃねぇよ!!」
「お前、俺のこと犯して戦意喪失させる魂胆だろ!」
「ふふ…どうだろ。すべては遼くんにごめんなさいって言わせて分からせるためだよ」
「はっ、舐めんじゃねえ。痛みなんか慣れっこなんだよ。そんな脅しで俺が泣くわけ…」
俺がそう言い放つと、碧は俺を笑顔で見下ろしながら、拳銃を今度は俺のちんこに当てた。
「だったら、ロシアンルーレットやらない?お互いのちんこで」
意味がわからないことを言ってくる。
「頭よりもスリルあるじゃん」
狂気じみた瞳でそう言われて、俺は滝のような汗をかいて震え出す。
だが、プライドが許さない。
「の、望むところだ、てめぇのちんこに風穴できるとこ見せてやるよ!!」
そう虚勢を張ったものの
6発中の5発目でもどちらにも弾が出なくて
俺は泣きそうになる。確実に最後に入っているのは間違いない、しかも次は俺の番…完全に終わった。
ハッタリの可能性も疑い探りを入れてみるが
目の前の男は「さあ、どうだろうね」としか言わない。
そして遂に、碧は涼しい顔をしてリボルバーを俺のちんこに当てて言ってくる。
「どーする?降参する?」
「しっ、しねぇ…こっちにも、プライドがあんだよ」
正直声は震えていた。
すると、俺の返事を聞いた碧は、目を細めて笑ってから躊躇することなく引き金を引いた。
「バンッ!!」
いきなり碧が大声を出したせいで
その拍子に目尻に溜まっていた涙が糸のように頬を伝って溢れ出して固まってしまった。
「へ……っ?」
しかし、痛みは無い。
その様子を見た碧は優しく涙を拭き取ると、俺の頭を撫でながら言った。
「大事なペット傷つけるわけないじゃん。遼くんって変なところ抜けてるね?」
「クソがっ!!やっぱハッタリじゃ───」
そう反論しようと口を開いた瞬間
舌を捩じ込まれ、そのまま唇を蹂躙されるように深いキスをされた。
キスだけで頭が朦朧としてきそうになる。必死に抵抗しようとするが
縛られているせいで殴れもせず、逃れることができない。
「んっ!んぅっ……んっ、やめ……ろっ!」
唇が離れると同時に俺がそう叫ぶと碧は笑いながら言った。
「やめるわけないでしょ。今日からこれが君へのご褒美。そしてお仕置き」
再びキスが降ってくる。
俺は抵抗もできず、ただ碧に翻弄されることしかできなかった。
キスが終わり、解放された俺は荒い息を吐きながら碧を睨んだ。
「はぁっ……くっそ……この……変態野郎」
「ふふ、その目いいね」
碧は微笑むと、俺に覆いかぶさってきた。
「っ……」
「そんなに怯えなくても、俺はキミのことが好きなだけだよ」
碧はそう言うと俺の耳元で囁いた。
「遼くんのこと、たくさん愛してあげるからね」
「ひっ……」
俺は恐怖に慄きながらも、この男には逆らえないことを悟った。
「ん……?」
意識を取り戻すと、見慣れた天井が目に映った。
「起きた?」
そう声をかけてくると同時に優しく頭を撫でてくる碧。
俺はゆっくりと上体を起こす。
「っ、ここは……」
周りを見回すと、そこは寝室だった。
「俺の家だよ」
「なんでお前と俺が一緒に寝てんだよ……っ」
碧はニコニコ笑いながら、俺の頭を撫でながら言った。
「寝顔可愛かったよ?」
「死ね」
俺がそう吐き捨てると、碧はまた笑って言った。
「まぁまぁ、これから長い付き合いになるんだからさ」
「ふざけんな。誰がお前なんかと」
そう言いながら立ち上がろうとする俺の肩を掴み引き寄せる碧。
「ちょっと落ち着いてよ。遼くんのことは嫌いじゃないんだからさ」
「ふざけんなっ。俺はお前なんか大嫌いだ」
俺がそう叫ぶと、碧は笑みを浮かべながら言った。
「そう言うと思ったよ」
「なら放せよっ!」