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そこに映し出されたのは、前官房長官を乗せた車が襲撃された現場の画像と、防犯カメラに映る男の姿で、それを見るなり神代はすかさず、
「こいつが主犯じゃないの?」
と、言ってのけた。
映像を初めて目にした亀山と大野は、襲撃事件当時の防犯カメラの映像を何度も再生し直した。
信号待ちの車の前方交差点、
中央で立ち止まってライフルを構える男。
急発進する車に、照射されるライフルからの閃光。
路肩に乗り上げ大破する車。
「もっぱらの噂だけどね、若人たちよ!」
神代の酒臭い声に亀山が反応した。
「何がですか?」
「え、だから。主犯じゃないかって。東京テロの主犯じゃん、そっくりじゃん、だから生きてんじゃないかってさ」
「まさか。時系列的に無理っしょ」
「俺もそう言ったんだけどねえ、無理じゃんって、だけど映ってるじゃない!」
「え、だって死んでんですよ」
一部始終を聞いていた柿崎が、振り返りもせずに言った。
「その根拠は!?」
神代は、映像を静止させて、過去の防犯カメラ上に映るテロリストの画像と、襲撃現場から立ち去る人物の画像とを比較しながら、
「根拠なんてない…」
「何だよ…」
「だけどね、柿崎くん」
神代がカーソルを動かすと、羅列された男の表情の拡大画像が表示された。
神代は、目を丸くしている亀山と大野を愉快そうに見比べながら、
「これ見てわかんない?」
「ホクロですか?」
と、亀山が言うと、神代は笑いながら答えた。
「違うじゃん、耳のかたち。ここってなかなか変えられないしね、あまり気にしない悪いヤツっているじゃん。それにさ。えっとかめぴょん!」
「は。はい」
「もっともっと拡大して、んで綺麗にさ」
「どっちをですか?」
「車の方」
高解析された襲撃当時の男の耳の映像が、スローモーションで繰り返し流れ始める、
神代は手を叩いた。
「ほらストップ!キレイな耳じゃないの!俺耳フェチじゃん。これ女だよ!ミスったね…うう~ん噛みつきたい」
映し出された耳たぶには、ちいさな穴がひとつあいていて、薄く桜色に染まっていた。
大野は怪訝な顔で、
「まさか神代さん、ピアスの穴で女性だと決めつけてません?今どき男でもピアスはしますよ、なんなら口紅も」
「いやいや、絶対女だから。男の耳はなんか豚トロみたいでさ。女は上質な霜降り肉みたいなんだぜ」
「例えがキモっ!」
「絶対女だから!」
神代は、顔をくしゃくしゃにして笑っていた。