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『最後の呼び方』
私は三年間、ずっと 「先輩」って呼んできた。
名前で呼べば近づける気がしたけど、
呼んだ瞬間、
“終わり”が確定しそうで怖かった。
卒業式のあと、 校舎裏の桜の下。
先輩が言う。
「今日でさ、俺、先輩じゃなくなるんだよな」
その言葉が、胸に刺さる。
「……ずっと先輩です」
反射で言ってしまう後輩。
先輩は少し困った顔で笑う。
「それじゃあ、お前、前に進めないだろ」
沈黙。
風が吹いて、花びらが制服に落ちる。
「……名前、呼んでみ?」
優しくて、残酷なお願い。
喉が締まる。
でも、これを逃したら一生呼べない。
震えながら、 小さく、小さく__
「……天城、さん」
先輩は目を細める。
「敬語かよ」
私は泣きそうになるけど微笑んだ。
次の瞬間、先輩が一歩近づく。
「もう一回」
今度は、 ちゃんと、まっすぐ見て。
名前だけを呼ぶ。
先輩は少しだけ赤くなって、
「やっとだな」
って呟く。
でもそのあと、
「で もさ、それ聞けたから、俺もう大丈夫」
そ う言って、距離を取る。
両想いだけど、 選ばない春。
“呼び方が変わった瞬間、関係が終わる話。”
コメント
9件
悲しい…😢
え、切な、、