テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
誰も知らない、高嶺の花の裏側2
第12話 〚守ると決めた瞬間〛(海翔視点)
澪が倒れた瞬間、
頭の中が、真っ白になった。
「澪!」
反射的に、身体が動いていた。
腕に抱きとめた澪は、
驚くほど軽くて、
そして――冷たかった。
「大丈夫、大丈夫だから……!」
自分に言い聞かせるように、
何度も声をかける。
担任がすぐに駆け寄ってきた。
「橘、保健室に!」
「はい!」
迷う暇なんてなかった。
海翔は、澪を抱え直す。
自然と、いわゆる“お姫様抱っこ”の形になった。
(離すわけない)
澪の頭が、胸元に触れる。
心臓の音が、はっきり聞こえた。
――早すぎる。
怖くなった。
◇
廊下を急ぎながら、
海翔は必死に澪の顔を見つめていた。
「澪、聞こえる?」
小さく、
でも確かに、頷いた。
その仕草だけで、
胸がぎゅっと締めつけられる。
(……俺、何も知らなかった)
ただ一緒にいればいいと思ってた。
隣にいれば、守れてる気でいた。
でも違った。
澪は、
一人でずっと戦っていた。
◇
保健室。
ベッドに横たえられた澪は、
まだ顔色が悪い。
保健室の先生が優しく声をかける。
「無理しないで。ゆっくり話していいからね」
澪は、少しだけ視線を動かし、
海翔を見た。
「……話す」
その声は、かすれていたけど、
はっきりしていた。
「私……未来が、見えるんです」
空気が、止まる。
担任も、
保健室の先生も、
一瞬、言葉を失った。
澪は、ゆっくりと説明した。
予知のこと。
最近は頭痛じゃなく、心臓が痛むこと。
そして――
恒一と、りあのこと。
「二人が……協力してて」
「海翔を……引き離そうとしてる」
言葉の一つ一つが、
海翔の胸に突き刺さる。
(……俺のせいだ)
澪がこんなになるまで、
気づかなかった。
海翔は、何も言わず、
ただ澪のそばに立っていた。
◇
「しばらく休もうね」
先生がそう言って、
カーテンを少し閉める。
澪が横になると、
海翔は、自然とその横に腰を下ろした。
(ここから、動かない)
守る。
今度こそ。
その時。
「澪!!」
勢いよく扉が開く。
えま、しおり、みさと。
その後ろに、玲央。
全員、顔が真っ青だった。
「大丈夫!?」
「倒れたって聞いて……!」
澪は、弱く微笑んだ。
「……平気」
でも、その声は震えている。
海翔は、立ち上がって言った。
「今は休ませてる」
「俺から話す」
そして、
澪の代わりに、全てを説明した。
予知のこと。
危険のこと。
狙われている可能性。
誰も、笑わなかった。
えまが、歯を食いしばる。
「……ふざけんな」
しおりは、静かに拳を握る。
みさとは、澪を見て、
涙をこらえていた。
玲央が、低く言った。
「……一人で抱えさせる気、ないから」
海翔は、強く頷いた。
「俺も」
視線を、澪に戻す。
「もう、絶対に一人にしない」
澪は、ゆっくり目を閉じながら、
その言葉を、胸に受け取った。
(……守られてる)
初めて、
心臓の痛みが、少しだけ遠のいた。
海翔は、思った。
――守る。
この先、何が起きても。
澪の未来も、
澪の“今”も。
それが、
自分の役目だと。