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ワトリーは静かにサリーの楽屋を訪れた。彼女の表情には疲れと悲しみが見え、
先ほどの事件がどれだけ彼女に影響を与えているかは一目瞭然だった。
それでも、ワトリーはどうしても話を聞く必要があった。エイミーの無実を証明するためには、
シオンの過去を深く知ることが重要だと感じていたのだ。
「サリー、辛い時にごめんなのだ。でも、シオンのことについてどうしても聞きたいのだ。」
ワトリーの声には申し訳なさがにじんでいた。
サリーは一瞬ためらったが、やがて視線を下に落として小さな声で答えた。「わかったわ…」
「シオンとはどういう関係だったのだ?」ワトリーはサリーに優しく問いかけた。
「私とシオンは、デビューする前からの友人だったの。正直、私たちがアイドルになるなんて
夢にも思わなかったんだけど…」サリーは遠くを見るように語り始めた。
彼女の声には懐かしさが混ざり、かつての友情が鮮やかに蘇るようだった。
「アレクにスカウトされたのか?」ワトリーがさらに尋ねると、サリーは首を横に振った。
「いえ、最初は違う事務所に所属していたの。でも、その事務所が破産して、
アレクさんがプロデュースするオーディションに受かったのがきっかけで、今ここにいるの。」
「そうなのか…」ワトリーは少し考え込むようにうなずいた。「シオンはどんな猫だったのだ?」
サリーは微笑んで思い出を語った。
「シオンは本当に明るくて、性格もよかった。一緒にデビューしたけど、
あっという間に私を追い抜いていったの。それでも、シオンが輝いているのを見るのが嬉しかった。
彼女がトップに立つのを見て、私ももっと頑張ろうって思えたんだ。」
ワトリーはサリーの机の上にクラッシックなミニカーが置いてあるのに気付いた
「これはシオンの楽屋にもあったのだ」
「そう、シオンは昔のクラッシックな車が好きで集めてたの。それを貰ったのよ」
ワトリーはサリーの言葉に真実があることを感じたが、さらに過去を掘り下げるべきだと感じた。
「この業界に入る前、シオンはどんな猫だったのだ?」と尋ねた。
その瞬間、サリーの顔色が変わった。彼女の表情が固くなり、
まるで何か言いたくないことを必死に隠そうとしているようだった。
「それは…」と声を絞り出したが、すぐに目を伏せて口を閉ざしてしまった。
その様子に、ワトリーは何か隠されていると直感した。
「サリー、知っていることがあるなら教えてほしいのだ。
シオンはサリーにとって大切な友達なのだろう? ボクもエイミーが大切な友達なのだ。」
ワトリーの訴えかけるような声に、サリーはさらに目を伏せ、視線をそむけてしまった。
彼女は何かを言おうとしたが、結局言葉にすることができなかった。
ジョセフが静かに割って入った。「ワトリー、無理に聞かなくてもいい。
あんなことがあったばかりだ、少し時間を置いたほうがいい。」
ポテトも同意して、ワトリーの肩に軽く手を置いた。
「そうですよ。サリーも疲れているみたいだし、また後で来ればいいじゃないですか。」
ワトリーは一瞬ためらったが、二匹の言葉に従って深く息を吐き、仕方なく楽屋を出た。
彼はエイミーの無実を信じていたが、シオンの死にはまだ何か大きな謎が隠されていると感じていた。
そして、サリーがその答えを知っているのかもしれないという疑念が、彼の胸の中で膨らんでいった。
「次はメイクさんのところに行くのだ…」
ワトリーは自分に言い聞かせるようにつぶやきながら、楽屋を後にした。
ー消された過去ー
会場はまだ片付けの最中で、騒がしい作業音が響いていた。
ワトリーはざわつくステージ裏を歩き回り、先ほど話を聞いたメイクさん、
イザベラを探した。彼女は道具を整理している最中だったが、ワトリーが近づくと気づいて振り返った。
「イザベラ、シオンのことでまた聞きたいのだ」と、ワトリーが声をかける。
イザベラは少し驚いたようだったが、すぐに穏やかな微笑みを浮かべて答えた。
「ええ、かまいませんよ。何か思い出せることがあれば…」
「シオンはどういう猫だったのだ?」と、ワトリーはストレートに質問を投げかけた。
「そうね…明るくて、とてもいい子だったわ。トップアイドルになると、
横柄になる子も多いけど、シオンは違ったの。いつも周りを気にかけて、優しい子だった。
でも最近は忙しくてとても疲れている感じだったわ」
イザベラは懐かしむように語った。
ワトリーはしばらく考えた後、少し踏み込んだ質問を投げかけた。
「デビュー前のことを知っているのだ?」
その瞬間、イザベラの表情が微かに変わった。彼女は言葉を詰まらせ、少し目を逸らした。
「前の事務所が破産したっていう話は聞いたわ。でも、その前のことは…」
イザベラも、サリーと同じように言葉を途切れさせた。ワトリーは不審に思い、
さらに追及した。「デビュー前に何かあったのだ?」
イザベラは辺りを見回し、誰にも聞かれていないことを確認すると、声を低くして言った。
「噂ではね…シオンは高級なお店でバイトをしていたみたい。」
「高級なお店?」ワトリーは怪訝そうに首をかしげた。
「う、うん。あんまり詳しくは言えないけど、金持ち相手の接待のバイトらしいわ…」イザベラは困った様子で口を噤んだ。
「それが何か良くないことなのか?」ワトリーはさらに尋ねたが、イザベラは言葉に詰まっていた。
その時、ジョセフが口を挟んだ。
「つまり、金持ち相手に体を売っていたということだろう。」
イザベラは驚き、顔を赤らめながら「ちょっと!そんなこと私が言ったなんて絶対に言わないでよ!」と声を荒げた。
ワトリーはすぐに手を挙げて宥めるように言った。「わ、わかったのだ。誰にも言わないのだ。」
イザベラはワトリーの言葉を信用したのか、それ以上何も言わずにその場を去った。
ワトリーは軽くため息をつき、次にルーカスを見つけて声をかけた。
ルーカスは資材を運んでおり、忙しそうに動いていた。
「ルーカス、シオンのデビュー前のことについて知りたいのだ。」ワトリーは早速本題に入った。
しかし、ルーカスはちらっとワトリーを見ただけで、忙しげに肩をすくめた。
「デビュー前?さあ、ぼくここに来たばかりだし、シオンさんのことは全くわかりません。」
後ろの方で作業していたスタッフが呼びかける
スタッフ「誰かカメラに詳しいやついるか?」
ルーカスは振り向き、「あ、ボクできます」
ルーカス「まだ仕事あるんで失礼します」
そう言うと、ルーカスはカメラを直しに行ってしまった。
ルーカス「これ、ケーブルのHD-SDIが接触不良ですね・・・」
といいながら手早く直していた。
ワトリーは手がかりを探し求めて、少し苛立ちを感じ始めていた。
シオンの過去には何か重大な秘密が隠されている。しかし、それを明らかにするにはまだ時間がかかりそうだった。