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ソ連は乱暴にこの地下室の扉を蹴り、開けた。
「よう、2人とも。久しぶりだな」
ニヤリとしたムカつく顔をしたソ連を前に、俺は思わず拳を握りしめた。
血のように赤い国旗の顔をしたソビエト社会主義共和国連邦の化身。
いつ見ても、このソ連(クソ連)はムカつく。こいつは、人を苛つかせる天才かもしれない。
その声、その姿、その存在。その全てが俺の神経を逆撫でる。
憎悪、嫌悪感、復讐心。
こいつがいなければ、主はこんなにも疲弊しなかった。苦しまなかった。そして、俺はこんなにも無力では無かったはずだ。
こんな感情、無駄だとわかってる。
本当はソ連が悪い訳では無い。戦争を起こしたのは、ソ連では無く、人間なのだから。
これは、ただの八つ当たりに過ぎない。
ソ連に言い返す事は許され無い。どんなに酷い暴言を吐かれようとも。
だから、俺は冷静を装った。偽りの笑顔を作った。込み上げてくる咳をこらえ、淡々と話し出す。
「はい。お久しぶりです。ソ連さん、主炎さん。今主は、見ての通り眠っておられますので、お静かにしていただければ幸いです」
淡々と言葉を発して、嘘の笑顔を向けている俺が、俺で無いように思えた。
「抵抗する気はございませんので、お好きにどうぞ」
良かった。最後まで、咳をこらえ、至って冷静に話すことができた。
きっと、俺の本心はバレていない。そう思うと、一瞬、ホッと胸を撫で下ろしたい気分だった。
「ヘイヘイ。じゃ、ナチスは俺が抱えてくから」
そんな事を言いながらソ連は主を姫抱きする。
同盟を組んでいた頃の“偽りの恋人”をまだ引きずっているのだろうか。裏切られたというのに、いまだそんな感情を抱いているなんて、哀れだな。
「主炎はあいつを頼む~。じゃ、俺は先行ってから」
そんなことを言いつつソ連はこの部屋を後にした。
彼奴はいつも俺を苛つかせる。正直主にあんな態度をとっているのも気に食わない。俺がドールでなければ、彼奴の首をここで取れていたのに……。
なんて事を俺が思考していても主炎は口を開かない。
静かな時間が流れた。