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同時刻 時空屋向かいのマンション305号
時空屋に出入りする人間の詳細なデータは、瞬時に亀山のパソコン上に転送されていった。

遠巻きに、缶コーヒーをすすりながら、その光景を眺めていた柿崎は『国民総管理社会』の実体を思い知らされることとなった。

生年月日はもちろんのこと、学歴や職歴、通販利用の詳細や、SNSでの政治的発言までもが、事細かに個人情報として蓄積されている。

目の前の亀山は、職務の遂行として、個人情報を閲覧しているに過ぎない。

しかし、その行為には何の疑念も感じられず、柿崎はそれこそが恐ろしいのだと思った。

亀山が、


「出入りする多くは、東京サイケデリッククリエイターズのホームを閲覧、もしくは会員ですね。気になる人物はこの男」


パソコン画面には、鷹野の横顔が映し出されていた。

柿崎が亀山の背後へ近付くと、窓辺の大野も近寄りながら言った。


「え、どいつですかねえ、ちょっと見せて」

「バカ!お前はまだそこで見張ってろ!」


柿崎の一喝に、大野はうな垂れながらも所定の持ち場へと戻って行った。

亀山は、気にも止めずに鷹野の詳細なデータを拡大した。

柿崎が腕組みしながら言った。


「こいつ、鳥海と組んでたやつだろ? 』

「そうですね」

「グルだったってのか?」

「いや…あっちから接近してきた…そう見るのが妥当でしょうね。少なくとも東京ジェノサイド以前、この男から発信されたデータを見る限りではの話ですけれど」

「よし、鳥海にあたってみるか、あいつは今どこにいる?」

「あ、待ってくださいね…」


亀山のパソコン画面上部のワイプに、地図上に光る点が現れた。


「ええっと、新宿エリア地下射撃訓練所ですね」


その時、玄関の鉄製の扉をノックする音が聞こえた。

柿崎は、懐から銃を引き抜いて立ち上がった。

亀山と大野も同様に銃を構えた。

見えない敵の恐怖に大野は身を硬くし、亀山は覚悟を決めた。

しばらくすると、扉の外から声が聞こえた。


『おお~い、来ちゃったよぉ』


それは神代の声だった。

扉が開くと同時に、室内になだれ込む神代の息は酒臭く、高揚した顔つきに柿崎は呆れた。


「神代さん、いい加減にしてくれよ」

「だってさ、暗くってわかんないじゃん」

「何が!?」

「あれ、チャイムわかんないじゃん。それよりこれ、調べてってさ」

「誰が?」

「上が」


柿崎は、神代の主語がない会話と、無駄な時間の浪費にイラついた。

大野は、神代からUSBメモリを受け取って、


「だいぶ呑みましたねえ。羨ましい」


と言うと、柿崎に目配せして笑った。

柿崎は、わざと聞こえるくらいの舌打ちをして窓辺へと向かった。

神代と会話するくらいなら、双眼鏡片手に見張りをしている方がマシだと思ったからだ。

亀山は、USBメモリを大野から手渡されると、早速パソコンに繋いでファイルを開いた。



東京が世界地図から消えたあの日の落日

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