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誰も知らない、高嶺の花の裏側2
第13話 〚共有された秘密〛(仲間たち視点)
保健室の前の廊下は、
いつもより静かだった。
えまは、腕を組んだまま壁にもたれている。
苛立ちを隠す気もなかった。
「……ありえないでしょ」
低い声で、吐き捨てる。
「澪が、あんなになるまで黙ってたとか」
しおりは、視線を落としたまま言った。
「澪らしいよね」
「迷惑かけたくないって、思ったんだと思う」
みさとは、両手をぎゅっと握っていた。
「でも……怖かったと思う」
「未来が見えて、それが悪い方向だったら……」
その言葉に、
誰も返事ができなかった。
◇
少し離れた場所で、
玲央は静かに立っていた。
海翔から聞いた話が、
頭の中で何度も再生される。
――狙われている。
――引き離そうとされている。
――澪は、それを一人で受け止めていた。
(……ふざけんな)
玲央は、壁に視線を向けたまま、
ぽつりと呟いた。
「俺、気づけなかった」
えまが、ちらっと見る。
「……あんたが悪いわけじゃないでしょ」
「でも」
玲央は、拳を握る。
「“何も起きてない”って思ってた」
その沈黙が、
一番危なかった。
◇
保健室の扉が、静かに開いた。
海翔が、顔を出す。
「……少しだけ、会える」
全員が、息を飲んだ。
◇
ベッドの横。
澪は、少し顔色が戻っていた。
それでも、どこか儚い。
「……ごめんね」
開口一番、
澪はそう言った。
「心配、かけて」
えまが、即座に言い返す。
「謝るな」
声が、震えていた。
「そういうの、私たちに一番効くから」
みさとが、ベッドの近くに寄る。
「澪、秘密にしてたの、分かるよ」
「でも……もう、一人じゃないから」
しおりは、ゆっくり頷いた。
「未来が見えるとか、正直びっくりした」
「でも……澪が嘘つく理由、ないでしょ」
玲央が、一歩前に出る。
「俺も、信じる」
迷いは、なかった。
「それで、守れるなら」
「全力で、そっちに立つ」
澪の目に、
じわっと涙が浮かぶ。
「……ありがとう」
その一言が、
とても小さくて、
とても重かった。
◇
海翔は、その様子を黙って見ていた。
(……もう、大丈夫だ)
そう思えたのは、
この仲間たちがいたからだ。
えまが、にっと笑う。
「じゃあさ」
「“作戦会議”だよね」
しおりが、苦笑する。
「言い方が物騒」
「でも、合ってるでしょ?」
みさとは、静かに言った。
「澪が守りたい未来を、守る」
「それだけ」
玲央が、頷く。
「俺たちが、見張る」
「一人にしない」
澪は、胸に手を当てた。
心臓は、
まだ少し痛い。
でも――
その痛みは、恐怖じゃなかった。
(……繋がってる)
未来は、
一人で背負うものじゃない。
この秘密が、
“共有”された今。
静かに、
確実に。
守る輪が、
形になり始めていた。