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夜が深まると、突然、山の中に重く、奇怪な気配が漂い始めた。鷹矢は一瞬、顔をしかめた。これはただならぬ異変だ。
「鷹矢、どうした?」彰久が声をかける。その表情もすでに鋭く、警戒を強めている。
「来る。準備をしろ。」鷹矢の言葉に、彰久はすぐに刀を引き抜き、身構える。
暗闇の中、空気が震えるように動きがあった。
目の前に現れたのは、黒い鱗に覆われ、全身が岩のように硬質な女だった。顔は角を生やし、獣のように歪んでおり、周囲の空気を押しつぶすような凄まじい威圧感を放っていた。
「お前ら、山を荒らす者は許さぬ。」妖怪が低い声で唸り声を上げると、鷹矢と彰久は一瞬にして戦闘態勢を整えた。
彰久がまず切り込んだ。剣を振るいながらも、妖怪の硬い鱗に跳ね返され、反撃を受ける。それでも、彰久はその隙をついて攻撃を仕掛け、鷹矢は空中から矢を放つ。
だが、相手の力は想像以上だった。妖怪の一撃が彰久の肩を貫き、彼は地面に膝をついた。
「彰久!」鷹矢は今で空から降りて、彰久の元へ駆け寄った。「大丈夫だ….」彰久は痛みに顔を歪めながらも、鷹矢を安心させようと口を開いた。しかし、その目に浮かんでいるのは、どこか弱々しさが見え隠れしている。
鷹矢は彰久の肩を掴み、その痛みに耐える彼をしっかりと支えながら、冷徹な視線を敵に向け
る。
「お前は..俺が守る。」鷹矢の声は震えない。
その瞳には、彰久への強い決意が込められてい
る。
「鷹矢…」彰久がその言葉を聞いて、少しだけ目を見開く。だが、と、ぐにまた苦しそうに息を吐いた。傷は深く、血が止まらない。
「ふざけるな!」鷹矢の声が震え、胸の奥から湧き上がる怒りと恐れを必死で押さえ込む。
「お前は..俺の大切な人だ。そんな簡単に傷つけられてたまるか!」
彰久はその言葉に驚いたように目を見開く。だが、その目はすぐに鷹矢に向けられ、静かに言った。「俺は…大丈夫だ、鷹矢。お前がいれば、何とかなる。」
その言葉に、鷹矢の胸が締めつけられる。彰久がどんなに強くても、傷ついた姿を見るのは耐えられない。鷹矢は無意識に彼を支え、手を握
り締めた。
「いやだ…お前を失いたくない。」鷹矢は強く言った。その声には涙がこもり、必死で抑えきれない感情があふれ出ていた。「お前がいなければ、俺はただの…ただの天狗だ!彰久、わしにはお前しかいない!」
その言葉が、彰久の胸を打った。少しの間、二人は言葉を交わすことなくお互いの存在を感じていた。だが、その間にも戦いは続き、妖怪はますます激しく攻撃を繰り返してくる。
「お前がいなくなったら..俺はどうすればいいんだ!?」鷹矢は怒りと焦りで、ついに目の前の妖怪に全てをぶつけるように矢を放った。
だが、それでも妖怪は倒れない。鷹矢はさらに天狗の力を振り絞り、矢の束を放った。すべてが光を放ちながら妖怪に突き刺さり、ようやくその巨大な体が崩れ落ちる。
鷹矢はその瞬間、全身が疲れきり、地面に膝をついた。だが、目の前にいる彰久のことだけが頭から離れなかった。彰久!」鷹矢は駆け寄り、彼を抱き上げた。
彰久の顔はまだ痛みに歪み、血は流れ続けている。しかし、鷹矢の腕の中で、彰久はかすかに微笑みを浮かべた。
「鷹矢….俺は大丈夫だよ。」彰久は弱々しく言ったが、その目に鷹矢の焦りを見て、力なく言葉を続けた。「お前が…守ってくれたから…」
「守る..俺はお前を絶対に守る。」鷹矢の言葉は強く、決して揺るがない。「お前が生きている限り、俺はどんなものにも負けない。」彰久はその言葉を聞き、再び微笑んだ。そして、鷹矢の胸に顔を埋め、静かな涙をこぼした。
「ありがとう、鷹矢..俺もお前を守る。だから、二度と傷つけさせない。」
鷹矢はその言葉を胸に深く刻み、彰久をしっかりと抱きしめながら、静かに誓った。
「一生、お前を守る。」
その夜、戦いが終わり、二人はともにその場を離れ、静かな山の中で新たな誓いを交わし合った。